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人間とロボットが共に働く未来のために、機能安全を追求するNexCOBOT社

2024年5月29日

アシスタントロボットというと、命令に従順な召使いロボット、あるいは逆に人間界の崩壊をたくらむ知能的なアンドロイドの親玉をイメージする人もいるでしょう。もちろん実際のロボットは、はるかに実用的なものです。例えば協調ロボット(通称コボット)は、熟練労働者の不足、上昇する人件費、複雑さを増す物流やサプライチェーンの状況が追い風となって、既に産業分野に浸透しています。

Industry Researchのデータによると、世界の産業用コボット市場は2022年の7億7,100万ドルから2029年には16億6,140万ドル以上に膨れ上がると予想されています。新型コロナ感染症を経て、人工知能(AI)の進歩やデジタルトランスフォーメーションなど、新たな製造・生産に対する考え方も相まって市場拡大が加速すると見ています。

しかし、この話題で見過ごされがちなのは、「人間とコボットがこれまで以上に物理的に近い距離で活動するうえで、両者が安全かつ調和の取れたかたちで協働するためには、どのような対策を取り入れるのが最善なのか」という点です。

NexCOBOT社の成り立ち

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2012年、台湾に本社を置く世界有数のインテリジェント・ソリューション・サプライヤであるNEXCOM社は、社内のロボット工学と機械制御を専門とする産業オートメーションとソフトウェアの専門家を集めたIoTオートメーションソリューション・ビジネスユニットで、コボットシステムのコンセプト開発を開始しました。2018年には、この開発の取り組みとエンドマーケットでのビジネスチャンスの拡大が十分に成熟し、同部門が独立して現在のNexCOBOT社が発足しました。

NexCOBOT社のゼネラルマネージャを務めるJenny Shern氏は次のようにコメントしています。「2018年は、AIを駆使したスマートマニュファクチャリング、インダストリアルIoT、ロボティクスのブームがまさに始まったことを実感した年でした。私たちは、この3分野を統合した新しい市場領域に注力するため、機を逃すことなく会社を立ち上げました。」

親会社のNEXCOM社が堅牢な産業用PCハードウェアプラットフォームと製造インフラを提供する一方で、NexCOBOT社は安全プロトコルに特化した専用のソフトウェア開発環境とアプリケーションエンジニアリングチームの立ち上げに注力しました。

コボット向け機能安全をめぐる市場の啓蒙

NexCOBOT社はまず、産業用ロボット設計用のロボット一式とそのトレーニングコースを用意し、取引先や大学、専門学校を教育するプログラムを開始しました。この地域的な取り組みによって、グローバルに市場を拡大する基盤を築き、今や機械メーカやロボット設計者に向けたEMCや信号絶縁要件、設計仕様までを網羅した産業用制御プラットフォームを整備しました。

現在、NexCOBOTの機能安全(FuSa)ポートフォリオでは、産業用ロボットやEtherCATモーションコントローラ、リモートセーフティデジタルIOなどのさまざまなハードウェアとソフトウェア開発キットを展開しています。ユースケースも拡大しており、AIを駆使した半導体ウェハ検査や、欠陥検出、物体認識、他にも環境に配慮した廃棄物リサイクル工程で人間と協働するベルトコンベアトラッキングシステムなどがあります。

Shern氏はまた、「モジュール化した形で製品シリーズを適切に提供する方法を見つける、これが当社が最初に克服した課題でした。当社の顧客の中には、ハードウェア設計の専門知識を必要とする顧客もいれば、ソフトウェアだけを求める顧客もいます。あるいは、ハードウェアと統合されたソフトウェア設計が必要な顧客もいれば、ドキュメンテーションや機能安全トレーニング、コンサルティングサービスまで求める顧客もいます。このような幅広いニーズに応える総合的なアプローチにより、当社はオープンプラットフォームとして柔軟性と拡張性を兼ね備えたモジュール型の提供形態を実現できます」と述べています。

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コボット設計で重要性が高まる機能安全

NexCOBOT社の創業当初は、産業機械メーカは機能安全をさほど重視していませんでした。しかし、この分野で自動化が進むにつれ、ISOなどの標準化団体や規制機関が産業環境の安全性を確保するために目を光らせるようになりました。NexCOBOT社はまさに適切な時期に適切な立場にいたのです。

「当初は、要件がほとんど整備されていませんでした。産業用ロボットの新しいISO安全規格が整備されることを知っている顧客もいましたが、その時点ではまだあまり普及していませんでした。しかし当社はこの段階で、ドイツのパートナと共同で革新的なプログラムを立ち上げ、トータルな機能安全ソリューションをリリースしました。万全の準備を整えていたため、時間とともに、当社のソリューションを求める顧客はますます増えていきました」とShern氏は語ります。

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機能安全の普及を加速させるルネサスの技術

NexCOBOT社は、2022年にルネサスのサポートの下デジタルセーフティIOインタフェースの設計に着手し、それ以来、ルネサスのRXマイコンとRZ MPU(マイクロプロセッサユニット)、認証済みの機能安全ソリューションソフトウェアキットとセルフテストライブラリを採用しています。産業用システムは概して民生品より設計プロセスが長期化しますが、昨今の顧客は新たな機能安全設計とワーキングプロトタイプをかつてないほど迅速に求めているとShern氏は言います。ルネサスのマイコンとMPUを対象としたルネサスのワンストップ機能安全ソリューションはこうしたニーズにも対応し、NexCOBOT社の機能安全の開発期間は3分の1(6年から2年)にまで短縮されました。

「ルネサスは、組み込みシステムのあらゆるニーズに対応した包括的な機能安全ソリューションを提供しています。通常、組み込みシステム向けの機能安全を検討する場合、顧客はハードウェアチップセット、リアルタイムOSソフトウェア、トータルなセーフティライブラリをそれぞれ別のベンダに依頼しますが、この全てを統合するのは大変です。ルネサスは包括的なサービスを提供してくれるため、作業がかなり楽になり、プロジェクトもスムーズに遂行できます」とShern氏は述べます。

NexCOBOT社とルネサスはこれからも協業して、業界の安全水準を向上させ、人間とロボットのより深い、そしてより生産的な協働を推進していきたいと考えています。両社の力を合わせれば、産業オートメーションの新時代を実現できるでしょう。

NexCOBOTの紹介ビデオ(英語)