半導体業界のデジタル、アナログ、ツール、製造技術、そして材料領域では大きな進化が見られます。設計から製造に至るまで、あらゆるレベルで高度で複雑なプロセスが必要なチップ開発。今広がっている半導体の需要拡大に対応するには、アーキテクチャの設計から持続可能な材料調達、エンドツーエンドの製造に至るまで、大きな変化が必要とされています。そこで高効率の最新技術を採用し、高度プロセスノードの生産に取り組んでいるのが業界の現況です。
IoTとデジタルトランスフォーメーションを支える半導体:
私たちの身の回りでは、モノのインターネット(IoT)、スマートデバイス、そして最近では5Gの著しい発展が見られます。これらのイノベーションが私たちをどこへ導き、何が期待できるかをわかるようになるには、この新しいイノベーションを続々と生み出す基礎技術について根本的な理解が必要になります。IoTと5Gを発展させている半導体技術により、AIの進化はかつてないほど早くなるでしょう。過去30年間、計算能力向上を突き動かす原動力となってきたのが半導体技術です。一般に、コンピューティング・ハードウェアのコストのうち、約50%が半導体と言われています。この半導体技術をベースに、AIコンピューティングデバイスはよりシームレスに広範囲にわたり社会へと浸透するでしょう。例えば自律走行車は、走行データを処理・分析するのに高度なアルゴリズムを用いたモバイルエッジコンピューティングのユビキタス・コンステレーションを使用したケースです。5G通信インフラにより、人工知能(AI)と機械学習がコンピュータビジョンを使って周囲の環境を理解し、安全な運転動作を計画・実行します。これにより、モビリティはより安全に、よりスマートに、より効率的になります。給水システムから衣類まで、IoTデバイスというのはありとあらゆる製品をスマートデバイスに変えてしまいます。需要が高い産業としては小売業、ヘルスケア、ライフサイエンス、消費者製品、産業用IoTが挙げられるでしょう。
今後見込まれるイノベーションでは、パーソナライズされたチップがさらに手に入りやすくなると同時に、チップ生産がより効率的になり、さらに重要なことには、より持続可能なものとなるでしょう。接続デバイスが今後さらに普及すると、半導体産業にとってより重要になってくるのがIoTです。スマートフォン産業の停滞を受けて、業界としては発展可能性を秘めた他の道を探さなければなりません。そこで、もちろん課題はあるものの、最も論理的な選択がIoTです。IoTアプリケーションはセンサと集積回路がなければ機能しないため、すべてのIoTデバイスに半導体が必要となります。長年、半導体産業の成長を牽引してきたスマートフォン市場が横ばいになりつつあるなか、IoT市場は半導体メーカに新たな収益をもたらし、当面は年平均成長率3%から4%で伸びるでしょう。
半導体におけるメガトレンドと今後の展望
半導体のプロセスノードとは、チップのトランジスタなどの大きさを示す指標です。ノードの種類は年々増加し、それに伴い計算能力も向上しています。ここで、異なる回路世代やアーキテクチャを意味するのがノードです。一般的にテクノロジーノードが小さくなるほど機能サイズが小さくなり、トランジスタが小さいほどより高速でエネルギー効率が高くなります。その結果として、より小さなフォームファクタでより高性能なコンピュータやデバイスを開発できるようになりました。また、プロセスノードとCMOSトランジスタの性能には相関性があります。周波数、電力、物理的サイズはすべて、プロセスノードの選択によって変わるからです。そのため、半導体プロセスが今後どのように進化するかを理解することが非常に重要になってきます。そもそも半導体テクノロジーノードの歴史は、Intelが初のマイクロプロセッサ「4004」を発表した1970年代まで遡ります。それ以来、半導体技術のノードサイズが発展するにつれて、計算能力は指数関数的な成長を遂げてきました。そして現在スマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末など、より小さく、よりパワフルなデバイスを生み出しています。例えばApple A15 Bionicには、今日ほとんどのAppleの最新製品の心臓部である7nmノード技術が採用され、ほぼ40億個のトランジスタが動作しています。
半導体技術におけるプロセスノードの役割
マイコンの性能を左右する重要な要素が半導体ノードです。技術進歩によって各マイコンのノード数は増加しており、過去数年にわたるこの傾向は今後も続くと予想されています。テクノロジーノード(プロセスノード、プロセス技術、または単にノードと呼ばれることも)とは、特定の半導体製造プロセスとその設計ルールを指します。ノードが異なれば、回路の世代やアーキテクチャが通常異なります。一般的にテクノロジーノードが小さいほど、機能サイズが小さくなり、トランジスタも小さく、速度が速くなり、エネルギー効率が高くなります。ここでプロセスノードの名は、歴史を振り返ればゲート長やM1ハーフピッチなど、トランジスタのさまざまな特性からとられてきました。しかしながら最近では、マーケティングやメーカ間の意見の相違により、かつて持っていた正確な意味を失っています。22nm、16nm、14nm、10nmといった新しいテクノロジーノードは、特定の技術で作られたチップの世代を表す指標にしか過ぎません。従来のようにゲート長やハーフピッチを反映したものではないのです。にもかかわらず、主要メーカによる命名権が尊重されているのが現状です。
そもそも初期の半導体プロセスは「HMOS III」「CHMOS V」のような任意の名前がつけられていました。その後、新世代プロセスはテクノロジーノードまたはプロセスノードと呼ばれることになります。これは「90nmプロセス」のようにゲート長をプロセストランジスタのナノメートル(歴史的には1ミクロン)プロセスの最小特徴サイズで表現したものです。しかし、1994年以降状況が変わり、プロセスノードの名称に使われるナノメートルの数は、実際の機能サイズやトランジスタ密度(1平方mmあたりのトランジスタ数)とは全く関係のないマーケティング用語になってしまったのです。
テクノロジーノードの進化
本来、テクノロジーノードはトランジスタの物理的な特徴サイズに対応します。あらゆるマイコンはトランジスタで構成されており、このトランジスタが基本的に電流の流れを制御するスイッチとなり、マイコンに論理的な機能を実行させます。28nmや65nmといったテクノロジーノードは、レイアウト上に描ける最小のデータ図形(ハーフピッチやゲート長)を指します。しかしテクノロジーノードの名称には標準ルールがなく、前述の28nmや65nmは実は従来のプレーナMOSFETで示されるトランジスタの最小ゲート長に由来しています。テクノロジーノードは、1mm四方の基板にどれだけ高密度にトランジスタを配置できるかを示すのが一般的です。ですが22nm以降、Fin Field Effect Transistor(FinFET)へと技術革新が起きた結果、アーキテクチャは3次元になり、ゲート長という言葉はもはやプロセス技術を表すのにふさわしくなくなりました。このようにプレーナ構造からFinFETやGate-all-around FET (GAA FET)に移行した現実を受けて、10nmや5nmといったテクノロジーノードはゲート長やハーフピッチをもはや反映していないのです。
次世代IoTデバイスの実現に向けて、新たなプロセス技術開発で重要な役割を担っているのが私たちルネサスです。IoTの普及に伴い、設計者はデバイスの小型化、高速化、省エネルギー化を求めています。このような需要に応えるべく、ルネサスではIoTデバイスの極小化と低消費電力化を実現する新しいプロセス技術を開発しました。これには、最低消費電力と最高性能を備えたフラッシュマイコン向けに最適化されている40nmと、広い電圧範囲と最低消費電力の動作に最適化されている110nmがございます。ルネサスのRL78、RA、RXマイコンはすべての機能と特徴を保持したまま、これまで以上に高速に動作し、かつてない低消費電力で動作することができます。
私たちルネサスは産業用や家電用の半導体ソリューションを提供するリーディングカンパニーであると同時に、IoTならびに、最近ではArtificial Internet of Things(AIoT)を支える新技術の開発に先進的に取り組む存在としても知られています。その一例が、MF4と呼ばれる110nm領域における自社製低電力プロセス技術の開発であり、幅広いエンドポイントに適用可能な超低消費電力デバイスの開発につながります。自動車から家電製品までありとあらゆるものがインターネットに接続され、より多くのデバイスがオンラインになるにつれてエネルギー消費量増加が危ぶまれる中、こうした低消費電力デバイスの需要は高まる一方です。この問題に対処するため、ルネサスでは消費電力を最大30%削減する新しいパワーマネジメント・システムを開発し、これまでよりも少ない電力で済む小型チップの製造を可能にしました。
ルネサスが提供する豊富なマイコンおよびSOC製品群は、さまざまなIoTアプリケーションで求められる広い性能範囲と低消費電力、またエネルギーハーベスティングを含むデジタルおよびアナログ機能を幅広くカバーしています。さらにお客様の設計を最初から最後までサポートするため、パートナープラットフォーム、ソフトウェア、開発ツールも提供しています。ルネサスのICやモジュールを使えば、センサからクラウドまで、インテリジェントなデータを正確に認識し、理解し、送信できます。消費電力、性能、セキュリティすべての要件を満たし、次世代設計を可能にするルネサスの先進的な半導体技術をぜひご体験ください。