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車載事業の顧客価値シリーズ⑪:自動車の安全な配電ネットワークを実現するIPD

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中島祥治
技師
掲載: 2020年11月3日

自動車のE/Eアーキテクチャ化に伴い、車載の通信/制御ネットワークはCAN、ギガビットイーサネットの導入により大きな変革を遂げています。より安全なシステムを構築するために配電ネットワークも同様に階層化、冗長化、保護機能の搭載といった変化が求められています。

従来の配電ネットワークでは、ヒューズやメカニカル・リレーが電源の分配、スイッチングに用いられていました。近年ではより詳細な配電制御と安全機能実現のためにマイコンによる電源制御が用いられ、ヒューズやメカニカル・リレーも半導体スイッチへの置き換えが進みつつあります。
ルネサスでは、従来のヒューズやメカニカル・リレーに比べ耐久性の高い半導体スイッチと各種保護/診断回路を1パッケージに集積したインテリジェント・パワー・デバイス(IPD)を製品化し、自動車の配電ネットワーク革新に貢献します。

従来のヒューズやメカニカル・リレーは、半導体スイッチと比較して、耐久性、静寂性、部品サイズ/重量などの課題を有しておりました。
ヒューズはショートや過電流などの問題が発生した場合に溶断し接続された回路への電力供給を遮断し保護します。また、メカニカル・リレーは電磁石の働きで可動接点と固定接点が物理的に接触することにより電力供給を行う仕組みとなっており、機械的な動作を伴うため電気的耐久性に加え機械的耐久性も考慮することが必要です。このような特性を持つヒューズやメカニカル・リレーは低くない頻度での交換が必要となり、メンテナンス性の観点からエンジンルームや助手席足元のヒューズ/リレーボックスに搭載されていました。

車両前方に配置されたヒューズやメカニカル・リレーから車両全体に電源供給を行うため、ハーネスの線径は太くなり、重くなっていました。
 

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IPD_Blog_Fig_JP

弊社IPDのような半導体スイッチは従来のヒューズやメカニカル・リレーに比べ耐久性が高く頻繁な交換作業を必要としないことから、E/Eアーキテクチャにおいて階層化されマイコンとIPDが搭載されたECUを負荷に近い場所に配置することが可能となり、ハーネスの線径最適化および軽量化に貢献できると考えております。

また、ルネサスのIPDは過電流、過電圧、過熱などを検知する保護/診断機能を搭載しており、負荷ショートやハーネス破損などの問題が発生した場合にも安全に出力を制御し、IPDを制御しているマイコンに通知することが可能です。IPDで保護/診断回路が検出したことをマイコンへ通知することにより、マイコンが負荷への出力を安全な範囲に抑制しながら制御したり、ドライバーに警告を発しディーラーでの早期点検を促したりするなど、即時出力を遮断していた従来のヒューズでは構築できなかった安全な車両システムを提供することが可能となります。

近年の自動車におきましては多くのスイッチが用いられます。イグニッション・オフ時にも給電される箇所が多くあり(灯火類、ドアロックなど)、自動車を使われない駐車中もバッテリーから給電され車両システムを維持している個所があるためスタンバイ時の電力にも配慮する必要があります。ルネサスのIPDはスタンバイ時の消費電力を小さくするコンセプトで設計しておりますので、E/Eアーキテクチャ化における階層化された電源ネットワークで多くのIPDを用いた場合でも、バッテリーの消費を低く抑えることができます。

ルネサスでは、E/Eアーキテクチャにおける車載ECUを構成する主要部品となる、マイコン、電源管理IC(PMIC)、IPDをラインアップしており、これら主要部品を組み合わせた様々なソリューションをご紹介しております。

より安全な電源ネットワーク構築に寄与するルネサスのIPD製品およびソリューションに関しては、当社のWebサイトをご覧ください。 IPDの製品概要、ドキュメントを掲載しております。

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