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インテリジェンス搭載型機能安全

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Mohammed Dogar
Mohammed Dogar
Vice President
掲載: 2022年8月22日

機能安全という考え方は、古くからあります。その原則は、機器や装置の操作時に、オペレータを危険や怪我から守ることです。生産工程、家庭用アプリケーション、自律輸送、そして機械もしくは装置が単体で、あるいは集団で操作されるその他の分野など、機能安全が適用される範囲は多岐にわたり、それぞれ変わってきます。家庭用機器、自動運転車、空調システム、ガス暖房ボイラー、火災監視システム、産業用システム(例:コンベア)などの電気機械器具は、その運用に潜在的な危険性があり、結果として何らかの傷害や被害が発生する可能性があります。また、半自動化、全自動化ソリューションにおける電子制御、電気機械操作においても同じことが言えます。つまり機能安全がもたらすのは、機械やシステムが必要なときに、直ちに安全対策やオペレータ保護対策を講じることができるという安全性の高さなのです。

IEC 61508とは、電気、電子、電気機械設備を対象とした機能安全規格です。さまざまなユースケースやアプリケーションに、特有の原則を定めています。このように機能安全規格は、異なる機器にそれぞれ必要な規制やコンプライアンス要件を課します。そして人間のオペレータとユーザは、潜在的な故障、予期せぬ動作、機器の誤用などの危険から常に保護されるのです。

インダストリー4.0、スマートファクトリー、産業用モノのインターネット(Industrial Internet of Things)などの出現により、産業界の業務効率化がますます重視され、オートメーションシステムや機械は製造プロセスの重要な部分を成しています。これらは関連コストを削減しプロセス最適化を図り、経営に十分な余裕を生み出す一方で、予期しないレベルで事故が発生する可能性を高めている面もあります。特に、オートメーションは主として組込みソリューションとサポートソフトウェアプラットフォームで構成されており、デバイスレベルの故障がシステム全体、あるいはプラント自体の操業を停止させる可能性さえあります。ここで機能安全対策を講じていれば、発生しうる危険な状態と、オペレータの安全に対する影響を特定・分析し、正しく包括的なアプローチをとることができます。そしてオペレータを守るだけでなく、ダウンタイムを低減できるのです。

機能安全にはそもそも、安全機能と安全度水準という2つの基本概念があります。安全機能では、センサ、制御システム、アクチュエータなど、すべての部品をまとめて検査し、故障の確率と発生頻度を確定します。もうひとつの安全度水準は、関連リスクを許容レベルにまで低減するために必要な尺度を定義します。安全機能には、機器の安全な運転を確保するために必要な、あらゆる動作や操作が含まれます。何らかのセンサもしくはアクチュエータ、制御回路、モータなどの電気機械装置、そして安全度維持のためのメカニズムなどです。これらのデバイスもしくはシステムに関わる不要な事象は、深刻な脅威を引き起こす可能性があります。その時に実行される行動が一次安全機能です。特にセンシングと制御に別々のコントローラが使用されている場合、相関性のある動作タイミングが非常に重要となってきます。

ルネサスエレクトロニクスは、約10年にわたり、数々の機能安全ワーキンググループのアクティブメンバーとして、関連する規格に大きく貢献してきました。これによって培われた複合的なMCUと関連ソフトウェアフレームワークにより、ワンストップの機能安全ソリューションをご用意しています。例えばTUV認証済みソフトウェアキットは、ドメイン固有のアプリケーションにもかかわらず、機能安全システムの構築とMCUの認証プロセスの時間を短縮させます。

ルネサスMCUは、MEMS加速度センサ、環境センサ、可視化デバイスなどの各種センサとともに、制御システムの主要コンポーネントを構成しています。最新マイクロコントローラの内部ハードウェアと必要なソフトウェアを組み合わせることで、機能安全コンプライアンスを達成するための開発プロセスを劇的に簡素化できます。ルネサスMCU、RA、RXファミリ搭載の認証済みソフトウェアとリファレンスソリューションは、IEC 61508に準拠して設計されており、認定書と安全マニュアルも付属します。これらのソフトウェアモジュールは、機能安全実装のコアとしてフォーマルなソフトウェア設計アーキテクチャの使用、バリデーション、テストを規定したIEC 61508のパート3のほか、パート1~7にも認証されています。

人間と一緒に操作される産業用自動機器の導入が進むにつれ、機能安全に対するニーズは最高潮に達しています。そこで、関連問題処理への打開策として見出されているのが、高性能コンピューティングSOCと最先端の計算技術です。この記事で取り上げた機能安全規格を遵守することは、産業機器メーカにとって重要な成功要因なのです。

機能安全へのインテリジェンス搭載:

現在では、機械学習やAI、高性能コンピューティングハードウェアの進化により、高効率な安全ソリューションの構築が進んでいます。システム障害の防止であれ、将来リスクの予測と軽減であれ、エンジニアが機能安全システムを設計する際には、さまざまな人工知能モデルの統合も検討する必要があります。

下図のフローダイアグラムは、インテリジェントな機能安全を実現するために考えられる産業用ユースケースを示しています。ここでは操作中に、適切なタイミングで適切な場所で故障を特定し、正確な原因を解明することが重要です。これには人工知能、機械学習システムが、良いスコープを提供します。人工知能は、機械能力を高め、難しい状況でもプロセスを持続させます。ルネサスMCUのフィールドシステムは、データ収集に役立つ最先端のソリューションと、異常な状態や異常を予知・検出するためのAI/MLアルゴリズムフレームワークのための計算空間を備えています。組み込み型から専用ソフトウェアまで、一連のソリューションには、財産やオペレーションの状況を警告し、それに対する是正措置を推奨する機能もついています。これにより、安全性が向上し、ダウンタイムや関連コストを削減できるのです。

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AI/ML型プロセス・アセットモニタリングシステムのフローダイアグラム
AI/ML型プロセス・アセットモニタリングシステムのフローダイアグラム

産業界は、プラントの停止やオペレータの負傷につながる可能性のあるシステム障害や災難を避けるために、プロセスの自動化に注目を向けています。ここで、デバイスレベルで機械学習モデルを組み込めば、システム、オペレータがリアルタイムで是正措置を講じることができるのです。これを踏まえて、機能安全設計プロセスは、より高い信頼性、診断、回復力、冗長化への道を開いていくでしょう。

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