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DXと顧客体験の向上がルネサスの未来を牽引

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Chris Allexandre
Chris Allexandre
執行役員 兼 CSMO 兼 グローバルセールス&マーケティング本部長
掲載: 2023年5月9日

ルネサスは2017年以降、継続的な企業買収戦略の下、Intersil、IDT、Dialog、Celeno、そして最近ではReality AI、Steradian、Panthronicsなどの買収を進めてきました。当社のEVP(執行役員常務)であるSailesh Chittipeddiは、「これらの企業を買収した効果によって、ルネサスは著しく進化しました」と述べています。これは、私たちが買収した企業から知的財産、経営、エンジニアリングの専門知識を吸収することでビジネスをさらに加速させ、その結果、ルネサスは単なる半導体サプライヤから総合的なテクノロジソリューションプロバイダへと進化したということです。ビジネス面においてだけでなく、企業文化の再構築にもつながるデジタルトランスフォーメーション(DX)と言えるでしょう。

ウィニング・コンビネーション: ルネサスの成長を支える柱

当社製品を組み合わせてお客様に提案する「ウィニング・コンビネーション」は、お客様との関係強化と、組織としての課題解決の両面において、当社の社内カルチャやマインドセットにも大きな変化をもたらしています。ボード1枚あたりの収益拡大を狙い、2019年に提供を開始して以来、現在ウィニング・コンビネーションは400件を超え、ルネサスをソリューションプロバイダとして位置づけるのに不可欠なものとなっています。従来、製品ごとにバラバラだった設計チームを、お客様のシステムレベルのご要望ごとに対応するモチベーションの高いエンジニアや営業部隊に変えました。「Deeper & Broader」というモットーの下、使いやすいソリューションをより多く(Broader)のお客様に提供できるよう、システム(ボード)レベルの設計に注力しました。これにより、お客様はエンジニアによる設計検証済みのソリューションを早期に入手でき、一方でルネサスはボード1枚あたりの収益を拡大する(Deeper)ことが可能になりました。

ルネサスは、マイコンの世界シェアトップのサプライヤとして成長を続ける一方で、現在では、センサ、センサシグナルコンディショナ、コネクティビティ、アクチュエーション、パワーマネジメントなど、アナログとミックスドシグナルの幅広い分野でソリューションを提供しています。かつては技術力の高さを証明するために半導体の性能に重点を置いていましたが、今では自動車、産業、インフラ、IoT向けだけでなく、マスマーケット向けにも最適化したソリューションを開発することで、技術の差異化を図っています。ルネサスは、お客様の声に耳を傾け、トップクラスの技術ポートフォリオを結集してソリューション開発に取り組んでいます。その成果として、営業部門や販売代理店も同じ価値観の下で、ルネサスの規模感や技術力、将来性を強みとして活動しています。

実際、ウィニング・コンビネーションによって、営業部門や販売代理店がルネサスの製品ポートフォリオを販売しやすくなっただけでなく、買収した企業の製品ポートフォリオも加えていくことにより、ボード当たりの搭載製品は増加し続けています。例えば、2017年に開発キットやボードの一部として販売した半導体製品のうち、ルネサス製品はわずか12%で、残りは他社製品のものでした。この数字が2022年には69%まで上がりました。これは5倍以上の増加です。マインドセットの変化により、各製品事業部がボード開発の際にルネサス製品を積極的に活用するようになったのです。そしてもちろん、こうしたボードは参照設計にもなることも多いため、お客様に対してもプロトタイプを含めて迅速な設計を支援し、投資回収までの時間短縮に貢献しています。これはお客様の開発をラクにする、という当社のパーパスに直結しています。他方で、製品レベルに重点を置かなくなったため、半導体メーカとして常に最高性能のデバイスを用意しなくてはいけないというプレッシャも軽減しました。例えば、あるデバイスの仕様が平均的であったとしても、ウィニング・コンビネーションによってお客様の研究開発費が6カ月分削減されれば、顧客サービスのバリューチェーンの強化につながります。これは、デバイスファーストの考え方では実現できない方法です。

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Renesas Evaluation Boards: Share of Silicon Content

ウィニング・コンビネーションの今後の展望

ウィニング・コンビネーションが無い場合、お客様はまず自分のニーズに合ったデバイス探しを始め、次にデータシートを吟味します。そしてデバイス間の互換性を確保するため、評価ボードでテストしてから次のステップに進みます。ここで、上記のプロセスを全て終えた完成度の高いウィニング・コンビネーション(フルシステムソリューション)があれば、プロトタイプの段階まで一足飛びに進むことができます。ルネサスは現在、このフルシステムソリューションの開発に注力しており、これには検証済みのハードウェア設計だけでなく、ソフトウェアやクラウド連携まで含まれており、他社製半導体を含むこともあります。これにより、お客様は自分のシステムに最適なデバイスを見つけるためのリサーチや複数の評価ボードの購入、独自のサンプルコードの作成やアイデアの検証などに膨大な時間を費やす必要がなくなります。設計によって違いはあるものの、当社のウィニング・コンビネーションを利用することで、コンセプト発案から製品化までの時間を平均25~35%短縮することができます。

また、ルネサスは新たに「クイックコネクトスタジオ」をリリースしました。クイックコネクトスタジオは、当社のクイックコネクトIoTハードウェアプラットフォームをクラウド上で再現しており、ユーザはハードウェアだけでなくソフトウェアを同時に開発できます。ハードウェアのレイアウトを決定する前に設計を検証することで、プロトタイプ開発を早期に進めることができます。クイックコネクトスタジオでは、クラウド上でデバイスやサブシステムの機能ブロックをグラフィカルにドラッグ&ドロップし、10分もかからずにプロトタイプを構築することができます。このアプローチは、より小型で相互接続可能な互換性のあるビルディングブロックを使用して、マイコンにセンサや無線機能を接続するなど、ウィニング・コンビネーションシステムを独自に設計できます。事前の学習や投資も必要なく、自動的にソフトウェアを生成し、コンパイルすることができるため、コード記述が不要な開発を実現できます。

ルネサスの変革を発信する

ルネサスが組み込みソリューションのリーディングサプライヤになるためには、DXを推進し、より良い顧客体験を提供できるようトップダウンで全社レベルの教育を行い、ビジネスのやり方を変えていかなければなりません。ハードウェアとソフトウェアの技術革新の最前線だけでなく、営業、FAE、マーケティング、法務、人事部門などもその対象です。お客様やパートナ、販売代理店、投資家の方へも、その方針を発信していく必要があります。

お客様との最初の接点は、当社の持っているものを一方的に見せるのではなく、お客様が何を達成したいのか聞くことを入口にしたいのです。製品から始めるのではなく、お客様が何をしようとしているのか問いかけていきます。これは、ルネサスが部品ベンダから付加価値のあるエコシステム・デザインパートナへ位置づけられるための重要なステップであり、当社にとってもお客様にとってもメリットを生みだします。ルネサスは、これからもお客様と共に変革に取り組み、その進捗についてお伝えしていきます。

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