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望月 誠二
主管技師
掲載: 2021年12月20日

概要

次世代自動車におけるソフトウェア開発およびシステム検証のシフト・レフトを支援するため,プレシリコンでのソフトウェア開発を実現するVirtual Platform (VPF),アルゴリズム検討フェーズからターゲットマイコンでの機能・性能確認を可能とするEmbedded Targetを開発・提供しています.

背景

次世代自動車の開発においては,ネットワーク接続,自動運転などの新たな要件に対応するため,車載システムの開発手法の変革が必要とされています.

ネットワーク接続や自動運転に対応するためには,高い通信・センシング能力,認知・判断機能と制御機能の高度な連動,機能安全とセキュリティの充実などが必要とされ,システム,特にソフトウェアが大規模化・複雑化しています.そのため,車両開発の初期段階におけるアルゴリズム検討や,半導体サンプルを用いて行うソフトウェア設計およびシステム検証が長期化しています.また,システム検証で不具合が発生し,その対策がアルゴリズム検討フェーズにまで遡って対応が必要となる場合,より多くの時間を遡らなければならず,手戻りリスクが増大しています.

これらの課題を解決するため,私たちは,これまでの半導体中心の枠を超えてお客様の車載システム開発を支えることで,クルマに新たな価値をもたらすような開発環境/ツールの企画・提案・開発に取り組んでいきたいと考えています.

具体例

私たちは上記の背景を踏まえて、車載システム全体の開発期間短縮を実現するモデルベース設計環境(※)を開発・提供しています.

(※)モデルベース設計:ハードウェア設計・製造前に,モデルを用いてソフトウェア設計やシステム検討・検証を行う手法.

  1. 車載MCU/SoCの機能を仮想的に模擬するモデルであるVirtual Platform (VPF)を開発・提供 プレシリコンでのソフトウェア開発を可能とし,SoCとソフトウェアの並行開発により開発期間を短縮することができます.さらに,ソフトウェアを早期に開発することで,システム検証をハードウェア設計前へとシフト・レフトし,手戻り工数を削減することができます.

    ハードウェアの仕様・動作を忠実に模擬する一方,適切な粒度でモデル化することで高速なシミュレーションが可能となります.また,ハードウェアの仕様が定まっていない開発初期段階に動く仕様書として,ハードウェア設計の指針ともなります.そのため,ハードウェア設計者,ソフトウェア設計者,システム設計者まで幅広い素養のエンジニアが参画し開発を進めています.

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  2. アルゴリズム記述からマイコン用ソフトウェアおよび検証環境を自動生成するEmbedded Targetを開発・提供

    アルゴリズム検討フェーズにてターゲットマイコンでの機能・性能確認を実現し,開発早期にハードウェアを想定した機能・性能確認を行うことで,手戻り工数を削減することができます.自動生成したソフトウェアをVPF上で実行する検証環境を自動構築できるため,VPFと連携した検証が容易に実行可能となり,開発期間を短縮することができます.

    CPU,ソフトウェア,EDAツールに対しての深い専門知識と豊かな経験を持ったエンジニアが集結し,アルゴリズム記述からのソフトウェア自動生成やシミュレーター連成動作などの高度な技術を開発しています.

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まとめ

私たちの生活に大きな利便性をもたらす自動車は,今大きな変革を迎えています.それはその開発を支える開発環境についても同様です.自動車開発の技術革新を支えるソリューションの提供に,我々は今後とも取り組んでいきます.

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