RX MCUは発売開始から10年以上経過しましたが、いまなお選ばれています。この成功はひとえに、ルネサスとの長いお付き合いにご満足いただいている多くのお客様と、さらにはその前任の方々のおかげです。その中には、ある特徴を持つ新製品の開発にあたり、非常に重要な役割を果たしてくださった方もいらっしゃいます。中でもひときわ興味深いのは、モータ制御用MCUのように、特定の用途を持つデバイス開発です。処理能力、アナログ特性、ソフトウェアとアルゴリズムの対応、堅牢性やその他特性など、求められる性能と価格の比率をちょうどよいバランスで実現しなければなりません。
ルネサスでは、特に長期にわたるお付き合いを常に大事にしてきました。そしてそのお付き合いの土台となる信頼を得るためには、私たちのチーム一人一人が重要な役割を担っています。製品品質への信頼だけではなく、関わる人たちへの信頼を得る必要があるということです。当然のことながら、最前線では営業やアプリケーションエンジニアたちが顧客サポートに日々邁進しています。そこでお客様の声を聞くことが重要であり、私たちは真摯に耳を傾けなければなりません。真の顧客ニーズをもとに新製品を定義するには、その部分が最も大切になります。そしてマーケティングと開発チームには、技術的な問題や特徴に関して正しい判断を下し、顧客満足へと還元する責任があります。何年もの間、顧客ニーズに沿った良質な製品を繰り返し世に送り出すことで、ルネサスはお客様との真に深い心のつながりを実際に築き上げてきました。
このような非常に人間的で信頼に足る関係性の一つに後押しされ、私たちは新しいモータ制御用RX MCU開発に着手しました。この開発はあるお客様の要件に基づいたもので、限られた動力で下端モータを駆動できる、高集積かつ低コストなソリューションを目指しました。
しかし、永久磁石同期モータ(PMSM)あるいはブラシレスDCモータ(BLDC) を効率よく駆動させるには、ベクトル制御/磁界方向制御が必須です。低性能のマイコンで制御ループのサイクル数を満たすには、何か良い対策を実装する必要があります。つまり、アナログシグナルチェーンだけではなく、メモリやCPU性能に関わる対策です;
アナログ・デジタル変換ユニットは、3ch同時サンプル&ホールド回路とプログラマブルゲインアンプ(PGA)を搭載しているので、三相のモータ電流を同時にサンプリングできます。
ベクトル制御アルゴリズム処理時、32MHz動作のRXv1コアは内臓FPUによりブーストされます。フラッシュメモリも同様に、内臓の高速オシレーターにより±1%の精度で32MHzが生成されます。これはメモリへのアクセスに1サイクルも待ち時間が発生しないことを意味します。このRXに特徴的な性能アーキテクチャにより、業界最高水準のベンチマークを実現しています。ここに述べた製品は、もちろん、RX MCUファミリーのRX13Tのことで、このRX MCUファミリーは3.37 CoreMark/MHzを達成しています。この成果を可能にしたのは、電源電圧5V対応による高いノイズ耐性です。
RX13Tはルネサスにとって、高集積・高コストパフォーマンスなモータ制御用デバイスを単に開発しただけではなく、それ以上の成果をもたらしました。顧客第一主義により、私たちはお客様との関係を上の次元へ引き上げることができたのです。お互いに容認や感謝を忘れずに、建設的な議論やフェアな交渉を何度も重ねた結果、私たちはWin/Win/Winの関係になりました。マイコン開発で生じたある要件に取り組むことが特定の顧客のためになり、次にその要件は改良されてより大規模な市場のニーズも満たし、最終的にはルネサスのRX製品ポートフォリオの拡充へとつながりました。
RX MCUの10年の歴史に及ぶこの成功は、大切なお客様である皆様がいなければ成し得なかったことです。
このエキサイティングな道のりで大事な役割を果たしてくださった皆様に、感謝の言葉を伝えたいです。
追伸:残念ではありますが、お客様の業務の性質や競合の関係上、ここでお客様のお名前をお伝えすることはできません。このブログは、過去10年以上にわたり成功の道のりを共に歩んでくださったあなたに――当然あなたはご自分のことだとわかってくださっていると思います―――感謝を込めて捧げます。
ルネサスRX MCUについての詳しい情報はルネサスRX 製品ページをご参照ください。
RX13T MCUの単一モータ制御ソリューションについての詳しい情報はこちらをご参照ください。