フォトカプラの中でも、フォトトランジスタで受光する、いわゆる「汎用フォトカプラ」は、一般のトランジスタに比べて、ベースに回路配線がいっさい付かない「浮いた」状態で動作させますので、意外な場面でノイズが発生することがあります。
ここでは、その典型的な2つのノイズ現象についてご紹介します。
発光側-受光側間電位差変動によるノイズ
フォトカプラの発光側-受光側間は、光によって信号が伝達されますが、次の図の「CI-O」のように、わずかですが静電容量による結合も存在します。
そこで、上図のように、発光側-受光側間にステップ電圧信号「Vin」を印加すると、次の写真のように、受光側に信号が出力されることがあります。
当然ですが、フォトカプラでは、光によらないこのような信号伝達は「ノイズ」です。
配線を極力短くし、カプラの端子直近で電源-グラウンド間にバイパスコンデンサを付けるなどすればノイズを最小限にすることはできますが、このノイズを完全に回避するのは基本的に困難です。
一般的には、回路間の電位差の急激な変動を抑える工夫をするか、そうでなければ、次の図のように、出力信号を積分回路を通すことなどによって、回路の動作速度を遅くすることと引き替えに除去するしかありません。
ただし、品種によっては、次の図のように発光側と受光側との間に静電シールド(遮蔽)を設けたものもあります。
その場合、ノイズがトランジスタのベースでなくエミッタに誘導され、ノイズに対してトランジスタの電流増幅作用が働かなくなるので、その分ノイズが出にくくなります。
このような品種では、このノイズの出にくさを「瞬時同相除去電圧」という名で規格化しています。
受光側電源の立ち上がりによるノイズ
受光に使われるフォトトランジスタ自身も、そのコレクタ-ベース間に、次の図の「CCB」のような接合容量を持ちます。
そのため、コレクタに急峻な立ち上がりの電源電圧が加えられると、上図のように、その容量CCBの充電電流が一瞬ベースに流れ、それによってコレクタ電流も流れて、次の写真のように出力される場合があります。
一般的に、この例ほど急峻に立ち上がる電源はまれですが、それでも高耐圧フォトカプラを高い電源電圧で使う場合などには十分な評価が必要です。
基本的には、電源の立ち上がりを緩やかにし、電圧が安定するまでの時間帯は、出力信号を使わないように工夫した方が良いでしょう。