~低消費電力、高精度、低コスト、安定かつ安全な電力メータシステムを実現するマイコン~
2013年7月23日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役会長兼CEO:作田 久男、以下ルネサス)は、このたび、次世代スマートメータを中心とした電力メータ市場に向けて、電力メータに必要な24ビットΔΣ(デルタシグマ)型A/Dコンバータ(注1)や高精度リアル・タイム・クロック(以下RTC)などの周辺機能を1チップに集積したマイコン「RL78/I1B」を製品化し、本日よりサンプル出荷を開始いたします。

 新製品は、(1) 電力メータシステムの低消費電力化を実現するため世界最小(注2)の 低消費電力ΔΣ型A/Dコンバータを搭載し、電力計測時消費電力を約60%削減、 (2) システム・コストを低減するため内蔵温度センサを使った時計誤差補正が可能な高精度RTCを搭載する事で、システム・コストを約8%低減、(3) 電力メータの安定動作を実現するため32.768kHz(キロヘルツ)のサブクロック水晶振動子を基準クロックとしてハードウェアで補正を行う周波数補正 機能を搭載する事で、高速オンチップ・オシレータの発振精度が±(プラスマイナス)5%から±0.05%へ向上、(4) 安全な電力メータシステムを構築するためバッテリ・バックアップ回路およびバッテリを直結可能な専用端子を搭載し、停電中であってもCPUやRTC、その他周辺機能の動作を保証、などの特長を有しております。

 新製品を採用することによりユーザーは、低消費電力、高精度、低コスト、安定かつ安全な電力メータを構築できます。

 新製品は、内蔵するフラッシュメモリが64KB(キロバイト)または128KB、パッケージが80ピンLQFP(Low Profile Quad Flat Package)または100ピンLQFPの4品種です。サンプル価格は内蔵するメモリ容量やパッケージにより異なりますが、一例としてフラッシュメモリ が128KB、ピン数が100ピンの場合、320円/個となっております。ルネサスは新製品の量産を本年11月より開始し、2014年には月産200万個 を計画しております。

 近年、新興国を中心として世界的に電力需要が増加しており、ルネサスは世界市場における電力メータの設置台数を2016年に16億台超と見込んでおります。各地の電力会社は、増大する運営コストの低減のため、メータその ものの低価格化、メータの消費電力低減、盗電などによる電力ロスの削減を目指しています。このため、電力メータ用マイコンにも、動作中および停電中におけ る低消費電力動作、外部部品の集積化、耐タンパー性(注3)向上や故障検出等の機能安全が求められています。

 ルネサスはこのようなニーズにお応えするため、世界最小の低消費電力A/Dコンバータを搭載し、高精度RTCを内蔵するとともに従来の外付けシステム・クロック用振動子を不要とする新製品を市場投入することにいたしました。

 新製品の特長の詳細は以下の通りです。

(1)世界最小の低消費電力ΔΣ型A/Dコンバータの搭載により、メータシステムの低消費電力化を実現

 電力メータシステムの低消費電力動作を実現するため、1チャネルあたり世界最小の 0.53mA(ミリアンペア)を4チャネル内蔵した低消費電力24ビットΔΣ型A/Dコンバータを新規開発。当社従来品「78K0R/Lx3-M」と比べ、約1/4の低動作電流を実現している。これにより新製品は、6MHz(メガヘルツ)動作時に3.3mAと、単相2線式メータシステムにおける電力計測時消費電力を約60%削減(従来比)することが可能となり、停電時のバックアップ・バッテリ駆動においても約2倍以上の長時間動作に貢献する。

(2)高精度RTCの搭載により、システム・コストの低減に貢献

 電力メータのシステム・コスト低減のため、最小0.96ppm(ピーピーエム、1/100万の意味)の分解能で時計誤差補正可能なRTCを搭載。従来の電力メータシステムでは、正確な時計機能実現のために外付け専用ICが使用されていたが、新製品はRTCと内蔵温度センサを組み合わせて温度補正する方式を初めて採用することで、高精度な時計動作を実現。外付け部品の削減により、システム・コストを 約8%低減させることが可能となる。

(3)ハードウェアで補正を行う周波数補正機能の搭載により、電力メータの安定動作を実現

 32.768kHzのサブクロック水晶振動子を基準クロックとして、ハードウェアで自動的に周波数を補正する「高速オンチップ・オシレータ・クロック周波数補正機能」を新規開発。これにより、当社従来製品「78K0R/Lx3-M」、「78K0/Lx3-M」に比べ、高速オンチップ・オシレータ・クロックの発振精度を±5%から±0.05%へ向上。

 また、従来マイコンでは、PLL(Phase Locked Loop)で外付けサブクロックからシステム・クロックを作り出す構成が一般的であったため、外付けサブクロック水晶振動子が万が一停止した場合、CPUの継続動作が保証できなかった。しかしながら新製品では、外付けサブクロック水晶振動子が停止し、周波数補正機能が使用できなくなっても高速オンチップ・オシレータ・クロックは±1%の精度で発振を継続し、CPUが動作可能であるため、外部部品起因によるシステム破綻を防ぐことができ、電力メータの安定動作を実現する。

(4)バッテリ・バックアップ回路の搭載により、安全な電力メータシステムの構築に貢献

 安全な電力メータシステムを構築するため、従来は外付けトランジスタで構築されていたバッテリ・バックアップ回路を内蔵し、バッテリを直結可能な専用端子を搭載。この回路は停電を検知して電源をバックアップ・バッテリへ切り替えることができるため、停電中のCPUやRTC、その他周辺機能の動作を保証する。さらに停電時も外部割込み命令の監視やRAMデータ保持、外部スイッチ押下によるLCD表示等に対応しており、電力メータの筐体開封検出やEEPROMへのデータロギング(注4)など、耐タンパー性、機能安全に優れた電力メータシステムを実現することができる。

(5)正確な課金を可能にする高精度な電力メータシステムの構築に貢献

 上記のA/Dコンバータは、プログラマブル・ゲイン・アンプ(PGA)、位相調整回路、ハイパス・フィルタなどの電力計測に必要な機能を内蔵しており、0.5%の計測精度であるIEC62053の規格を満たしている。これによりユーザーは、より正確な課金が可能となる。 

 当社は、新製品を電力メータの普及に貢献できるものと位置づけ、今後、エミュレータや評価ボードなどの各種開発ツールとともに提供する計画です。

 新製品の主な仕様は、別紙をご参照ください。

RL78/I1Bの製品情報は、https://www.renesas.com/ja/products/microcontrollers-microprocessors/rl78/rl78i1x/rl78i1b.htmlをご覧ください。

以 上

(注1)ΔΣ型A/Dコンバータ:オーバサンプリングによるビットストリーム化したアナログデータをΔ変調、積分処理及びフィルタリングによるノイズ除去を行い、デジタルデータに変換する方式。

(注2)2013年7月12日時点。ルネサス調べ。

(注3)耐タンパー性:ソフトウェアやハードウェアが備える、内部構造や記憶しているデータなどの解析の困難さ。

(注4)データロギング:時間を追って測定データを記録すること。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。

この記事をシェアする