~制御用パワーMOSFETの総合性能を当社比約40%改善~
2010年7月15日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)は、このたび、サーバ、ノートPC等に搭載されるDC/DCコンバータ(注1)用パワー半導体として、省エネルギー化に貢献する第12世代パワーMOSFET(注2)3品種「RJK0210DPA」、「RJK0211DPA」、「RJK0212DPA」を製品化し、2010年8月よりサンプル出荷を開始します。

 新製品は、例えばバッテリーなどから供給される12Vの電圧をCPU向けに1.05Vに降圧するなど、CPUやメモリ用電圧変換回路で使用する制御用のパワーMOSFET(注3)です。今回、微細化などの改善をおこなった当社第12世代プロセスの採用により、パワーMOSFETの重要な特性指標である総合性能(FOM:オン抵抗(Ron)とゲート・ドレインチャージ容量(Qgd)の積(注4))を当社従来品と比較して約40%改善しており、電圧変換時の電力損失を低減できるため、DC/DCコンバータの高効率化が図れます。

 新製品のサンプル価格は、1個あたり「RJK0210DPA」が50円、「RJK0211DPA」が42円、「RJK0212DPA」が35円で、量産は2010年12月から開始し、2011年7月以降は3製品合計で月産200万個を計画しております。

 サーバ、ノートPC、グラフィックカード等の情報機器や通信機器は、高性能化により電力が増加する一方、搭載されるCPUやGPU(Graphics Processing Unit)、メモリ、ASIC等の動作電圧は低電圧化されているため電流量が増加します。このため、DC/DCコンバータには低電圧/大電流化への対応が求められます。加えて、省エネルギー化や環境負荷軽減のため、電圧変換時の電力損失を低減し、高効率化することが強く求められています。こうしたニーズに対応するため、当社では総合性能を改善(FOM数値を低減)したパワーMOSFETを量産してきましたが、今回、さらに業界トップレベルの総合性能を実現した第12世代3品種を製品化しました。

 新製品は耐圧(VDSS)25Vで、最大電流(ID)は「RJK0210DPA」が40A、「RJK0211DPA」が30A、「RJK0212DPA」が25Aです。総合性能は、それぞれ6.84 mΩ・nC、7.83 mΩ・nC、7.2 mΩ・nC(いずれもVGS=4.5Vでの標準値)と、当社従来の第10世代パワーMOSFET(制御用パワーMOSFETでは、第11世代品より高総合性能)に比べ、約40%改善しています。

 また、制御用パワーMOSFETで重要な特性であるゲート・ドレインチャージ容量(Qgd)もそれぞれ、1.2nC、0.9nC、0.6nCと、当社第10世代パワーMOSFETと比較して約40%低減しており(同一オン抵抗時)、数値が低い程スイッチング損失を削減できるため、DC/DCコンバータの高効率化、さらには機器の省エネルギー化に貢献します。

 なお、DC/DCコンバータでは、制御用と同期整流用の2つのパワーMOSFETを交互にオン・オフして電圧を変換します。制御用に新製品の「RJK0210DPA」を採用し、同期整流用に当社第11世代の「RJK0208DPA」を使用して、12Vから1.05Vに電圧変換する場合の電力変換効率は最大90.6%(出力電流18A時)、出力電流40A時は86.6%(共に、300kHzスイッチング、2フェーズ構成時)と高効率を達成しています。

 パッケージは、5.1×6.1mm、薄さ0.8mm(max.)の高放熱外形「WPAK(当社外形コード)」を使用しています。裏面にダイパッド(Die Pad)を備え、パワーMOSFETが動作時に発する熱を基板へ放熱できる構造となっているため、パワーMOSFETはより多くの電流を制御可能です。

 ルネサスは、今後も各種DC/DCコンバータの低損失/高効率化に適した製品開発を推進し、省エネルギー化や機器の小型化に貢献していきます。

 新製品の主な仕様は別紙をご参照下さい。

 なお、ルネサスは本年7月21日から23日まで、東京ビッグサイトで開催される「第25回電源システム展」に新製品を出展いたします。

以 上

(注1) DC(直流)の電圧を定められた電圧に変換する回路。

(注2) パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化膜半導体 電界効果トランジスタ)は、ゲート、ドレイン、ソースの三端子で構成される半導体素子で、ゲートに信号を印加することでドレイン、ソース間を導通するスイッチ素子。

(注3) DC/DCコンバータの制御用スイッチ(ハイサイドスイッチ)として使用され、同期整流用スイッチ(ローサイドスイッチ)と組み合わせ、交互にオン・オフすることで電圧変換する。

(注4) FOMはFigure Of Meritの略。オン抵抗(Ron)はパワーMOSFETが動作している時の動作抵抗であり、数値が低いほど導通損失を低減できる。ゲート・ドレインチャージ容量は、パワーMOSFETが動作するのに必要な電荷量であり、低いほど高速スイッチングが可能。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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