みなさん、こんにちは。ルネサスエレクトロニクスでかれこれ10年以上、マイコン畑で業務に携わらせて頂いている濱です。
たくさんのお客様にご愛顧いただいておりますルネサス製32bit RXマイコンは、お陰様で10周年を迎えることができました。
私も同じく10周年と言いたい所ですが入社したての頃はアセンブラを使っていましたのでもう少し年は重ねております。
この10年で、お客様のニーズにマッチするたくさんの魅力的なソリューションを提供させて頂きましたが、今回はその中から「IoT社会を支えるコネクティビティソリューション」をテーマに、1. Edgeデバイスのクラウド接続を容易にするクラウドソリューション、2. Edgeデバイスの無線制御に欠かせない Bluetooth5ソリューションの2つを題材にして、すぐに使えるソリューションをお届けしたいと思います。
今までLowエンドからMidレンジクラスのマイコンを担当してきましたが汎用マイコンでは昔は製品単体の紹介と個別の周辺モジュールの紹介や使い方のサポートが主でそれだけで話を聞いてくれるお客様もいらっしゃったのですが、最近はデモセット等の見た目でインパクトを与えるものやすぐに使えるソリューションの提供が関心を持ってもらうためには必須の条件となってきています。
話を戻しますが、例えば家庭やオフィス機器の情報を無線で集めて必要なデータをまとめてクラウドに上げるというような事は今後ますます一般化し様々な分野へ拡大していくものと思われます。Bluetooth5ではMesh状にネットワークを構築したり100m程度の通信もサポートできるようにもなってきている為、広いオフィスや工場でも使用も可能となり用途も広がっています。今回の2つのソリューションを繋げてこのようなデモやサンプルを提供できればお客様のシステムにそのまま組み込むこともでき、活用の機会はますます広がっていきますのでそのような構成も検討しています。
さて、まずはクラウドソリューションのご紹介です。組み込みマイコンでクラウド接続ってなんだか難しいと感じられていませんか?”RX65N Cloud Kit”なら、クラウドへのメッセージの送受信から、クラウド上でのセンサデータのグラフによる可視化(ダッシュボード表示)といったIoT機器で使われる機能を簡単に評価できます。本キットはお陰様で非常に人気が高いため増産している所です。
それでは、早速本キットを動かしてみましょう。そのまま動かすのは簡単なので、外付けセンサを使った面白い使い方をやってみました。
左図の赤外線センサでセンシングしたデータをクラウドにあげて右側のようなイメージをWebブラウザで表示させてみます。
赤外線センサはCloud Kitの空き端子に接続します。ソフトウェア側の必要な修正は、赤外線センサのシリアル制御部のみです。MQTT通信部の変更は必要ありません。ビルドして実行すると赤外線センサのデータをRX65Nが受け取りMQTT通信でクラウドに送信できました。送信したセンサのデータの温度分布を可視化してみると、こんな風になりました。 面倒なクラウド接続に関する所は一切変更しなくてよいので、こんな改造も簡単にできてしまいます。
COVID-19の感染拡大防止の為、オフィスやビルへの入場の際に検温を求められるケースも増えてきております。そのような用途にも使えるかなと思い試してみましたが、AIを使った人物検知などさらなる応用も出来ると思います。
続いてご紹介するのは、RX23Wを用いたBluetooth 5.0 Low Energy (LE)ソリューションです。
言うまでも無いかも知れませんがBluetooth Low Energyはスマートフォンへの搭載を契機に様々な機器での採用が進んでいます。
RX23WはBluetooth 5.0 LEのフル機能をサポートした32bitMCUです。ルネサスRXファミリの豊富な周辺機能とセキュリティエンジンを搭載し、Bluetooth LEによる無線通信とシステム制御およびセキュリティを1チップで実現する製品です。
このコンセプトがまだまだ浸透しておらずBluetooth LEの通信専用ICとしてのお話を沢山頂くのですが、そこに対してはオーバースペックになってしまうというのが伝えきれていないのが最近の悩みの種です。今使っているシステムにBluetooth LEの機能を入れたい、実装面積等の観点からシステムコントロールと無線通信の2チップ構成を1チップにしたいというようなケースでは非常にマッチする製品と思っています。
さて、またまた同じような事を言いますが、Bluetooth Low Energyの開発は難しいと思われがちです。ルネサスではこちらでも簡単に開発ができる環境を準備しています。RX23Wターゲットボード(下図)を使って実際に自分のスマートフォンとの通信を行ってみましょう。
Bluetoothのソフト開発は専用のものは不要で、RXマイコンの開発環境をそのまま使う事ができます。Smart Configuratorで、他の周辺機能と同様に設定を行います。GUIでの簡単な操作で短時間にドライバの組み込みと周辺機能のコードを生成できます。
さて、ドライバ部分はできたので次はBluetoothのアプリケーション部分を作っていきます。QE for BLEというツールを使うことで、ドライバと同様にBluetoothで定義された通信プロトコルであるプロファイルを追加および作成する事ができます。プロファイルは一般的に定義されている標準プロファイルとユーザが独自で作成するカスタムプロファイルがあり、QEでは既に定義されている標準プロファイルの組み込みとカスタムプロファイルの作成の2つを行う事ができます。ユーザが一から開発する必要が無いので非常に便利です。今回はターゲットボード上のスイッチ押すとスマートフォンに通知が送信されるようなカスタムプロファイルを定義してみました。
自身のスマートフォンには予めApp Store / Google Play からGATTBrowserというルネサスのスマホアプリをダウンロードしておきます。ボード上のスイッチを押すと割り付けられたIRQによる割り込みの通知がCPUに入ります。CPUはその割り込み信号を受けてBluetooth経由でスマホ側に通知を送りスマホ側のGATTBrowserはその通知をスマホの画面上にその通知を表示します。実際にボタンを押すと通知がスマホに表示され期待通りに実行できた事が確認できました。これ以外にも複数の接続、メッシュネットワークなど色々ご紹介したい事もあるのですが、それまた別の機会とさせて頂きます。
IoT社会を支える二つのコネクティビティソリューション、いかがだったでしょうか。
昔は一から環境を自分で準備してサンプルソースを参考にして何時間もかけてようやく出来ていた事が、今ではキットを買ってきてWEBからToolをダウンロードすればこのように簡単に短時間で動かす事ができるようになっています。
導入が難しいと感じられるWi-FiやBluetooth5のワイヤレス通信も、RXのコネクティビティソリューションを活用すれば、開発のハードルを下げることができると思います。これからも皆さんのお役に立てるソリューションやHow to記事を沢山お届けしていきますので、ぜひご期待ください。
詳しくは、RX Family WEBサイトへご覧ください。
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