~80Plus Goldや国際エネルギースター等の厳しい省電力規格に対応可能~
2010年7月7日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰)はこのたび、300W程度の小電力電源ユニット向けに、軽負荷時の高い電力変換効率とスタンバイ時の電力低減により省電力化を図る、電流連続モード(注1)方式の力率改善制御IC(以下、PFC制御IC(注2))「R2A20131」を製品化し、サンプル出荷を開始しました。

 PFC制御ICは、電源ユニットで交流(AC)を直流(DC)に変換する際、入力電圧と入力電流の波形の違いにより生じる電力ロスを、入力電流の波形を入力電圧の波形にあわせるように制御することで低減し、電源の変換効率を高めます。新製品では、電源の最大出力電力の20%という軽負荷時においても電力変換効率87%以上を実現できるため、エネルギー高効率化のために電力変換効率を規定している「80Plus®」(注3)プログラムの中でもより高い効率を求められる「80Plus Gold」(注4)に対応可能です。

 また、入出力電圧検出の際に電力が損なわれる検出抵抗損失については、機器のスタンバイ時の検出抵抗損失を当社従来品の1/5以下の約26.5mWに低減し、オフィス機器の国際的省エネルギー制度である「国際エネルギースター(Energy Star)」や欧州連合(European Union)のEUP指令(注5)で規定されるスタンバイ電力規格に対応した省電力の電源ユニットを実現可能です。

 新製品のサンプル価格は80円/個、量産は2010年10月から開始し、2011年10月以降は月産100万個を計画しております。

 近年、環境保全等のために機器の省エネルギー化が積極的に推進され、電源ユニットにも高効率化が求められています。このため、PCやサーバ用の電源では、「80PLUS」の認証取得や、電力効率に優れたコンピュータ利用による環境保全プログラムであるCSCI(Climate Savers Computing Initiative)(注6)の省エネルギー基準対応、国際エネルギースターやEUP指令などの省電力規格対応等が求められています。これらを満たすためPFC制御ICに対しては、軽負荷を含むほぼ全ての負荷領域で高い電力変換効率を達成することが求められており、今後、さらなる高効率化への要求や規制が高まることが見込まれます。

 当社はこれまで、ほぼ全ての負荷領域で高い電力変換効率が実現可能なPFC制御ICとして、大電力電源(1~数kW)向けに「R2A20104FP」(電流連続モード、インターリーブ(注7)動作)を、中電力電源(200~2kW)向けに「R2A20132SP」(電流臨界モード(注8)、インターリーブ動作)を製品化し多くのPC、サーバ機器に採用されています。そして今回、PCのボリュームゾーンでもある小電力電源向けに軽負荷時の電力変換効率向上に加えスタンバイ時電力の低減も実現した「R2A20131」(電流連続モードシングル動作)を製品化しました。

 新製品の特長は、以下のとおりです。

(1)Load Tracing Boost(LTB)機能により、高い電力変換効率の電源ユニットを実現可能

 PFC制御ICは、入力電流が入力電圧に追従するように電源回路内部で通常DC390V程度に昇圧して制御を行っていますが、新製品では、LTB機能により軽負荷時にはDC320V程度に下げて制御できます。これは、LTB機能が負荷電流を自己検出し、負荷が小さくなると徐々に出力電圧を下げていくためであり、この機能により当社従来品と比べ、20%軽負荷時の電力変換効率を約1%、50%負荷時の効率を約0.5%向上できます。このため、「80Plus Gold」やCSCIなどの規格に対応可能です。

(2)電圧検出抵抗損失の低減により1/5以下の低スタンバイ電力を実現

 国際エネルギースターやEUP指令では今後スタンバイ時の入力電力を現在の約半分となる500mW以下(出力電力250mW時)にすることが求められるため、PFC制御ICは検出抵抗損失を30mW程度に低減する必要があります。「R2A20131」ではこれに対し、当社従来品よりも約2倍となる6メガオーム(MΩ)以上の抵抗で電圧検出を可能としているため、検出抵抗損失を150mWから26.5mWに低減可能です。このため、低スタンバイ電力を実現でき、次世代国際エネルギースター、EPU指令への対応が可能となります。

(3)各種保護機能を内蔵し、高信頼の電源システムの実現に貢献

 新製品は、入力AC電圧が低下した時に動作を停止するブラウン アウト機能、独立した電圧検出によるパワーグッド機能、過電圧保護回路など多種の保護回路を内蔵しています。これら保護回路の搭載により、電源システムの信頼性向上に貢献するとともに電源ユニットの簡素化が図れます。

 パッケージは、面実装パッケージ「SOP-16」を揃えています。

 当社は、新製品が今後ますます高効率化が求められるPCやサーバ、デジタル家電などの電源ユニット開発に対応し、省電力化に貢献するものと考えています。新製品の主な仕様は別紙を御参照ください。また、PFC制御ICの今後の展開としては、低スタンバイ電力対応の製品など、各電力帯や用途に最適な製品ラインアップを揃えていきます。

新製品の主な仕様は別紙をご参照下さい。

以 上

(注1)電流連続モード: 昇圧コイルの電流状態にかかわらず、ICが決めた周期でMOSFETをスイッチングするモード。

(注2)力率改善(PFC:Power Factor Correction): コンデンサ・インプット型のスイッチング電源では入力電圧の波形が正弦波なのに対し、入力電流の波形がパルス的になり、波形形状の差により無効な電力が生じる。これを改善するため入力電流を入力電圧と相似な波形に制御し、力率(有効な電力の比率)を高めるのが力率改善。 また、力率の低下は商用電力線にも悪影響を与えるため、高調波電流(商用電源である50Hzまたは60Hzの整数倍の正弦波)が増えることから、IECやJIS等の標準規格で高調波電流規制を定めており、力率改善はこれを達成するための手段の1つ。

(注3)80PLUS®: PC、サーバ等の電源ユニットのエネルギー変換効率を高める、また、その電源の認証や採用促進を目的としたプログラム。 負荷が、20%、50%、100%において、エネルギー変換効率が80%以上であることが必要。 80PLUSのURL:http://www.80plus.org/

(注4)80 PLUS Gold: 80PLUSのうち、エネルギー変換効率が、負荷20%時87%以上、50%時90%以上、100%時87%以上を規定している。

(注5)EUP指令: 正式名称は「Directive on Eco-Design of Energy-using Products」。 欧州連合(EU)の環境規制の一つで、エネルギー使用製品の環境配慮設計(エコデザイン)を義務づけている。

(注6)Climate Savers® は国際環境保護団体 WWF の商標または登録商標であり、CSCIはWWFの許諾を得て使用。

(注7)インターリーブ: 複数のスイッチング素子(FET)を交互に動作させる方式。

(注8)電流臨界モード: 昇圧コイル電流がゼロであることを検出してから、外付けのMOSFETをスイッチングするモード。

本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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