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Kazuo Kajimoto
Kazuo Kajimoto
Senior Distinguished Engineer
掲載: 2020年8月22日

インターネットにおけるIoT・AIの技術革新により、自動車産業界は100年に一度の大きな変革期を迎えています。特に大きなインパクトをもたらす技術変革や運用形態変革は、その頭文字を取ってCASEと呼ばれています。

  • C: Connected(インターネット経由でクラウドサービスに常に接続)
  • A: Autonomous(AIによる社内外環境認識による運転支援および自動運転)
  • S: Shared→Social
    • (以前Sはシェアリングサービスを表していましたが、コロナ禍の後、感染リスクからシェアリングへのニーズは減り、パーソナル化やリモートワーク対応など社会的ニーズを意識した取組みになることから変更しました。
  • E: Electric Vehicle(電気自動車)

従来の自動車産業では、一般消費者や宅配事業者などが自動車を購入、所有をしながら、車検制度や法定点検制度に従いディーラーに有償で点検を行ってもらうことが前提となっていました。車載半導体産業においても、開発した半導体やサブシステムを自動車メーカに納品しているTier1会社に納める段階でビジネスが終了していました。ソフトウェアはほとんどの場合、Tier1会社や自動車メーカが開発するため、車載半導体会社が提供する組込みソフトウェアは製品ではなく、型番はついていても、あくまでも半導体を使いまわすサンプルソフトウェアの域を出ないものが殆どでした。

一方、CASE時代の自動車ビジネスは、自動車がインターネット経由でクラウドサービスに常時接続されることを前提としています。例えばスマートフォンの事例では、ハードウェアを利用者が購入した後でも、ソフトウェアがアップデートされ機能進化を続けているように、自動車も将来ソフトウェアのアップデートが大前提になると考えられます。

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自動運転においては車載半導体のAIエンジンを利用した推論により、運転環境の認識を行い、この認識率も学習を積み重ねたソフトウェアのアップデートにより日々向上しています。

シェアリングサービスにおいては、利用者と自動車の双方をクラウドサービスでマッチングし、走行距離や利用者のマナーのレーティングなどソフトウェア起因でのビジネスを展開しています。またコロナ禍により逆にパーソナル化が進んで来た場合は、オーナごとに嗜好に適したサービスの取捨選択への対応が進むと思います。

また電気自動車においては、電源の制御を行うBMS(バッテリマネージメントシステム)のみならず、車両全体への電気配線の階層化や冗長化をソフトウェアにより自由にコンフィグレーションできる構成へ進化することも予想されています。

このようにCASE時代は、ソフトウェアこそがビジネスを設計、牽引する技術の中心になるということが出来るのです。このような時代に、車載半導体メーカはどのように対応していく必要があるのでしょうか?

従来は、半導体の出荷前に完璧に仕様を見極め、多くの顧客要望に応えるため、数多くの半導体を同時並行で開発することが必要であり、ルネサスも個々のお客様向けにカスタマイズされた半導体を開発、供給することが当たり前でした。

しかしCASE時代は、機能安全とサイバーセキュリティに留意したアップデート可能な半導体能力と、アップデートを安全に実施するプロセスが重要になります。アップデート可能な半導体能力を提供するには、ルネサスは顕在的な要求仕様を上回る余力のある半導体を開発、供給することが求められるのです。そして、自動車メーカ様のご要望に合わせ、組込みソフトウェアが引き出す半導体の潜在力を反映させた提供機能のアップデートを実行します。

半導体そのものが将来のアップデートを想定したものに進化させるだけでなく、CASE時代においてルネサスは、新電子プラットフォーム(E/Eプラットフォーム、E/EはElectronics and Electricの略称)におけるキーコンポーネントとして、コミュニケーションゲートウェイを導入する戦略を立てています。

従来のE/Eプラットフォームは、自動車のブレーキペダルなどの各部品をAutosarで標準化されたモデルで表現し、このモデルをMCUのRH850とRTOSの組合せで実装していました。この従来型E/Eプラットフォームにおいては、関連性の高いデバイスをまとめた車両内の領域をドメインと呼び、シャーシやボディ、情報提示のIVIなどが存在し、各ドメインは独立性高く設計されており、そのためドメインを跨ぐ複数センサーの情報統合や、複数のアクチュエータの同時動作を行うことは難しかったのです。

現在ルネサスの計画するコミュニケーションゲートウェイは、マイクロコンピュータであるMCUのRH850と、システムLSIであるSoCのR-Carから構成されています。コミュニケーションゲートウェイを使用したソフトウェアアーキテクチャは、異なるドメインに帰属するデバイスを組み合わせた機能を提供することが出来ます。

例えば、シャーシドメインのABS(アンチロック・ブレーキ・システム)機能とIVIドメインのGPS機能をコミュニケーションゲートウェイで組合せることができ、両者を組み合わせると、地図上のどこでABSが起動したかを自動車メーカのクラウドに送ることが出来ます。自動車メーカ様は、この情報を基に、降雨量とスリップし易い地点のダイナミックマップを作成することが出来、車両がその地点に差し掛かると、スリップが起きない速度まで減速したり、それ以上はアクセルを踏んでも速度が上がらないようにアッパーリミットを設けるなど、動的に安全対策を実施することができるのです。

図 コミュニケーションゲートウェイ、ビルディングブロック

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CASE時代に、コミュニケーションゲートウェイを導入した新たなE/Eプラットフォームを提供し、従来と異なるソフトウェア起因のビジネスモデルを導入することで、ルネサスは自動車メーカ様のCASEサービスを強化し、CASE対応を要する安心安全や自動運転をはじめ、社会ニーズに応じた様々な課題の解決に貢献して参ります。

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