ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、世界最高レベルの低雑音性能を有する20GHz(ギガヘルツ)帯衛星放送受信用ガリウムヒ素ヘテロ接合型FET(Field Effect Transistor:電界効果トランジスタ)を開発し、「NE3520S03」の名称で、本日よりサンプル出荷を開始いたします。
新製品は、半導体チップのエピタキシャル構造(注1))最適化により、電子の高速化および雑音発生源のひとつであるソース抵抗を大幅に低減いたしました。また三次元電磁界解析手法を用い、ギガヘルツクラスの高周波数領域において半導体チップの性能を引き出すとともに、当社従来品「NE3517S03」との置き換えが容易な中空構造プラスチックパッケージに搭載しました。この結果、雑音指数(Noise Figure: NF)を従来品と比べ0.05dB(デシベル)向上させ、0.65dBという20GHz帯の量産品としては世界最高レベルの性能を実現いたしました。
新製品を採用することで、衛星放送用アンテナメーカーは、HD(High Definition)TV放送などの受信感度向上を実現できます。
新製品は2011年3月から月産100万個の量産を開始し、既存の20GHz帯用低雑音ヘテロ接合型FETとあわせて合計4品種を月産700万個まで拡大いたします。
低雑音ヘテロ接合型FETは主として、衛星放送や衛星通信受信用アンテナのLNB (Low Noise Block Converter、注2)に用いられ、衛星から送られてくる非常に微弱なマイクロ波信号を増幅する半導体製品です。LNBには1台当たり3個から20個程度の低雑音ヘテロ接合型FETが使用されており、雑音性能が低いほど安定した通信や高品質で高精細な映像を得ることができます。
近年、世界的なテレビ放送のデジタル化により放送映像の高画質化および多チャンネル化が進んでおります。特にマイクロ波を使用する衛星放送は地上放送に比べて広い帯域を得ることが容易なため、HDTV放送の多チャンネル化が進んでおります。現在、衛星放送は主に12GHz帯が利用されています。なかでも米国では世界に先駆けて高画質なHDTV番組の多チャンネル化に有利な20GHz帯も導入されるなど市場が急拡大することが期待されています。
20GHz帯を使用した衛星放送は12GHz帯に比較し広帯域化が実現できるだけでなく、波長が短いためにアンテナの小型化に有利です。一方、雨などの気象状況の影響を受けやすいことから、安定した衛星放送を受信するため、市場からはコンバータの低雑音増幅器に使用されるマイクロ波半導体の低雑音化へのニーズが高まっています。
新製品は、このような市場ニーズに応え、低雑音特性を改善するために開発されたものです。
新製品の特長の詳細は、以下のとおりです。
(1)量産品としては業界最高レベルの低雑音性能を実現
超高周波での低雑音化を図るために、高濃度薄層化技術を駆使した新エピタキシャルウェハ構造を適用。これにより、チャネル電子の高速化およびソース抵抗の低減を図り、20GHz帯の量産品としては業界最高レベルの低雑音指数0.65dB(従来品と比べ0.05dB向上)、付随利得13.5dBを実現。
(2)三次元電磁界設計を用いて実現した20GHz帯向け高周波パッケージ
1996年に当社が12GHz帯低雑音ヘテロ接合型FET向けに開発し、現在業界標準パッケージとなっている中空構造プラスチックパッケージに、三次元電磁界シミュレーションを用いて構造を最適化。これにより、使用周波数帯域を20GHz帯にまで拡張。半導体チップ性能を効率良く引き出すとともに従来品の20GHz帯低雑音ヘテロ接合型FETと同等の入出力インピーダンスにできるため、その置き換えにかかる開発工数削減が可能。
ルネサスはこれまでコストパフォーマンスに優れた衛星放送受信用低雑音ヘテロ接合型FETを市場投入しており、業界第1位のシェア(自社推定)を獲得しています。今後も市場ニーズに応えるより優れた製品の開発に尽力し、拡販活動を展開してまいります。
新製品の主な仕様は別紙をご参照下さい。
以 上
(注1) 半導体基板の上に半導体薄膜を積層して結晶成長させた構造のこと。GaAs(ガリウムヒ素)などの化合物半導体を用いた電界効果トランジスタでは、電極を形成するプロセス技術とともにエピタキシャル構造の最適設計がその高周波特性を大きく左右する。
(注2) 放送衛星から送信される微弱な電波を、テレビ受像器やSTB(セットトップボックス)内にある信号デコーダが扱えるレベルまで増幅を行い、周波数を変換する装置。
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