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『RX23W Bluetoothモジュール』の量産開始。開発者が語る、誕生の舞台裏

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Kazuhisa Okada
Kazuhisa Okada
Principal Engineer
掲載: 2021年3月31日

32-bitマイコンRXファミリがデビュー10周年を迎え、新たなラインナップとして、
各国電波認証を取得済みのアンテナ内蔵RX23W Bluetoothモジュールの量産を開始しました。

無線通信が可能なMCUは小型IoT機器を実現する上で欠かせなくなっております。我々は2019年にBluetooth内蔵の高性能RXマイコンRX23Wを発表し多くのお客様に採用頂いています。一方で、無線を扱った経験がないお客様には、アンテナの設計・評価や電波法認証の取得をお客様自身で実施して頂く必要がありますので、これらの無線技術が採用のハードルになっていると感じていました。また、ウェアラブル機器を中心にあらゆるデバイスに小型化が求められていることもあり、無線の経験の少ないお客様にも簡単にBluetooth5機器を実現出来る超小型モジュールをラインナップに追加する事にしました。

これまでも小型のBluetooth通信モジュールはありましたが、マイコンの豊富な周辺機能も使える多ピンの製品は多くありませんでした。このRX23Wモジュールは、RXマイコンの特長を活かし、USBやタッチキーなどの機能はそのまま使える上に、小型パターン・アンテナ、Bluetooth専用水晶振動子、バイパス・コンデンサを内蔵した世界最小クラスのモジュールです。
 

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Figure-1-RX23W-Module-Images-575w

図 1: RX23W モジュールイメージ

私は入社以来約20年間、携帯電話・Sub-GHz帯など無線関連の技術開発を行ってきましたが、
本製品は、これまでで最も開発難易度の高いものでした。今回は、本製品の開発リーダ―として、企画から量産に至るまでのお話しをしたいと思います。

まず開発にあたり、世界最小クラスを目指すために、搭載部品は必要最小限とし最小サイズのものを選定しました。そして一番のポイントであるアンテナは、お客様が簡単に使える事を優先し、小型パターン・アンテナを採用しました。基板の設計においては、搭載部品の配置や基板レイアウトは各信号の仕様(最短配線、コンデンサの配置)を考慮しつつ、同時にRF特性とアンテナ特性を劣化させないように注意しました。また、信号線だけでは無く、グランドパターンやビアホールまで細部の検討とシミュレーションを繰り返すことで小面積化を実現しました。

次にフィールド試験についてご紹介します。アンテナ特性は、実験室内の評価では所望の特性が確認出来ていましたが、実際に野外で電波を飛ばしてみないと安心できません。また、本製品が通信に使用する周波数は2.4GHz帯ですが、無線LANや他のBluetooth通信もこの周波数帯を使用しているため、周囲環境によっては混信が発生します。評価にあたっては、まず自分のスマホやPCを“機内モード”に設定します。次に送信機と受信機双方を、地上から約2m の高さになる
ように三脚を使用して設置します。この時、アンテナ近傍に金属が配置されるとアンテナ特性への影響がある為、木材を使ってボードを固定しました。そして、測定者自身(人体)もアンテナ特性に影響を与えないように長いケーブルを用意し、離れた場所から測定を行いました。所望の通信特性が得られている事が確認出来た時は、嬉しく感じると同時に安堵しました。

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Figure-2-Field-Test-Evaluation-Environment-575w

図2: フィールド試験の評価環境

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Figure-3-Field-Test-Communication-Characteristics-575w

図 3: フィールド試験の通信特性 

今回、私たちが開発したRX23Wモジュールについて、開発や評価のエピソードを紹介させて頂きました。世界最小クラスで、容易にBluetooth5機器を実現出来る多機能MCUモジュールとして、自信をもって市場に出せる魅力のある製品だと自負しております。これからは、店頭に並んでいるRX23Wモジュールを搭載した商品を購入し、使用する事を楽しみに待ちたいと思います。

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