昨今のCASEのトレンドの中、ルネサスの車載事業はどのような事業戦略を描くのか、この度、私、片岡と執行役員 兼 オートモーティブソリューション事業本部 副本部長のVivek Bhanによる動画を公開いたしました。動画はこちらからアクセスいただけます。
このブログでは、ルネサスの車載事業の事業戦略の概略について、改めてご紹介いたします。
自動車業界の変化
今日の自動車業界はコネクテッド、自動運転、シェア/サービス、電動化の4つのメガトレンドに直面しています。これらのメガトレンドは、中長期的に自動車の開発・利用のあり方を大きく変革するものです。従来のガソリン車市場では、車の価値は機械的なシステム構造にありましたが、技術革新が進むにつれ、ソフトウェアや、半導体、クラウド・コネクティビティに価値が移りつつあります。このような価値のシフトを経て、次世代のクルマはソフトウェアによって定義されるようになります。
ソフトウェアによって定義される車(Software-Defined Vehicle)の実現のため、自動車内部のアーキテクチャ(E/Eアーキテクチャ)が今後進化を遂げます。ECUが機能ごとに高度に分散している従来のアーキテクチャから、よりドメイン、そしてゾーンに集約されたアーキテクチャへと進化するのです。このアーキテクチャの変化により、自動車購入後のソフトウェア更新が可能となり、また、車載ネットワークのセキュリティも向上させることができます。また、ECU間を繋ぐワイヤーハーネスを減らすことができるため、車体の軽量化や燃費の向上、電気自動車(EV)の航続距離を伸ばすことにも寄与します。加えてADASの分野では、アーキテクチャが進化することで、各領域の協調制御や走行環境に関する大容量データの伝送が可能になるのです。
E/Eアーキテクチャに対するルネサスの戦略
ルネサスは、E/Eアーキテクチャ全体をカバーするスケーラブルな性能を持つ組込みプロセッサ群を提供します。この性能のスケーラビリティにより、お客様はローエンドからハイエンドまでの車種グレードに最適なプロセッサを選ぶことができます。また、当社のデジタル製品は、車種、アプリケーション、世代を跨ぐ高いIP共通性とスケーラビリティを有しています。これにより、お客様はソフトウェアの再利用が可能となり、開発コストの削減と市場投入までの時間短縮が可能になります。
ソフトウェア開発を支援するためにルネサスは、お客様がデバイスなしでソフトウェア開発が可能なバーチャル・プラットフォームを提供しています。これによりお客様は実際のサンプルチップが入手できる前にソフトウェア開発を開始することができ、市場投入までの時間を短縮することができます。
ウィニング・コンビネーション
現在の自動車業界の大きな変化のひとつとして、新しいプレイヤーが誕生していることが挙げられます。従来のガソリン車から電気自動車へのシフトが加速するなかで、中国、インド、東南アジアなどの新興地域において、近年、多くの新しい自動車メーカーが誕生しているのです。これらの新興プレイヤーは、低コストで素早く製品を開発し、市場に投入することを重視されており、このような需要に応えるため、当社は、デジタル、アナログ、パワー製品及びソフトウェアと組み合わせた「ウィニング・コンビネーション」と呼ばれるチップセット・ソリューションを提供しています。ウィニング・コンビネーションWinning Combinationは、システムレベル要件に最適化し、動作検証を行ったソリューションであり、お客様の開発の加速を可能にします。
ADASに対するルネサスの戦略
ADASは、「認知」、「判断」、「操作」の3つのステップで実現される協調機能です。「認知」には、カメラ、レーダー、LiDARなどのセンシング・デバイスを必要とし、「判断」には、センシング・データを処理するセントラルADASや、処理された情報に基づいてアクチュエータに命令するゲートウェイやドメインコントロールユニットを必要とします。また「操作」には、走る、止まる、曲がるといった、自動車の基本的な機能が含まれます。
ルネサスは、ADASを実現するための主要なアプリケーションを全てカバーする幅広い製品ポートフォリオを有しています。また、様々な機能を実現するために、ウィニング・コンビネーションを併せて提供しています。
EVに対するルネサスの戦略
EV分野においても、インバータ、オンボード・チャージャー、バッテリー・マネジメント・システム、DC/DCコンバータなどの基幹機能を、デジタル、アナログ、パワー製品及びウィニング・コンビネーションまで幅広い製品ポートフォリオでサポートしています。
EVの市場は今後、急成長が見込まれ、それに伴いパワー半導体の需要が拡大することが予測されます。ルネサスはこの急拡大する需要に対応するため、900億円を投じて300㎜ウェハ対応のパワー半導体生産ラインを2024年に稼働させる計画です。これにより、当社のIGBT生産能力は2022年比で3倍になり、パワー半導体の安定供給を実現していきます。
このようにルネサスは、デジタル製品からアナログ・パワー製品に渡る幅広い製品ポートフォリオと、それらをレバレッジさせたウィニング・コンビネーションを提供することで、ADAS、EVといったといった次世代の自動車機能を支え、より安全で環境に優しく、より便利なモビリティー社会の実現に貢献します。