ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、次世代の高機能スマートメータ向けに、業界で初めて512Kバイトの大容量フラッシュメモリと高精度計測に必要な24ビットデルタシグマ(ΔΣ)A/Dコンバータ(注1)を共に搭載した32ビットマイコン「RX21Aグループ」を製品化しました。フラッシュメモリ容量の下位展開を含む合計9品種を本日よりサンプル出荷いたします。
新製品は、スマートメータの高機能化に対応するため、 (1)当社従来品の16ビットから24ビットに高精度化したΔΣA/Dコンバータを搭載する他、通信データ保護や不正アクセス防止のための暗号化エンジン を新たに搭載するなど、スマートメータに必要な周辺機能を1チップに搭載、(2)32ビットCPUを採用すると共に、内蔵フラッシュメモリの容量は当社従 来品比2倍となる512Kバイトを実現しています。加えて、(3)スマートメータに重要な低消費電力に対応するため、マイコンのCPUには高性能かつ低消 費電力を実現した「RX」CPUを採用。周辺機能も低消費電力化を図り製品全体の低消費電力を実現しました。そして、(4)各メータ機種(主に家庭で使用 する単相式や産業で使用する三相式など)や内蔵フラッシュメモリ容量に対応した9品種により、各国のスマートメータに適用可能 などの特長を有しております。
このため、従来、電力計測、メータ制御および電気料金計算、データ暗号化用にそれぞれ搭載して いた半導体製品を「RX21Aグループ」では1チップで実現可能となり、部品点数の削減によるコスト低減が図れます。そのうえ、様々なメータ機種に 「RX21Aグループ」で対応できるため、システム設計の共通化による機種展開時の開発効率向上が可能となります。
当社は新製品に加え、電力測定用ミドルウェア、キャリブレーションツール等の開発支援環境も今後提供していきます。「RX21A」の量産は2012年12月から開始し、月産50万個を計画しています。
背景
近年、スマートグリッドの進展により、省エネルギー化が図れるスマートメータ市場が急速に拡大しており、2014年に年1億台超のスマートメータが導入されると予想されています。スマートメータの普及に伴い低消費電力はもとより、各国の時間帯別料金など電力サービス多様化を実現する電力演算の複雑化および、通信データ保護や不正アクセス防止のためのセキュリティ性能強化などの高機能化が必要となり、搭載するマイコンにも高性能化が求められています。また、メータ機種の開発期間短縮や効率化などの要求が強まると見込んでおり、様々な機種展開に対応できるマイコンの豊富なラインアップが望まれています。加えて、昨今のエネルギー利用効率化を実現するHEMS(注2)市場も活況を呈しており、今後、ますます電力計測用マイコンの高機能化や内蔵フラッシュメモリの容量増加が見込まれます。
当社はこれまで、電力演算と通常課金が可能な電力メータ用マイコンとしてΔΣA/Dコンバータを搭載した8/16ビットマイコンを量産しておりますが、上記のような背景から32ビットマイコン「RX21Aグループ」を製品化したものです。これにより、当社ではローエンドからハイエンドまでのΔΣA/Dコンバータ搭載スマートメータ向けトータル製品群を提供できます。
特長
「RX21Aグループ」は、業界で初めて512Kバイトの大容量フラッシュメモリと24ビットΔΣA/Dコンバータを共に搭載した32ビットマイコンであり、主な特長は以下のとおりです。
(1)24ビットΔΣA/Dコンバータや暗号化エンジン等のメータ向け周辺機能を搭載
新製品は、当社従来の16ビットから高精度化した新開発の24ビットΔΣA/Dコンバータを搭載し、暗号化エンジン、RTC(Real Time Clock:時計)、IrDA(注3)等のスマートメータに必要な周辺機能をほぼすべて搭載しています。このため、部品点数の削減によるコスト低減が図れます。
なお、24ビットΔΣA/Dコンバータは、85dBの変換精度(SNDR)を実現しており、暗号化エンジンはAES暗号(鍵長256ビット)に対応しています。このため、スマートメータの測定精度向上に加え、次世代で要望される通信データの保護、不正アクセス防止といったセキュリティ機能が向上できます。
(2)高機能スマートメータに対応した高性能CPUと大容量メモリを搭載
当社従来のΔΣA/Dコンバータ搭載16ビットマイコンから32ビットマイコンに高性能化し、動作周波数も50MHzに高速動作化しています。また、高性能処理に伴うマイコンのプログラム容量増加に対応するため、内蔵フラッシュメモリの容量を当社従来品比2倍となる512Kバイトに増加しました。
(3)「RX」 CPUに加え低消費電力周辺機能を搭載し、製品全体の低消費電力を実現
新製品は、業界トップレベルの0.2mA/MHzという低消費電力動作の「RX」 CPUを搭載すると共に、スタンバイモードの消費電流は、RTC動作時で1.0μA、RTC停止時では0.3μAの低消費電力動作を実現しています。これにより、スマートメータ動作時の消費電力低減、停電時のバックアップバッテリの小型化を実現できます。
(4)単相式や三相式といった各メータ機種に合せた9品種の製品をラインアップ
新製品は、主に家庭で使用される単相方式および主に産業用途で使用される三相方式のスマートメータに対応するため、24ビットΔΣA/Dコンバータのチャネル数が3チャネル、4チャネル、7チャネルの製品を揃えると共に、各国の課金や通信システムの違いに対応するため、内蔵フラッシュメモリの容量を256Kバイト、384Kバイト、512Kバイトの3種類を上記の製品毎に揃えています。このため、全9品種のラインアップにより、スマートメータの様々な機種に対応すると共に、システム設計の共通化による、機種展開時の開発工数削減が図れます。
「RX21A」のサンプル価格は1個あたり660円となっております。
ルネサスでは、新製品用の開発支援環境を提供していきます。また、スマートメータにおいて、マイコンと通信インタフェース部との絶縁に使用するフォトカプラとして「PS2513/14」等を製品化しており、新製品とのキットソリューションも展開していきます。
「RX21A」の主な仕様は、別紙をご参照下さい。
以 上
(注1)ΔΣ(デルタシグマ)型A/D変換器: オーバサンプリングによるビットストリーム化したアナログデータをΔ変調、積分処理及びフィルタリングによるノイズ除去を行い、デジタルデータに変換する方式。 32 ビットCPU、512KB以上のフラッシュメモリ、24ビットΔΣA/Dコンバータを搭載した製品は、2012年6月28日時点で業界初。当社調べ。
(注2)HEMS:Home Energy Management System。自宅での電力管理を行うシステム。
(注3)IrDA: Infrared Data Association
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