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Koji Koike
Koji Koike
シニアスタッフ プロダクトマーケティングスペシャリスト
掲載: 2024年3月20日

持続可能な地球環境の実現に向けて、省エネルギー社会への取り組みが進んでおりますが、従来型のシステムのデジタル化とエンドポイントでの低消費電力化は、実現すべき基本要件の一つです。 エンドポイントシステムがデジタル化されると、個々のシステムの状態をシームレスに分析することが可能となり、システム自体を低電力で動作させながら、よりエネルギー効率の高いシステム運用を実現することができます。

本稿では、ルネサス製マイコン「 RA2A2」 を例に、豊富な周辺機能と優れた低消費電力性能を交えながら、省エネ社会に向けたソリューションをご紹介します。

RA2A2の主な特長

RA2A2グループは、Arm® Cortex-M23®の32ビット性能、高レベルのアナログセンシング、超低消費電力動作など、エンドポイントシステムのデジタル化に貢献する豊富な周辺機能を搭載しています。 3つの独自の周辺機能は、エンドポイントシステムのデジタル化に適しており、エネルギー管理制御システムや産業用アプリケーションで使用できます。

  1. 途切れのないファームウェアアップデート
  2. セグメントLCDパネルの電流使用量を削減する新しいモード
  3. 低消費電力の高分解能ADC

途切れのないファームウェアアップデート

RA2A2は、メモリミラー機能付きのデュアルバンクフラッシュをサポートしているため、ファームウェアのアップデートを簡単に実装できます。 動作を中断せずに途切れなくファームウェアを更新する概念を図 1 に示します。

この場合、Bank0 はファームウェア、フラッシュ アップデート プログラム、ブート プログラムを含む固定プログラムであり、ユーザーはバンク 1 にアプリケーション A と B を設定しています。 フラッシュ・アップデート・プログラムを利用することで、ユーザーは、ミラー・アドレス上でどのアプリケーションを見るかを設定することができ、設定で実行するアプリケーションを入れ替えることができます。

この途切れのないファームウェアアップデートの機能により、エンドポイントシステムは停止することなく動作できるため、シームレスで無駄のない高効率な運用が可能になります。

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Continuous firmware update example using dual-bank flash with memory mirror function
図1: デュアルバンクフラッシュとメモリミラー機能を用いた途切れのないファームウエアアップデート例

セグメントLCDパネル電流使用量を低減する新しいモード

RA2A2は、パネル電流を低減し、低消費電力化に貢献する新しいLCDモードに対応しました。 図2は、LCDパネルの駆動方法の概要です。

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Overview of RA2A2 LCD panel driving method
図2: LCDパネル駆動方法の概要

VL2リファレンスモードは、既存のVL1リファレンスモードと比較して、LCDパネルドライブの昇圧効率を向上させています。 VL1リファレンスモードの場合、MCUのVCCを一度1.0Vに下げてから、3.0Vまで昇圧する必要があります。 しかし、VL2リファレンスモードではリファレンス電圧として2.0Vを生成するため、MCUの電流を節約することができます。 基準電圧を1.0Vから2.0Vに向上させることで、パネルの動作電流をVL1基準モードに比べて半分に抑えることができ、システムレベルでの電力電流低減に貢献します。

VL4リファレンスモードでは、内部電圧発生回路で3Vを生成し、3.0Vから降圧してVL2とVL1を生成します。 したがって、VL4はLCDパネルドライブのMCU電流を低減することができます。 VL1モードと比較すると、パネルの動作電流を3分の1に低減可能です。

パネル駆動電流は、バッテリ駆動のポータブルLCDなどのアプリケーションではバッテリ寿命に大きな影響を与えるため、VL2モードまたはVL4モードによりバッテリの寿命化に貢献します。

低消費電力の高分解能ADC

24ビット・シグマ・デルタ(ΣΔ)ADCは、消費電力に敏感なアプリケーション向けに低消費電力で高分解能のAD変換を実現します。 最大7チャンネルと同時サンプリングアーキテクチャをサポートします。 同時サンプリング方式により、時間軸上で正確で、各チャンネル毎の高精度なサンプリングデータを取得することができます。

このΣΔ ADCは、高レベルのセンシングデータ収集を実現するためにさまざまなサンプリングモードをサポートしています。特に異なる周波数信号を同時に取得する独自の8kHz/4kHzハイブリッドサンプリングモードにも対応していています。

ユースケースの例としては、電流と電圧の常時サンプリングに加えて、高調波信号の取得が可能となるため、非侵入型負荷モニタリング(Non-Intrusive Load Management:NILM)技術搭載の次世代スマートメータにも最適であり、個々のユーザーのエネルギー消費のモニタリングに貢献します。 RA2A2は、このユースケースをサポートするための仕様要件を満たしています。 図3は、RA2A2の24ビットシグマデルタADCのサンプリングモードを示しています。

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Various sampling modes of 24-bit ΣΔ ADC
図3: 24ビットシグマデルタADCの様々なサンプリングモード例

まとめ

RA2A2 MCUは、32ビットArm Cortex-M23、24ビットシグマデルタADC、セグメントLCDコントローラ、低消費電力動作機能を搭載し、本稿でご紹介した独自の周辺機能により、省エネ社会につながるエンドポイントシステムのデジタル化に貢献します。 これらの機能をシステム開発にお役立てください。

RA2A2のその他の利点については、 renesas.com/ra2a2 をご覧ください。

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