フォトカプラと光MOS FETとは、ともに光を使って、電気的には絶縁しながら信号を伝える素子です。しかし、その違いはちょっとわかりにくい面があります。
ここでは、その違いについて解説をします。
構造の違い
次の図は、左がフォトカプラ、右が光MOS FETの原理構造図です。
左図のように、フォトカプラは単純に発光ダイオード(LED)が光って、フォトトランジスタを照らし、その光でフォトトランジスタのコレクタ-ベース間に「光電流」が流れます。
したがって、LEDの光がなければフォトトランジスタはOFF、LEDが強く光ればフォトトランジスタはコレクタ-ベース間に大きな「光電流」が流れ、ON状態になります。
この時、コレクタ-ベース間が単純に短絡状態になった時とは異なり、コレクタ-エミッタ間電圧が、通常のトランジスタのベース-エミッタ間順方向電圧よりも低くなっても「光電流」が流れ、導通します。
一方、光MOS FETは、光発電セルを持ち、メーク型接点の場合、発光ダイオード(LED)が光ると、光発電セルがFETのゲート容量を充電してゲート-ソース間電圧を高くし、FETが導通します。
ブレーク型接点の場合には、FETが無バイアスでは導通していて、発光ダイオード(LED)が光ると、光発電セルがFETのゲート-ソース間電圧を逆バイアス方向に充電し、遮断させます。
発光ダイオード(LED)が消えると、単純に光発電セルが充電をやめるだけでなく、内部の放電スイッチが自動的に働いて、ゲート電荷を強制的に放電し、ゲート-ソース間電圧をすみやかに下げます。
FETは2本が逆直列に接続され、導通時には、2本ともに順逆いずれにも導通しますが、遮断時にはドレイン-ソース間が順方向電圧になったFETだけが遮断し、もう一方のFETは、寄生ダイオードが導通します。
特性の違い
上記のような構造の違いため、フォトカプラの出力特性は入力に直接関係しますが、光MOS FETでは、ON/OFF制御以外は直接関係しません。
そのため、フォトカプラと光MOS FETとでは次のような違いがあります。
- フォトカプラの動作速度はμs以下だが、光MOS FETはms単位で遅い。
- フォトカプラの出力側導通特性は入力電流値に依存して変化するが、光MOS FETの出力側導通特性は、入力電流値に依存しない。
このため、光MOS FETでは、フォトカプラのような高速動作は望むべくもないですが、わずかな(数mA程度)入力電流で、アンペア単位の電流のスイッチングもできます。
また、一般的にフォトカプラは直流の制御用ですが、光MOS FETは交流信号の断続もできます。
使い方の違い
フォトカプラは、一般的に直流だけに対応し、次のような用途に使われます。
パルス伝達(一般的なディジタル回路)
アナログ直流信号伝達(スイッチングレギュレータの誤差帰還回路など)
一方、光MOS FETは、フォトカプラに比べると動作速度が遅いので、信号伝達に使われることはまれです。
しかし、双方向導通特性を持ち、しかもON抵抗が低いため、おもに信号を断続する「電子スイッチ」として使われます。
そのため、SSR(Solid State Relay:ソリッドステートリレー)または個体リレーという呼び方も一般的です。