こんにちは、Renesas Electronicsの高橋です。私は自動車の電子制御ユニット(ECU)を開発するお客様に対して、ルネサスの自動車制御向けプロセッサー製品(MCU)の様々なソリューションを提案する活動をしています。プライベートでは小型電動バイクを手作りで製作してナンバー登録し、公道を走って遊んでいます。自作する電動バイクの制御にも小型MCUを使用していますが、モータの特性に合わせて制御ソフトウェアを変更する場合は有線でパソコンに接続してMCUのFlashメモリ上のソフトウェアの書き換えをする必要があるため手間がかかり不便です。
お客様の車載ECUにおいても様々な場面でMCUの制御ソフトウェアの書き換えが行われます。工場出荷時はもちろん、出荷後、ユーザーが使用する車両の制御ソフトウェア改善のために書き換えが必要となる場合もあります。この際、ユーザーは車両を工場やディーラーに持ち込む必要があるため不便です。
Renesas ElectronicsのMCUでは、その課題に対して無線通信で更新ソフトウェアを書き換え可能なOver The Air(OTA)技術への対応に取り組んでいます。
OTAにはソフトウェアの更新方式がいくつかあります。Wait OTAやSemi-non wait OTAと呼ばれる方式は、MCUの動作中にソフトウェアの書き換えができない、またはMCU動作中にソフトウェア書き換えができたとしてもMCUの外部に外付けのFlashメモリが必要となることなどのデメリットがあります。Renesas Electronicsでは、配置するソフトウェア領域を区切るバンクが複数設定可能なFlashメモリを搭載したMCUを用意しており、このMCUでは一方のバンクでソフトウェアを実行しながら、もう一方のバンクのソフトウェアを更新することが可能なNon wait OTA方式を採用しています。このNon wait OTA方式により、無線通信で更新対象の車両にソフトウェアをダウンロードし、動作中の自動車の制御を阻害することなくバックグラウンドでソフトウェアのアップデートが可能です。
このOTA機能をRenesas Electronics の車載MCUのRH850シリーズであるE2xを用いて実現するデモンストレーションを用意しています。デモンストレーションでは、自動車が更新ソフトウェアを通信モジュールで受信し、車内ネットワークのゲートウェイECUを経由して更新対象のMCUにソフトウェアのアップデートを実施することを想定しています。OTAクライアントは、バンク1のFlashメモリ上の現行ソフトウェアを実行した状態で、バンク2のFlashメモリに更新ソフトウェアを書き込みます。この書き込みの間もOTAクライアントはモータ制御を継続します。書き込みが完了するとOTAクライアントは、次回の起動時、Flashメモリのバンク2に格納したソフトウェアを実行する設定を不揮発性メモリのDataFlashメモリへ記録します。OTAにより更新ソフトウェアが書き込まれた自動車は、その後、車両のECUリセットにより更新後のソフトウェアで起動することができます。OTAデモンストレーションが動作する様子の動画をご覧ください。
実際のデモンストレーションキットは筆者の手作りで、それを動作させるソフトウェアも同僚チームの皆さんの手作りです。ブリーフケースにOTAマスタとしてRH850/E1xを、OTAクライアントとしてRH850/E2xを搭載した評価ボードと自動車のアクセルペダルを模したペダルでモータ回転数を操作可能な自動車のモデルを詰め込んでいます。現在は新型コロナ感染症のため、お客様に直接お見せする機会がありませんが、情勢が改善しましたら喜んで伺いますので、是非お気軽にお声かけください。このブログよりも簡潔で分かりやすく弊社のOTA技術への対応についてまとめた紹介動画も用意していますので、ご覧ください。
今回ご紹介させて頂いたOTAデモンストレーションはRenesas ElectronicsのMCUの一部の機能を用いた限られた内容ですが、お客様でも簡単にお試し頂けるように今回のデモンストレーションの実現方法をまとめた資料を用意しております。ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。
また、Renesas Electronicsのソリューションやウィニング・コンビネーションに興味がある方は、弊社Webのソリューションページをご覧ください。
最後に。冒頭で書いた手作り電動バイクは改良を進め、ブラシレスのインホイールモータを使った日本最小の公道走行可能な電動ポケバイとするべく製作中です。その電動ポケバイに弊社のMCUを使って完成できましたら、またこのブログで報告させてください。