~メモリカードや携帯情報端末のコネクタの非接触化が可能に~
2010年6月18日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、数センチメートル(cm)の極短距離を無線で通信する非接触通信において、アンテナを従来の100分の1となる数平方ミリメートル(mm2)へ小型化するとともに、送受信回路と1チップ化する技術を開発いたしました。これにより、従来は困難であった非接触通信技術のコネクタ分野への応用が可能になります。 また、本技術を用いてアンテナを内蔵したトランシーバLSIを試作し、地上デジタル放送のハイビジョン伝送速度に匹敵する15メガビット/秒(Mbps)の非接触データ送受信が可能であることを確認しました。

 非接触通信は、クレジットカード大の非接触ICカードで実用化されているだけでなく、積層化されたチップとチップの間のデータ伝送への応用も期待されています。しかしながら、非接触コネクタ分野への応用にあたっては、前者の技術にはアンテナ面積が大きい、後者の技術にはアンテナが小型であるものの送信チップと受信チップの位置ズレの許容度が小さいという課題がありました。 今回開発した非接触通信技術を用いると、たとえばLSIへの内蔵が可能な直径1mmのアンテナで、1cmの極短距離の非接触通信を1cmの位置ズレがあっても実現できるため、たとえば数cm角サイズのフラッシュメモリカードと携帯情報端末との間の通信インタフェースを非接触にすることができます。この非接触技術の採用により、水の付着や磨耗により接続が不安定になるなどの課題を克服できます。

 このたび開発した技術は、送信側からデータ信号と同期信号を同時に送信する無線通信方式で、受信回路と送信回路で同期信号を個別に生成していた従来方式と比べ、ノイズ耐性が高いという特長を有しております。このため、送信回路と受信回路の位置ズレ許容1cm程度を実現しながらも、アンテナ面積を従来の100分の1となる数mm2に小型化するとともに、アンテナとその送受信回路の1チップ化を実現いたしました。

 また、今回開発した無線通信方式を用いると、受信回路において同期信号を発生させる必要がなくなるので、消費電力が大きいクロック発生回路(PLL)が不要となります。そのため、受信回路の消費電力を従来と比べて50%程度削減することができます。

 非接触コネクタを用いると、機器の小型化はもちろん、使用環境に依存しない高い通信品質の保証が可能になります。また、薄型の携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末などとクレードル(注1)との通信インタフェースを非接触通信にすることで、薄型機器のデザインの自由度を高めることも可能です。

 ルネサスは、今回の成果が、ユビキタス機器の小型化・高信頼化を支援するための基本技術であると考え、今後も研究開発を加速してまいります。

 なお、当社は今回の成果を、6月16日から18日まで、米国ホノルルで開催される学会「VLSI回路シンポジウム(2010 Symposium on VLSI Circuits)」にて、現地時間の16日に発表しました。

以 上

(注1)クレードルとは、携帯電話、スマートフォン、携帯情報端末などに付属するスタンド型の機器で、本体を載せるだけでパソコンなどと接続できる。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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