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ダイキン様空調機のチャレンジ実現に貢献し続ける32ビットマイコンRX-Tシリーズ

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Hisayo Yamagata
Principal Specialist
掲載: 2020年10月22日

みなさん、こんにちは。ルネサスエレクトロニクスのRXマイコン宣伝担当、山形です。
10周年を迎えた32bit RXマイコンについて、ご使用者様の声をお届けしています。
今回登場していただくのは、世界150以上の国と地域に空調機を提供している空調のスペシャリスト、ダイキン工業株式会社様(以下ダイキン様)です。ダイキン様は、ルームエアコン「うるるとさらら」で有名なモデルをはじめ、多くの空調機の制御にRXマイコンをご採用くださっています。

インタビューを受けてくださったのは、ハードウェア開発に携わってこられ、どこか少年のような快活さと爽やかさで語ってくださった田口泰貴様と、ソフトウェア開発に携わってこられ、ユーモアと少しシャイな雰囲気がただよう佐藤智宏様です。

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taguchi-sato-jp

インタビュー当日、まず、会場となるダイキン様会議室がある建物の入り口で、両手を消毒。会議室は、ラウンドテーブルで30人程が座れる広さに空気清浄機完備と、新型コロナ対策は万全でした。そして、なんと室外機と2枚の制御基板がのった台車が会議室に鎮座。RXマイコン採用初期のモデルと最新の採用モデルの制御基板です。実物を見ながらお話しできるように、とのダイキン様のご厚意に、当社と同行くださった特約店立花エレテック(以下立花)一同大感動!このような温かい雰囲気の中で田口様、佐藤様がダイキン様の空調機開発のこだわりを熱く語ってくださいました。

(以下敬称略)

空調機のインバータ制御におけるセンサーレスへのチャレンジとRXの貢献

-RXマイコンを使い始めた頃のモデルについて教えてください。

田口: うるさら2012年モデルにRX62Tを使ったのが最初です。これ以降に新規開発した室外機には、ずっとRXを使っています。最初のうるさらモデルを立ち上げた後、ベースモデル構想ということで室外機のコンパクト化、ひいてはインバータ制御基板の小型化に取り組みました。業界では片面基板でコストを抑えているメーカーも多いのですが、僕らはガラエポ(ガラスエポキシ)の二層基板で、故障や熱などに対してより安全に、そして小さく作ることにこだわってきました。基板が小さければ収まる筐体も小さくできて、コストも下がるし、ライフサイクルでのエネルギーコストの削減にもなるんです。この基板の小ささは今でも業界トップクラスです。

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rx62t

ベースモデル構想による手のひらサイズの室外機制御基板

-RXをご採用いただけた理由をお聞かせください。

田口: CPUの処理性能と、フラッシュメモリ内蔵ですね。僕らのODM(Outdoor Drive Motor)という技術を活かすためにリアルタイム性が重要で、RX62Tの処理速度が必要だったんです。

佐藤: 初めてRXのベンチマークを見たとき「この処理速度、ホンマか」と思いましたもん。他のマイコンと比べてパフォーマンスの良さにびっくりしました。それと、プログラムの動作を止めないでフラッシュメモリを書き換える機能、BGO、あれも魅力的でした。他社さんには無かった。

田口: ベースモデル構想では、室外機のファンと圧縮機の両方を一つのマイコンで制御する、しかも位置センサを使わない、というチャレンジをしました。マイコンには、二つのインバータを制御するためのリソースとそれぞれの制御周期でリアルタイム処理をできる処理能力が必要で、RXならできると思いました。結果としてホールセンサ等の部品点数を削減できました。

-約10年にわたってRXを使っていただきありがとうございます。今だから言える、開発にまつわる思い出などありますか?

田口: (RX搭載の最初のモデルを開発していた)2011年、東日本大震災でルネサスの工場が被災されてマイコンの供給が心配でしたが、大きな影響もなく製品投入できました。
実はマイコンの確保に非常に苦労されたと後から聞いたのですが、当時僕らはその苦労に全然気づかずにイケイケで開発進めてました。ほんと、ありがとうございました。

-弊社営業と立花さんは相当がんばったと思います。

田口: それと、ベースモデル構想の開発中のトラブルではまりましたよね。ゴールデンウィーク直前に、東京で共同デバッグしました。(開発中の)インバータをスーツケースに入れて、立花さんに滋賀から東京まで新幹線とタクシーで運んでもらって。

-タクシーの運転手さんに「シートが汚れるからそのまま載せないで!と」叱られたそうです。

田口: 結局原因がわかって対策できましたけど。連休なくなるかと思いました。

佐藤: 僕も思い出のトラブルシューティング、ありますね。ある年のクリスマスの頃、解決できない問題があって、モーター持って帰っていただいて、双方で解析しました。もう、僕らは正月休み無しか?、って覚悟して。

-ルネサス・立花でも対策本部を立ち上げて、担当者は年末年始の休日出勤届を出していました。

佐藤: 結局年末ぎりぎりで原因が分かったんですけど。他の人が納会している横で、僕だけ報告書を書いていました。開発にトラブルはつきものですが、そのたびにルネサスさん立花さんと協力し合って解決してきましたよね。

-10年間、それだけ色々なモデルに使っていただいているということだと思います。空調機は電圧も電流も大きいので、計測器のプローブを当てたりも難しく、解析にはどうしても時間とノウハウが要りますね。

最新モデルに、次世代v3コア搭載のRX66Tを採用。ポイントは処理性能と上位互換

-RX66Tをご採用いただけた最新モデルについて教えてください。

田口: アジア向けボリュームゾーンのモデルに使いました。今度は、圧縮機とファンの2センサレスと、コンバータをワンチップで制御する処理能力が必要で、RX62Tを超える性能が必要でした。特にPFC(Power Factor Correction)制御部の平滑コンデンサを使用しない当社の制御技術に必要な、高速の制御周期を実現できる処理性能が必要でした(筆者注:RX66TはRXv3コア160MHz動作(5.82CoreMark/MHz))。RX66Tが搭載されたモデルはこれから増えていくと思います。

佐藤: 
RXはRX62Tにのってたv1コアも速かったですけど、v3コアの速さを見たら他に変えられないですもん。フラッシュメモリのアクセスが速い点も重視しています。高速の制御周期を実現するにはCPUクロックが速いだけではだめで、フラッシュからのプログラム読み込みが遅いと性能は出ませんから。(筆者注:RX66Tは120MHzでフラッシュメモリへの1サイクルアクセスが可能)それと、フラッシュメモリへの書き込み速度は、工場での製造コストに直結するので、これも大切です。

田口: それから、ピン互換ですね。複数の製品シリーズを複数の地域に向けて、限られたリソースで開発するためにプラットフォーム化を図っています。RXマイコンは、ピン互換、上位互換が保たれている点でもプラットフォーム化を容易にしていると思います。

佐藤: 
テスト用治具やプログラムをそのまま使えることもピン互換のメリットです。 

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RX66T

写真左:田口様(左)佐藤様(右)RX66T搭載アジア向け室外機(手前)
写真右: RX66T搭載室外機制御基板

-COVID-19対策で、換気や加湿ができる空調機が注目の的ですが、プラットフォームは共通ですか?

田口: もちろん。こういうバリエーションもプラットフォーム化できていないと難しいです。換気機能は、たまたま今年注目されてますけど、僕らはずっと以前からやっていることなんですよ。

-プラットフォーム化にはさらに波及効果があるそうですが。

田口: 例えば、当社のヒートポンプ給湯器(エコキュート)も室外機は空調機のプラットフォームを使っています。空調機以外の製品もできるだけ共通化した上で、必要な機能を必要なターゲットに提供するような体制になっています。

-ライフタイム全体で環境にやさしい、を目指されているのですね。

田口: ところで、うちのラインアップの最上位シリーズは、偶然ですけど、RXシリーズ、という名前なんですよ。

-とても光栄です!勝手にご縁の深さを感じています。 

佐藤: うちの回路と相性がいいのか、田口さんの設計がいいのか、私の経験では、市場に製品を出した後もRXは壊れない、という印象も強いです。

-きっと両方だと思います。

-今後のRXマイコンへの期待をお聞かせください。

田口:
空調機の周りの環境データを保持するようにしているので、そのデータを活かす機能を考えていきたいです。周波数当たり処理性能の益々の向上やメモリーサイズの展開を期待しています。

-RX66Tの上位機種RX72Tは200MHz動作、もちろんピン互換ですので、載せ替えだけでパフォーマンスアップできます。その次の世代についてはご相談させてください。 

佐藤: ピン互換の維持も、お願いします。僕、田口さんのために言ってます!

-長時間お付き合いくださり、ありがとうございました。これからもルネサスとRXマイコンをよろしくお願いいたします。

インバータコントロール向けRX MCUについて詳しい情報はこちらをご覧ください。

商標および登録商標は、それぞれの所有者の商標および登録商標です。

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