画像
Koichiro Sugata
Koichiro Sugata
Principal Engineer
掲載: 2024年11月20日

高まるマルチネットワーク対応の重要性と設計課題

近年の製造業の自動化に伴いPLC、モーションコントローラ、CNCなどの制御装置のネットワーク対応の多様性が重要になっています。これらの制御装置は、サーボやインバータなどのデバイス機器との通信にEtherCAT やPROFINETなどの産業イーサネット(IE)のコントローラの対応が必要ですが、複数のプロトコルに同時対応するケースや、同じプロトコルで複数のネットワークに対応するケースも出ています。加えて、工場の管理システムや、HMI機器などとの通信には汎用イーサネットの実装も必要です。また、モーションコントローラやCNC、小型のPLCでは、メインPLCとの接続にIEが使用されるため、IEのデバイスの対応も求められます。そして、異なるメーカの機器やシステムが使用される工場では、出荷先で使用されているIEのプロトコルに対応するため、IEのマルチプロトコル対応も重要です。このように制御装置の開発では、IEのコントローラとデバイスの両方にマルチプロトコルで対応することや、汎用イーサネットを複数ポート実装するなど、柔軟にネットワーク要求に対応する必要があります。

様々なプロトコルと複数のイーサネットに対応するには、メインの処理をするMPUに加えて、EtherCATやPROFINETに対応した専用の通信LSIや、HWをプログラミングできるFPGAを使用したり、汎用のイーサネットであればマイコンを追加するなど、ネットワークの要求に合わせてハードウェアを構成する必要があります。更に各デバイスにはそれぞれ電源やメモリが必要であり、メインMPUと追加されたデバイスの通信も実装しなければいけないため、ハードウェア設計は複雑になります。

画像
Combination of LSIs for Various Networks
図1:様々なネットワークに対応する為のLSIの組み合わせ

ワンチップで様々なネットワークの要求に柔軟に対応

前述したネットワークの要求を実現するためには、それぞれのネットワークに適したCPUと周辺機能を搭載し、OS(Operating System)に対応したMPUの選択が必要です。RZ/T2HはアプリケーションCPUとしてCortex-A55 1.2GHzを4個と大容量で高速なメモリとしてLPDDR4-3200 32bitをサポートするDDR IFを搭載し、IEコントローラの対応で広く使われるLinuxを実行可能です。また、リアルタイムCPUとして Arm® Cortex®-R52を2個と、大容量の密結合メモリ(TCM) 576KBを各CPUに搭載しており、実行時間のブレをなくし確定的な高速応答処理を実現します。コントローラに対して決められたサイクルで応答が求められるIEのデバイス対応に最適です。ネットワーク機能としては、EtherCAT 用のスレーブコントローラ(ESC)、PROFINETやEtherNet/IPなどに対応する3ポートのイーサスイッチ(ETHSW)、3つのギガビットイーサネットマック(GMAC)と、これらの機能と4つの外部ポートを柔軟に切り替えるためのマルチプレクサを持っています。1チップで様々なネットワークを対応でき、ハードウェアの設計工数の削減と、部品点数削減によるPCBボードサイズの縮小が実現できます。

画像
Hardware Configuration of RZ/T2H
図 2: RZ/T2Hのハードウェア構成

PLCを例にすると、IEのコントローラ向けに2ポートと、監視システムやHMIなどとの接続用として汎用イーサネット向けに1ポートの合計3ポートにGMACを割り当てることが可能です。また、モーションコントローラやCNCでは4ポートのうち、2ポートをEtherCATなどのIEのデバイスとして使用し、残りの2ポートをIEのコントローラとして使用することが可能です。

コンビネーションPort 0Port 1Port 2Port 3
1
(使用例:PLC)
コントローラ
(GMAC)
IE コントローラ
(GMAC)
監視システム/HMI
(GMAC)
2
(使用例:モーションコントローラ, CNC)
EtherCAT デバイス
(ESC)
IEコントローラ
(GMAC)
IEコントローラ
(GMAC)

通信の用途に応じて、アプリケーションCPUとリアルタイムCPUから最適なCPUを選択でき、豊富なネットワーク機能でIEのコントローラとデバイス、汎用イーサネットを柔軟に対応するRZ/T2Hを活用いただくことで、通信専用LSIやマイコンなどの部品を削減し、ハードウェア設計を容易にします。また、機種展開時に異なるネットワーク要求が発またRZ/T2Hの製品WEBサイトからは、Linux、FreeRTOS生した場合、ハードウェアを変更せず、ソフトウェアで外部ポートへの割り当てを変えることで柔軟に対応でき、ハードウェア開発工数の削減が可能です。

ネットワークプラットフォームの開発に必要な評価ボード、サンプルプログラムを提供

EVK-RZ/T2Hは、RZ/T2Hに大容量のLPDDR4メモリ、4つのイーサネットポートなど必要な部品がすべて搭載されており、様々なネットワークのソフトウェア開発が可能です。

画像
RZ/T2H Evaluation Board (RTK9RZT2H0S00000BJ) Image
図 3: RZ/T2H Evaluation Board (RTK9RZT2H0S00000BJ)

またRZ/T2Hの製品WEBサイトからは、Linux、FreeRTOSに対応したサンプルプログラムがダウンロード可能です。OPC UAやEtherCATなどのIEのコントローラとデバイス向けや、汎用イーサネット向けなど、ネットワーク向けサンプルプログラムも充実しています。各種サンプルプログラムをダウンロードし、評価ボードと共に利用いただくことで、RZ/T2Hの評価をすぐに開始することが可能です。

詳しくは、RZ/T2Hの製品ページをご参照ください。

この記事をシェアする