実際の熱対策は、半導体デバイスの「熱抵抗」をいかに下げるかがテーマです。この熱抵抗を決める要因には、どのようなものがあるかを詳しく見ていくことにします。
オームの法則と同様に、計算で扱える熱抵抗
半導体デバイスからの放熱を、数値を基に検討する熱設計では「熱抵抗」という考え方を用います。これは、熱の伝わり方が電気の伝わり方と対比できるということから来ています。 電気の場合、電圧(電位差)と電流、抵抗の関係は、オームの法則で表されます。熱の場合には、電圧→温度差、電流→熱流、電気抵抗→熱抵抗、というように置き換えることで、右記の「オームの法則」と同じように熱抵抗の計算が可能になります。 この式から見て分かるように、熱抵抗は、熱をどれだけ容易に逃がすことができるかを表していることになります。
パッケージの熱抵抗を決める4つの要素
パッケージ全体の熱抵抗は、
- パッケージの構造
- チップ寸法
- 風速
- パッケージの大きさ
という4つの要素によってほぼ決まります。 それぞれの熱抵抗を左右する要因は次のようになっています。
パッケージの構造
パッケージにはさまざまな種類がありますが、熱抵抗はこの種類に応じて異なります(図3参照)。パッケージの上面プレートが銅板製で、チップがはんだバンプで基板に接続されたFCBGAは熱抵抗的に優れています。また、PBGAでは、2層基板より4層基板の方が熱抵抗は低く、サーマルビア直下にはんだボールを配置することで、さらに熱抵抗の低下が見込めます。
チップ寸法
チップの材料となるシリコンの熱伝導率は、モールド樹脂の約100倍、サブストレートの約10倍程度もあり、チップ自体の表面積が熱伝導に大きく寄与しています。
風速
パッケージそのものの熱伝導率に直接関連するわけではありませんが、ファンなどの強制空冷を行うことで、パッケージ表面やプリント基板から空気への熱伝達がスムーズになり、熱抵抗も低減できます。
パッケージの大きさ
パッケージの寸法が大きいほど、一般に熱抵抗は小さいとされます。パッケージ表面が銅版で覆われた、熱伝導率の高いFCBGAの場合、こうした傾向が顕著です。しかし、熱伝導率の低いFPBGAの場合にはパッケージ寸法との相関はあまり見られず、チップ寸法が同じなら熱抵抗も同じような値となります。