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光MOS FET規格の解説

半導体デバイスの規格は、一般的に周囲温度(TA:デバイス周囲の気温)またはパッケージ表面温度(TC)が「25℃」で規定されています。

使用環境はいろいろですが、25℃以外の特性や許容範囲は、ユーザが特性曲線など使って、自分の設計する装置の使用環境に合わせて計算していただきます。

以下に、一般的な規格項目を説明します。

絶対最大定格

各項目は基本的に「直流」に対して規定されています。

したがって、交流をスイッチングする場合、出力側の定格は半波の波高値(サイン波ならば振幅の1/2)でお考えください。

絶縁耐圧:BV(Vr.m.s.)

入力端子-出力端子間に印加できる交流電圧の最大値を実効値(r.m.s.:Root mean square)で表示し、絶縁耐量を保証しています。

通常、時間無制限ではなく、1分間など試験時間限定で保証される値です。

動作周囲温度: TA (°C)

通電が可能な周囲温度範囲。

使用周囲温度が上昇すると、一般的に許容損失(PD)は小さくなりますが、この温度範囲の外では、いっさいの通電が許されません。

光MOS FETの場合は、通電可能な温度を「パッケージ表面温度」ではなく、「周囲温度(デバイス周囲の気温)」で規定しています。

保存温度: Tstg (°C)

「通電しない」状態(保管状態など)で許される温度の範囲。

入力側・順電流: IF (mA)

周囲温度25℃における入力側のLED(発光ダイオード)が「破壊しない」最大電流。

光MOS FETの場合、順電流は動作速度に影響し、出力の静特性にはほとんど影響しません。

動作速度もある一定以上の順電流ではあまり変わらなくなるため、むやみに順電流を大きくする意味はありません。

主に、順電流にばらつきや変動があっても、最大値がこの範囲に収まるように設計します。

入力側・逆電圧: VR (V)

入力側のLED(発光ダイオード)は逆耐圧が低く、逆耐圧を越えると急激に逆電流が流れます(この場合、発光しません)。

しかも逆電流を流すと、以後発光効率が低下します。

そのため、これ以上の逆電圧を印加すると、回復できない劣化をする可能性があります。

入力側・許容損失: PD (mW)

周囲温度25℃における入力側LEDの許容損失。

「入力側・順電流(IF)」の項で述べたように、光MOS FETの場合、むやみに順電流を大きくする意味がないので、この項目は参考程度です。

出力側・許容損失: PD (mW)

周囲温度25℃における出力側のMOS FETの許容損失。

光MOS FETの場合、導通時の出力静特性がほぼ直線的な抵抗特性のため、出力側内部損失はほぼ負荷電流の値だけで定められます。

出力側・耐電圧/負荷電圧: VL (V)

出力側のMOS FETが非導通のときにドレイン-ドレイン間(またはドレイン-ソース間)に印加できる最大電圧。

出力側の2つのMOS FETを互いに逆極性の直列接続で使う場合、流す交流信号は、半波の波高値(サイン波ならば振幅の1/2)がこの値を越えてはいけません。

出力側・負荷電流: IL (mA)

導通しているときに出力側のMOS FETに流すことが可能な負荷電流の最大値。

直流/交流どちらのときも、ピーク値(サイン波ならば振幅の1/2)がこの値以下であるようにしてください。

許容損失の面から、この値は次の図のように温度が高くなるほど小さくなります。

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1-9. 出力側・負荷電流:IL(mA)

出力側・パルス負荷電流: ILP (mA)

一定の短時間だけ流すことが許される直流負荷電流の最大値。

誘導性負荷で発生するパルス電流や容量性負荷の充放電ピーク電流など、時間的な条件も含めて指定範囲内であれば、許容されます。

基本的に、周期的な印加は許されません。

電気的特性

動作時間、復旧時間: ton, toff (ms)

入力側のLEDにパルスで順電流を流したときの、順電流変化から出力が断続動作するまでの遅れ時間。

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2-1. 動作時間、復旧時間:ton, toff(ms)

入力パルス幅が規定よりも短い場合、次の時間が規格または特性曲線よりも長くなることがあります。

A(メーク)接点:復旧時間toff

B(ブレーク)接点:動作時間ton

所定の入力パルス幅を守ってご使用ください。

入出力間絶縁抵抗: RI-O (Ω)

入力端子-出力端子間に直流の高電圧を加えたときの初期的な絶縁抵抗値。

湿度などの使用環境や、電圧印加時間の長さによって低下する場合があるので、使用する際にはこれらを考慮して設計、試験をする必要があります。

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2-2. 入出力間絶縁抵抗:RI-O(Ω)

入出力間容量: CI-O (pF)

入力端子-出力端子間に高周波信号を加えたときの結合静電容量の値。

この値が大きいほど、入力端子-出力端子間の電位差の急峻な変動によるノイズが出力に出易い傾向があります。

実装条件などによって増加する場合があるので、使用する際にはそれらも考慮して設計、確認をする必要があります。

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2-3. 入出力間容量:CI-O(pF)

LEDオン電流: IFon (mA)

a接点(メーク接点:ノーマリオープン:入力がないとき非導通)タイプの光MOS FETの出力が導通するために必要な順電流の最小値。

必要な動作速度に応じて、「動作時間vs順電流」曲線や「復旧時間vs順電流」曲線により、これよりも大きな順電流を流してください。

LEDオフ電流: IFoff (mA)

b接点(ブレーク接点:ノーマリクローズ:入力がないとき導通)タイプの光MOS FETの出力の導通が切れるために必要な順電流の最小値。

必要な動作速度に応じて、「動作時間vs順電流」曲線や「復旧時間vs順電流」曲線により、これよりも大きな順電流を流してください。

入力側・順電圧: VF (V)

入力側のLEDに順電流を流したときの端子間電圧。

この値に順電流値を乗じた積が入力側の内部損失となります。

一般的に順電流が大きいほど順電圧も高く、温度が高いほど低くなります。

入力側・逆電流: IR (µA)

入力側のLEDに定格の範囲内で逆電圧を加えたとき、流れる電流。

一般的に、逆電圧が大きいほど逆電流も大きく、温度が高いほど大きくなります。

逆電圧が加わるような回路では、この値が使用条件によって変化する性質を考慮して駆動回路を設計する必要があります。

出力側・オフ・リーク電流: ILoff (µA)

出力側MOS FETが非導通のときの、ドレイン漏れ電流。

一般的に信号電圧に比例し、温度が高いほど大きくなります。

負荷抵抗(または終端抵抗)の値は、この値が温度変化する性質を考慮して設計する必要があります。

オン抵抗: Ron (Ω)

特に記載がない場合、出力側MOS FETが導通時の「ドレイン-ドレイン間」のオン抵抗。

負荷抵抗(または終端抵抗)の値は、この値よりも十分大きく設定するのが一般的です。

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2-9. オン抵抗:Ron(Ω)

ソース端子がある場合、MOS FETひとつあたりのドレイン-ソース間のオン抵抗はこの規格値の約1/2になります。さらに、ふたつのMOS FETを次図の「並列接続」で使えば、この規格値の約1/4のオン抵抗が期待できます(保証ではありません)。

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2-9. オン抵抗:Ron(Ω)

オン抵抗は、入力側の順電流の大きさの影響は受けませんが、温度が高くなるほど大きくなります。

また、オン抵抗の大きい品種では、負荷電流ILが大きいときのオン抵抗が下がる性質があり、小電流域、大電流域の2条件で規定しています。

このオン抵抗の大きい品種をドレイン-ソース間で使うときは、小電流域のオン抵抗値を適用してください。

出力容量: Cout (pF)

出力側MOS FETが非導通のとき、高周波信号に対する出力端子(ドレイン-ドレイン)間の静電容量。

出力端子間電圧が小さいほど大きくなります。

非導通時、交流信号はこの容量を通して漏れますので、高周波信号のときほど小さい値の抵抗で終端しないと、十分な非導通状態が得られません。

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2-10. 出力容量:Cout(pF)