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AIインフラの電力問題に貢献するパワーグループ

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Chris Allexandre
Chris Allexandre
執行役員 兼 パワー担当ジェネラルマネージャー
掲載: 2024年7月24日

ルネサスにおける4つの主要プロダクトグループの柱の1つとして、2024年1月にパワープロダクトグループ(PWR)が新設されました。これは、お客様にとってもルネサスにとっても、さまざまな面で有益こととなるでしょう。 ルネサスは、主に組み込み機器用の半導体を提供していますが、長期的な売上目標を達成し、多角化して将来的に成功を収めるためには、パワーグループの成長が不可欠です。ルネサスのパワーエレクトロニクス事業には今までの長い歴史があります。社内では数十年にわたって研究開発が続けられており、昨今は優れたパワー技術を持つIntersil、IDT、Dialog Semiconductorなどの企業を買収して技術や製品を拡充してきました。これらの買収した企業の製品や技術、研究開発人材を組み合わせることで、パワープロダクトグループは、将来に向けてさらに成長する機会を得ました。

さらに直近では、2024年6月に窒化ガリウム(GaN)トランジスタのエキスパートであるTransphormの買収を完了しました。この買収は、当社のワイドバンドギャップ技術のポートフォリオを拡大し、2030年までに130億ドル規模に達すると予測されるビジネスチャンスを活かすのに役立つでしょう。すなわち、ルネサスのパワーは今や、次のような強力な製品群と技術基盤を手に入れたのです。それは、SoC/MCUやその他のプロセッサ向けのパワーマネジメントIC(PMIC)あるいはカスタムPMIC、またインフラおよびクライアント向けのコンピューティング用パワー製品、他にもバッテリマネジメントICやディスクリートパワー製品とワイドバンドギャップ製品、インテリジェントパワーデバイス(IPD)、電子フューズ(eFuse)など車載用製品に加え、DC/DCコントローラやドライバ、スイッチなど幅広い汎用品もあります。

2030年の売上収益200億ドル以上というルネサスの2030 Aspirationを達成するために、パワープロダクトグループは、売上収益を現在の2倍以上の70億ドルにすることを目指しています。これを達成するためには、エンジニアリング人材をより深く統合することで、今まで以上に積極的なシナジー効果と規模の拡大を図るとともに、AIインフラとクライアント、EVのエネルギ効率化といった急成長している市場 やメガトレンドに注力し、また、当社の汎用品ポートフォリオを拡大する包括的な「パワーツリー」を構築して、あらゆる製品でルネサスのフットプリントを確実に活用していきます。

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AIインフラが未来へと導く

この野心的な目標をどうすれば達成できるでしょうか。

答えは、次の3つの高成長市場セグメントに注力することです。すなわち、1)AIインフラ、クラウドコンピューティング、エッジ(クライアント)AI、2)EV含む車載プラットフォーム、3)産業システムとエネルギ効率です。

当社はこれらの市場に向けて2つのアプローチで各分野に参入しています。1つ目のアプローチは垂直連携です。これは、お客様のニーズに合わせたソリューションを専任のエンジニアリングチームによって提供するものです。つまり、パワーエレクトロニクスの中核となるセンター・オブ・エクセレンス(CoE)を設置し、ルネサスの組み込みプロセッシング、コネクティビティ、アナログ、パワーなどの最高峰の製品を組み合わせてウィニング・コンビネーションの提供をします。2つ目のアプローチは、ルネサスの組み込みプロセッシング分野でのリーダ的地位を活用して、トップクラスのマイコン、MPU、SoC製品とパワー製品を、とにかく組み合わて提供するすることです。

AI市場に対しては、ルネサスは組み込み用以外のいわゆるAIコンピューティング用GPU/CPU製品は保有していませんが、そこに電力を供給するパワーエレクロトニクス製品に注力します。データセンタやエッジコンピューティング、およびクライアントデバイスの需要だけでも、AI 半導体の出荷数は2023年の250万個から2030年には1,500万個に増加する見込みで、年平均成長率(CAGR)では20数%に達します。同時に、現在の顧客予測では、AI半導体 1個当たりのパワーソケット数は現在の最大5倍になり、ルネサスが注力する各AI半導体向けの電源システムには 少なくとも75ドル、多くの場合は200ドル以上に増加すると見込まれています。

ルネサスは、こうしたコンピューティングアプリケーション向けの電源分野においてリードし続けており、革新性と性能の最先端を行くICを何世代にも渡って提供しています。AIの台頭とそれに伴う電力需要の増加に伴い、ルネサスはこのセグメントへの投資を継続するとともに、デジタル多相コントローラとそれに付随するスマートパワーステージを提供する予定です。さらに、より多くのパワーディスクリートデバイスを導入することでトータルソリューションを拡大すると同時に、優れたサポート、カスタムツール、ソフトウェア、モデリングによって当社のソリューションを差別化できる機会もあると考えています。

すでに30社以上の顧客向け設計が進行中であり、2026年までにあらゆるAI対応PCの少なくとも60%にルネサスのパワーソリューションを提供できると見込んでいます。このAI対応の傾向は多くのGPUやCPUでも続くと考えられ、当社にとってさらに大きなビジネスチャンスとなります。供給電力の増加や平均販売価格(ASP)の上昇、継続的な成長などのすべての要素を足し合わせると、AIコンピューティングでのパワー製品は指数関数的に増大し、ビジネスはダイナミックに変化していくと期待しています。

規模の拡大、多様化、一貫性による成長

ルネサスのパワープロダクトグループにおける2024年の優先課題は、技術でのリーダ的地位、エンジニアリング人材、企業文化、生産能力を活用し、事業を拡大していくことです。これにより、事業や顧客との関わり方を多様化しながら、より付加価値の高い製品やソリューションを提供することができます。また、業務遂行を予測可能な範囲で一貫して維持することで、ルネサスが今まで高い評価を得てきた品質を損なわずに、優れたソリューションを提供していきます。

EVや産業用だけでなく、当社のディスクリートビジネスをAIインフラに展開できる機会が得られて嬉しく思います。顧客にアクセスできるおかげで、顧客との緊密な関係を構築し、大規模な拡張ロードマップを持つことができます。 最終的には、単に市場を拡大するだけでなく、信頼と品質という当社の基盤を活用し、その上にソリューションを構築することで、顧客から選ばれるパワー製品を提供します。また、環境に優しく実証済みの効率的なパワーソリューションを実現すると同時に、さらに多くの当社製品を組み合わせて顧客が製品をより早く市場に投入できるようにすることで、皆様の生活をもっと快適にしてまいります。

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