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学生アーティストによる壁画制作、ルネサスの豊洲オフィス・武蔵事業所で実施 15周年の節目

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Renesas Editorial Team
Renesas
Renesas Intcom
Published: October 8, 2025

2025年、ルネサスは発足から15周年という節目を迎えました。この15年の歩みの中で、ルネサスは日本企業の半導体事業を統合した企業としてスタートし、激しい競争が繰り広げられる世界の半導体業界において勝ち残りを目指し、積極的に企業変革に取り組んできました。その結果、製品や技術の革新、そして社員の多様化とグローバル展開を通じて、真のグローバル企業としての基盤を確立するに至りました。 こうしたこれまでの軌跡や、これからのルネサスの未来へのビジョンを「目に見える形」で表現し、社員全員で共有したい。そのような思いから、今回社内の壁をキャンパスとした壁画プロジェクトを立ち上げました。 さらに今回は、壁画の制作を現役の学生アーティストに託すことを決めました。

グローバルに挑戦し続けるルネサスと、未来に向かって懸命に努力し表現を磨き続ける美術学生たちに重なる想いがあると感じ、この機会が学生たちの今後の飛躍に少しでもつながればという願いが背景にあります。今回壁画制作を手がけたのは、学生アーティスト2名です。「Renesas × Rising Artist Program」と称した公募には、全国16校の美術系大学から32名の応募があり、その中から選ばれた学生が、豊洲オフィスと武蔵事業所にて、初めての壁画サイズの作品を4日間で完成させました。

お二人の制作の様子や思い、手掛ける絵画のスタイルなどをご紹介していきたいと思います。

豊洲オフィス担当

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Ms. Kotori Nakamura with one of her past works

中村 琴梨(なかむら ことり)さん
京都精華大学 芸術学部 洋画専攻 4年生

トップバッターは、豊洲オフィスのゲストエリアで壁画を担当する中村さんでした。 制作前、中村さんは「不安と緊張はありますが、自分にとっては大きな挑戦の機会だと思っています。たくさんシミュレーションとトライアンドエラーを繰り返して、自分が納得できる作品を描ければ良いなと考えています。」と話されました。

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Ms. Kotori Nakamura tracing shadows near the Toyosu office
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Photo of Ms. Kotori Nakamura while creating the mural
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Photo of Ms. Kotori Nakamura painting the mural

制作初日、真っ白な壁の前に立つ中村さんの姿には、覚悟と期待がにじんでいました。 「影取り」という独自の技法を用いて作品を制作する中村さん。「影取り」とは、植物や都市の影を紙に映し出し、鉛筆でなぞって型紙を作る工程です。中村さんの作品は、出来上がった型紙を何層にも配置し、色を重ねていくことで完成します。

約2×6メートルという巨大な型紙を慎重に壁に貼り付け、少しずつ色づいていく様子は、職場に新たな雰囲気が生まれていくようでした。

制作の中で一番苦労したことは、「ローラーの扱い」と話された中村さん。「一見初心者向けに見える道具ですが、実はとても繊細で、少しの迷いや集中力の乱れがすぐに作品に現れてしまいます。腕の動かし方ひとつで色の重なり方が変わるので、常に緊張感を持って取り組んでいました。」と振り返られました。

制作期間中は、社員が足を止めて声をかける場面もあり、作品が人と人をつなぐきっかけになっていたようです。中村さんは、オフィスという生活空間に絵を描くことの意味をずっと考えていたそうです。実際にそこで働く方々の顔を見たり、一緒に食事をしたりする中で、「この人たちのために作品を作っているんだ」と実感するようになったとお話されました。

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Photo of Kotori Nakamura's completed mural

完成後、中村さんはこう振り返っています。 「私たちが普段見ている世界は、よく見ているようで実は見えていないことが多いと思います。半導体が目に見えないヒーローであるように、私の作品も、見えているけれど見えていないものを表現しています。行き詰まった時や苦しい時、少し足を止めて、そんな世界と触れ合えるような作品になれば嬉しいです。また、人のために作るということが、こんなにも充足感を与えてくれるのだと感じました。普段の制作は続けながらも、社会とつながる作品づくりを意識していきたいと思います」。

武蔵事業所担当

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Photo of Mr. Ujitoshi Akasa with one of his past works

赤佐 氏利(あかさ うじとし)さん
多摩美術大学 美術学部 グラフクックデザイン学科 4年生

武蔵事業所の壁画を担当したのは、赤佐 氏利さんです。今回のプロジェクトでは、江戸時代の絵巻「熈代勝覧」から着想を得て、半導体技術が支える未来の街と人々のつながりを、独自の視点でポップに描かれました。

制作前、赤佐さんは「これほど大きな絵を描くのは初めてで、とてもワクワクしています。今持っている力をすべて出し切りたい」と話し、挑戦への高揚感と創作への意欲を感じさせてくれました。

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Gravel was used as a material Mr. Ujitoshi Akasa's mural
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Photo of Mr. Ujitoshi Akasa and his friend creating the mural
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Photo of work being done on Mr. Ujitoshi Akasa's mural

赤佐さんの作品にはさまざまな工夫が込められています。ある部分には、自作のシルクスクリーンを用いた半導体の模様が取り入れられています。また、基盤となるような位置に、ルネサスのPurposeである「To Make Our Lives Easier」の文字が描かれています。

さらに、今回新たな挑戦として“砂利”という素材を壁画に取り入れられました。赤佐さんにとって「壁に砂利を貼る」という表現は初めての試みで、床に置いたパネルに貼るよりもはるかに難しく、予想以上に苦労したと振り返ります。「砂利は、私たちが日常的に踏みしめる身近な存在ですが、画面に取り入れることで“見えないけれど社会を支えている半導体”の象徴として表現しました。」

制作期間中は、後ろを通る社員の「すごい!」などといった声が聞こえてきて、とても励みになったそうです。 「自分の作品にこれほど多くの方が関わってくださるのは初めてで、ありがたい経験でした」と話し、オフィスという生活空間で絵を描くことの意味を改めて考える機会になったといいます。

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Photo of Ujitoshi Akasa's completed mural

この壁画は、武蔵事業所の社員エントランスを入り真正面の壁に描かれたもので、社員が毎朝最初に目にすることとなります。「だからこそ、暗い印象ではなく、少しでも前向きな気持ちになれるような作品にしたいと考えました」として、四隅には「希望」「前向き」「常に前進」という花言葉を持つガーベラの花が配置されています。

「この花が持つメッセージが、作品と重なり、見る人の心にポジティブな印象を与えられたらと願っています。」 これまで最大でもB1サイズ程度の作品を手掛けられてきた赤佐さん。 今回ほど大きな作品を制作するのは初めてで、「大きな画面をどう無駄なく埋めるかを考え、余白を大胆に使う構成を意識しました。

制作を通じて、半導体が社会にどう機能しているかを深く考え、それを作品にどう落とし込むかという点でも大きな学びがありました」と話されました。今回の制作を通じて、「またこういう機会をもっと増やしていきたい」「もっと多くの人と一緒に作品づくりをしていきたい」という気持ちが強くなったとのことです。 「この作品を見て、少しでも前向きな気持ちになっていただけたら嬉しいです。行き詰まったときや疲れたときに、ふと立ち止まってこの壁画と向き合ってもらえるような、そんな存在になれたらと思っています」と、最後にメッセージを寄せてくれました。

※今回の壁画制作にあたっては、赤佐さんがご友人の皆様と協力して取り組まれました。そのため、掲載されている写真にはご友人の方々も一緒に写っています。


今回の壁画は、豊洲オフィスや武蔵事業所の社員はもちろん、世界中、約2万2千人の社員にも制作の過程や中村さんと赤佐さんの思いを社内イントラネットで共有しています。「作品を直接見ることはできていませんが作業風景も含めて楽しめる素晴らしい作品だと思いました。」や、「Beautiful work」、「I'm inspired by the imagination and care you put into this work」といった声が世界各国から寄せられています。

この壁画プロジェクトにより、世界中の社員にとって、新たな彩りや前向きな気持ちを生み、パワーの源となることを願っています。

中村さん、赤佐さん、本当にありがとうございました。