ルネサスの「2023 Business & Sustainability Report」は、お客様、従業員、パートナ、投資家の皆様にとってより持続可能な未来を実現するための長期的なコミットメントを反映しています。温室効果ガス(GHG)の排出量削減から、サプライヤのエンゲージメント向上、社会貢献まで、グローバルに進めているさまざまな取り組みには、「To Make Our Lives Easier(人々の暮らしを楽(ラク)にする)」というパーパスの達成に向けて尽力する姿勢が表れています。
ルネサスのサスティナビリティ推進室長に新たに就任したCharles Kawashimaが、ルネサスの執行役員常務兼オペレーションヘッドであるSailesh Chittipeddi(サプライチェーン、調達、プロセス、パッケージ、テストプラットフォーム開発を含む、社内外のグローバルな生産体制全般の責任者)とルネサスのサスティナビリティの取り組みについて対談しました。
Charles: 2023年は地政学的に先行き不透明な状況や世界的なインフレ、金利の上昇など、半導体業界に逆風が吹いた年でした。このような課題に直面するなかで、ルネサスは社内外の事業分野でサステナビリティの目標をどのように推進したのでしょうか?
Sailesh: ルネサスは、社内のオペレーションから、ファウンドリのオペレーション、社外のオペレーション、そして調達やサプライチェーンまで、一手に束ねるチームを立ち上げて、オペレーションを一気通貫で管理できる体制を整えるために何年もかけて取り組んできました。ルネサスの工場や世界各地の生産チームは、環境推進部と連携し、先進的な生産プロセスを通じてグローバルな目標の達成に努めています。サプライヤ各社との緊密な連携も目標達成には欠かせません。これはサイクル全体の課題ですから、お客様に求められることを、私たちも自社工場やサプライヤに求めます。サプライヤのエンゲージメントを最優先し、さまざまな取り組みを続けてきた結果、Carbon Disclosure Project (CDP) のサプライヤ・エンゲージメント・リーダに2年連続で認定されたことを誇りに思っています。
Charles: GHG排出量削減など、気候変動に関する近年の成果や進捗状況を教えてください。
Sailesh: ルネサスは、省エネ、グリーンエネルギーの利用拡大、PFCガス除外装置のようなテクノロジへの投資を通じて、スコープ1(製品の生産など直接排出)とスコープ2(電気の使用など間接排出)のGHG排出量を削減してきました。2030年までには排出量を(2021年比で)38%削減し、2050年までにスコープ1とスコープ2を完全にカーボンニュートラル化することを目指しています。既に2022~2023年は、2021年から排出量を17.9%削減しました。
なお、ルネサスのGHG排出量の約3分の2はサプライヤに由来するもの、つまり上流や下流で生じるスコープ3排出量(別名バリューチェーン排出量)です。スコープ3の遵守は任意であるため、この分野での進捗を推進するには、サプライチェーン全体にわたる取り組みが求められます。現在は、スコープ3のカテゴリ1に対応するサプライヤと連携してGHG排出削減目標の設定を進め、「Science Based Targets initiative(SBTi)に認定された目標を、2026年までに70%のサプライヤに設定してもらう」ことを目指しています。
Charles: この目標の達成に向けて、どのような取り組みを予定していますか?
Sailesh: A key component of our program includes annual supplier audits. This year we are striving to achieve 80% participation in these surveys in addition to placing a strong focus on human rights.
中核となる活動の一つが、年1回のサプライヤ監査です。今年は人権に重点を置きつつ、監査への参加率を80%にしようと努力しています。自ら取り組みを推進している大手サプライヤもあるため、監査から学べることはたくさんあります。水や廃棄物のリサイクルでもGHG排出量の削減でも、見事な成果を挙げている大手サプライヤから学んだことはルネサスの工場で実践できます。
さらに、サプライチェーン全体のトレーニングを強化して、環境対策やオペレーションのパフォーマンス向上を図るサプライヤの活動を支援したいと考えています。トレーニングを重視するのは、サプライヤの多くを占める中小企業に働きかけ、啓蒙するための道筋を示すことがルネサスの義務だと考えているからです。そうすれば、ルネサスのサプライチェーンの上流や下流に位置する全サプライヤにとってもメリットがあります。
Charles: ルネサスはサステナビリティ目標の達成を推進するために、テクノロジ分野のリーディング企業という立場をどのように活用していますか?
Sailesh: 個人的に期待しているアプローチの一つが、人工知能(AI)の導入です。AIは既に世界中の自社工場で製品開発の最適化やリスクとコストの最小化に役立っています。設計やテストの分野では、AIを駆使した組み込み技術が設備監視の精度を高め、生産性を向上させます。例えば、処理装置のわずかなガス漏れを検出して保守チームに通知すれば、設備の寿命を延ばすと同時に、従業員の健康と安全を守ることもできます。
いまやAIは、工場の歩留まり向上から予知保全、検出、そして化学物質の使用削減につながる設備稼働率の向上まで、ルネサスの業務全体を刷新するための切り札になっていると思います。また、サプライヤのツールを活用することで、AI技術による電力、パフォーマンス、スペースの最適化も既に進めています。
Charles: ありがとうございました。これまで成し遂げてきたことをあらためて実感し、胸が躍ります。今後も、Saileshのチームやサプライヤ、お客様、そして社内各所と協力して、この重要な分野におけるルネサスの勢いに拍車をかけ、より一層取り組みを加速させていきたいと思います。
*2024年7月31日追記:2023年度 統合報告書の日本語版を発行しました。ぜひ「レポートをダウンロード(英文)」の下の「参考和訳」からダウンロードしてご覧ください。