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Chris Stephens
アドバンスドミックスシグナル&ASICソリューション事業部、耐放射線ビジネス担当Vice President
掲載: 2023年8月30日

2023年8月23日、インドの無人月面探査機「チャンドラヤーン3号」が世界で初めて月の南極に着陸したことは、宇宙ビジネスが再び活況を呈していることを如実に表しています。実は、このチャンドラヤーン3号にはルネサスの耐放射線デバイスが33製品も搭載されているのです。ルネサスは、こうした従来の宇宙向け耐放射線製品に加え、「ニュースペース」のニーズの高まりに対応するため、さまざまな高信頼性(Hi-Rel)ソリューションを提供しています。7月に発表したAMD XQR Versal™ adaptive SoC(システムオンチップ)向けの宇宙対応リファレンスデザインパックもその一例で、次世代の航空宇宙システム向けの広範な電源レールをサポートする主要な耐放射線パワーマネジメントICが含まれています。ルネサスの耐放射線ビジネスを担当するVice PresidentのChris Stephensは、質問に答える形で、宇宙開発競争が加速している背景と今後の展望について次のように語っています。

Q:宇宙で何が起こっているのでしょうか?また、なぜ衛星などの打ち上げが活発化しているのでしょうか?

Chris: 宇宙への打ち上げブームの再燃は2016年頃から始まったと言えるでしょう。主な理由は、SpaceX社が再利用可能なファルコンロケットを使って打ち上げを成功させたことが牽引しています。システムは完成度が高まり、信頼性とコスト効率が格段に向上しました。15年前に比べて、打ち上げの中止や中断ははるかに少なくなり、また打ち上げロケットが容易に入手でき安価になったため、宇宙へ衛星や物資を運ぶコストも減りました。衛星を打ち上げるのに、以前は1kgあたり55,000ドルほどかかっていたものが、今では1,400ドルで可能になったのです。

Q: SpaceXのスターリンクネットワークのような低コストの低軌道通信衛星が普及するにつれ、市場のニーズも長期の宇宙ミッションで使用される耐放射線性能が高い製品(Rad-hard)から、ある程度の耐放射線性能を持つ製品(Rad-tolerant)へ移行しているのでしょうか?

Chris: 宇宙ビジネスに携わっていない人と話をするときは、いつも最初にその質問をされます。地球低軌道打ち上げの普及は、Rad-hardからRad-tolerantへの移行を意味しているわけではありません。どちらのセグメントも成長しているのが事実です。これを理解するには、「お客様が何を求めているのか?」を問う必要があります。

例えば、LEO(低軌道)の商用ブロードバンド衛星(Starlink、Kuiper、OneWebなど)は、カタログに掲載されているCOTS(商用オフザシェルフ)製品と、ある程度の耐放射線性能を持つRad-tolerant製品を組み合わせて使用しています。Rad-tolerant製品のみを使用すると、衛星が高価になってしまうからです。しかし、低軌道ミッションでも、長期ミッションの場合は耐放射線性が必要となるため、すべてのコンポーネントにRad-tolerant製品を使用します。さらには、特に軍事衛星や気象衛星など、より信頼性や堅牢性を重視するお客様は、過酷な環境でも耐放射線性能に優れるRad-hard製品を好む傾向があります。ですから、私たちのビジネスは劇的に成長しており、Rad-tolerant製品のポートフォリオを充実させながら、同時にRad-hard も成長させ、市場の成長を上回っているのです。

Q: このようなシナリオの下で、業界における最大の成長要因は何でしょうか?

Chris: 打ち上げの利便性が向上したため、海事から農業、ミサイル探知、政府の5Gバックホール・ネットワークまで、あらゆる種類の新しいアプリケーションに大きな投資が集中しています。もちろん、2026年の月への有人飛行計画を含むNASA のArtemisプロジェクトは、人々の想像力をかき立てています。もう1つの原動力は、潜在的な政情不安で、これは確実に世界中の多くの国の国防予算や宇宙予算を動かしています。さまざまな理由から、全体的に活発な動きが見られます。

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ISLVERSALDEMO2Z board

Q:お客様の宇宙ミッションを加速するという点から、ルネサスの次の目標は何でしょうか?

Chris: 大きなトレンドのひとつは、商業や政府機関などさまざまな市場のサブセグメント向けに、衛星にさらに演算能力を加えることです。私たちのお客様は、すでに人工知能を使用したリアルタイムの意思決定を可能にするFPGAを使用して、再構成可能で再プログラム可能な処理を取り入れています。

重要なのは、電力を抑えつつ、これらの新しいプロセッサが低いコア電圧で大電流を実現するにはどうするかを考えることです。7月にAMDと発表した宇宙向けのパワーマネージメントソリューションは、その好例です。以前のAMD Xilinx FPGAコアは20~30Aの範囲で動作していましたが、今では100A以上を必要とするアプリケーションを視野に入れています。当社の新しいVersalリファレンス・デザインでは、コアの高電力、低電圧、高電流の要件に対応し、そこから拡張することができます。

当社の最近の製品リリースは、エラーのない処理を保証しながら、サイズ、重量、電力、ソリューション・コスト(SWaP-C)の削減を目指しています。20種類以上のパワーレールを正確にシーケンス制御し、保護スイッチを設計することで、FPGAが1億ドルの宇宙船をストップさせることがないようサポートしています。これは私たちにとって非常に大きな使命で、宇宙市場の大きな課題の核心に触れていると言えるでしょう。

ルネサスの航空宇宙向け製品については、こちらをご覧ください。  
https://www.renesas.com/products/space-harsh-environment

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