ルネサスは、主にデジタル半導体のリーディングプロバイダとして業界で知られていました。私たちはこの認識を徐々に変えるために、アナログおよびミックスドシグナル半導体の製品群と専門知識を時間をかけて蓄積してきました。そして、バリューチェーン全体にわたる技術、製品ポートフォリオ、顧客サポートを拡充してきました。
中でも、魅力的な製品と顧客に対するソリューションを提供する新たなキーデバイスとして、ワイヤレスコネクティビティに注力することで、ルネサスは進化を続けています。Dialog社、Celeno社、Panthronics社、Steradian社の買収や、現在進行中のセルラチップメーカであるSequans社の買収提案により、ルネサスは数年で多岐にわたるワイヤレス製品のポートフォリオを構築しました。今やルネサスのコネクティビティ製品は、4G/5Gセルラ、Wi-Fi 6/6E、超広帯域無線通信(Ultra Wide Band: UWB)、近距離ワイヤレス通信(NFC)、BluetoothおよびBluetooth Low Energy(LE)、音声およびオーディオ用のデジタル強化コードレス通信(DECT)にまで及んでいます。
ルネサスのコネクティビティ事業を担当するChandanaは、これらのワイヤレス製品群を総合的なコネクティビティ戦略に統合するために2023年4月からルネサスに参加しています。Chandanaは、インテルでIoTとAIを融合する業務に携わっていたのはもとより、クアルコムとCharter Communications社でWi-Fi開発を統括するなど、ワイヤレス技術一筋に歩んできました。そのChandanaが、コネクティビティについてのルネサスの新たなビジョンについて、質問に答える形で説明します。
質問: ルネサスに入った際、最初はどのように感じましたか。
Chandana: 私はそれまでずっとコネクティビティの分野に身を置いてきましたが、ルネサスがコネクティビティ関連の企業という認識はあまり持っていませんでした。しかし実際には、ルネサスはこの市場での実績を備えていました。これまでに25億個以上のデバイスを出荷し、コネクティビティソリューションを担当する従業員は15カ国で570人を超えています。特筆すべきは、私たちには実に魅力的で業界をリードする製品とソリューションがあり、さらに搭載率を高めることができる世界最強のMCUポートフォリオを保有しており、総合的なロードマップと戦略に一丸となって取り組んでいるチームがあることです。
質問: 新しい役割にあたって、最優先したことは何ですか。
Chandana: 「私たちの包括的なビジョンは何か、私のここでの目的は何か」ということをまず自問しました。この問い自体はすべてのチームメンバに当てはまるものですが、チームと関わってみると、その答えや考え方は実にさまざまでした。ルネサスのコネクティビティチームは、多様な技術や文化を持つ人が集まって構成されているのですから、これは当然のことです。しかし私は、組織としての単一のビジョンと共通の目的に皆の足並みを揃える必要があると強く感じました。
質問: コネクティビティ製品群が、世界中の多くの異なる組織に分散していましたから、よりそう感じたのですね。では、チームの潜在能力を引き出すために、何に着手しましたか。
Chandana: サイロ化された組織で活動していたために、事業を拡大するという大きな目標の実現が困難となっていました。そこで私は、人、製品、プロセスのフレームワークを採用しました。人については、サイロ化を解消し、すべての買収先を統合し、リーダシップを一元化することで、唯一のルネサスのコネクティビティアイデンティティを形成することを目標としました。製品面では、多岐にわたるポートフォリオを整理してスリム化することに注力し、MCUとMPUの分野におけるルネサスならではの市場に即した幅広い戦略を追求しやすくしました。プロセス面では、計画に基づいて確実に実行していけるよう、仕事の進め方をチームや地域が違っても共通化することに注力しました。その結果、私たちのチームは、イノベーション、品質、コスト競争力の3つに焦点を当てたコネクティビティソリューションを通じて、ルネサスのパーパスである「To Make Our Lives Easier」を実現するための統一されたビジョンを持つに至りました。
質問: 結果はいかがですか。
Chandana: 私が着任した最初の6ヵ月間は、従業員との交流に多くの時間を費やしました。私は数箇所の拠点を訪れ、チームに会い、彼らの日々の課題を学ぶとともに、ビジョンやミッション、戦略について話をしました。これらのセッションで得たことをもとに、私たちは組織の再設計と、詳細な統合ロードマップの作成、また、プロセスを標準化し、ツールやソフトウェアを変更するための綿密なスケジュールの作成に着手しました。この新たな取り組みにより、これまで異なる組織に分散していたチームを、統一されたアーキテクチャ、プロセス、ワークモデルにより任務を遂行する水平型チームに変えました。大きな変化のひとつは、もはや単体で製品を作るのではなく、ポートフォリオ全体でIPを再利用する製品群を構築している、ということです。また、ルネサスでは「ウィニング・コンビネーション」と呼んでいますが、コネクティビティ製品と他のルネサス製品との組み合わせたソリューション開発も進めています。現在、当社のコネクティビティポートフォリオには100を超えるウィニング・コンビネーションがあります。
質問: さまざまな規模やワークスタイル、地理的な違いを持つ多くの設計チームをひとつにまとめる上での、企業文化の重要性について教えてください。
Chandana: 当初は、独立したままの組織もあり、そうした組織は統合などほとんど考えずにそれぞれのリズムで仕事をしていたと思います。新しい協調的なアプローチについては多くの好意的なフィードバックを得ており、それが製品開発に好影響をもたらしています。エンジニアたちは、目の前のチャンスの幅が飛躍的に広がったことで、自分たちの幅を広げられることを理解し始めています。私はこの変革とチームが発するエネルギは素晴らしいと思います。
質問: ユーザの話に戻しますが、コネクティビティの方式にかかわらず、あなたやチームがユーザをサポートするために考慮する最も重要な設計上のポイントをひとつ教えてください。
Chandana: ルネサスの製品ポートフォリオに共通するものがあるとすれば、それは低消費電力アーキテクチャへのこだわりです。IoTの末端で動作するデバイスについて考えると、その多くには電源コードがない、つまり主電源に接続されず、電池で動作する可能性が高いでしょう。その場合、電池交換や再充電を必要とせず、可能な限り長い時間、これらのデバイスを稼働させたいと考えます。私たちはこのような製品を数十億台規模で出荷することになるため、消費電力とシステムコストを最低限に抑えた製品の実現が極めて重要なのです。
質問: 最後に、お客様やチームメンバに伝えたいことを教えてください。
Chandana: 私が仕事を始めたばかりの頃に学んだことのひとつは、成功するためには①製品をいち早く市場に投入する必要があるということです。②もし一番目でないのなら、最高の製品を投入する必要があります。③もし単品では最高の製品でないとしたら、総合的に最高の価値をお客様に提供できるようにしなければなりません。ルネサスではこれら3つのことをすべて実行するつもりです。ルネサスのコネクティビティ・ポートフォリオは、当社の技術的・市場的専門性と、膨大な組み込みプロセッシングの顧客基盤を活用し、お客様にストレスの無い高度に差異化された快適なエクスペリエンスを提供することで、劇的な成長を遂げるチャンスがあると考えています。
ルネサスのワイヤレスコネクティビティソリューションの詳細については、こちらをご覧ください。
「Simplifying the Connected Future: Navigating Complexity in the IoT Landscape with Renesas Wireless Connectivity」(コネクテッドな未来をシンプルに: ルネサスのワイヤレスコネクティビティで複雑なIoT環境をナビゲート)のホワイトペーパーは、こちら(英語)から入手できます。