ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:柴田 英利、以下、当社)は、米国カリフォルニア州に本社を置くソフトウェア企業であるAltium Limited (CEO: Aram Mirkazemi、以下、Altium社)の発行済普通株式の全てを取得し完全子会社とすること(以下、本件買収)について、本日、Altium社と合意しましたので、下記の通りお知らせいたします。
本件買収にあたっては、豪州上場会社の株式を100%取得する方法の一つである豪州会社法に基づくScheme of Arrangement(以下、SOA)の手続きにより、Altium社の全株式を現金にて取得する予定であり、当社およびAltium社の取締役会における全会一致での決議を経て、Altium社との間で本件買収に関する合意内容を定めるScheme Implementation Agreement(以下、SIA)を締結いたしました。
今後、Altium社株主、豪州裁判所および必要な規制当局の承認に加え、その他一般的な取引条件の充足を経た上で、2024年下半期中に本件買収を完了する予定です。
記
1.本件買収の目的
当社は、パーパス“To Make Our Lives Easier”のもと、組み込み半導体ソリューションでのグローバルリーダーを企図し、組み込みプロセッサ(マイコン/SoC)、アナログ、パワー、コネクティビティと多岐に及ぶ製品ポートフォリオの拡充を進めてきました。さらに、より使いやすいユーザエクスペリエンス(UX)を実現し、クラウドベースの開発を可能とするためのデジタライゼーション戦略を推進しています。
Altium社は、世界初のPCB(プリント基板)設計ツールプロバイダーとして1985年に豪州で創業し、現在世界で最も使用されているPCBソフトウェアツールを擁する電子機器設計のグローバルリーダーとしての地位を確立しています。
本件買収により、業界をリードする二社が一体となり、コンポーネント、サブシステム、システムレベル設計間のコラボレーションを可能にする、統合されたオープンな「電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォーム(Electronics system design and lifecycle management platform)」を構築します。本件買収は、電子機器設計者にシステムレベルでのユーザエクスペリエンス(使いやすさ)の向上とイノベーションをもたらすことができ、当社のデジタライゼーション戦略を推進する上で、最初の重要な施策となります。
技術の進歩に伴い、電子機器やシステムの設計と統合はますます複雑化しています。現在の電子機器やシステムの設計フローは、部品の選択と評価、シミュレーションからプリント基板(PCB)の物理設計まで、複数の設計ステップに多くの関係者が携わる複雑で反復的なプロセスとなっています。設計者は、機能的であるだけでなく、効率的で費用対効果に優れたシステムを、短い開発サイクルで設計することが求められています。
当社とAltium社は、共通のビジョンの下、統合されたオープンな電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォームを共に構築し、上記の複雑な設計ステップの全てを、システムレベルで一元化させることを目指します。本件買収により、高性能プロセッサ、アナログ、パワー、コネクティビティから成る、当社の強力な組込みソリューションのポートフォリオとAltium社の洗練されたクラウドプラットフォームが統合されます。また、両社が一体となることで、エコシステム全体でサードパーティ・ベンダーなどとの設計の共有とコラボレーションも含めた電子設計プロセスをクラウド上でシームレスに実行できるようになります。当社とAltium社が目指す電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォームは、さまざまな電子設計データと機能の統合・標準化を実現するとともに、電子機器設計に関する一連のライフサイクルマネジメントの強化を単一のプラットフォームで行うことが可能となります。同時に、プラットフォーム上でデジタルを活用した設計プロセスのイテレーション(設計サイクルの反復)を行うことができるため、全体的に生産性を向上できます。これにより、大幅に開発リソースを削減して効率化を進められることとなり、イノベーションが加速され、設計者の参入障壁が低下します。
さらに、本件買収により、当社の財務基盤は強化され、当社が推進するデジタライゼーション戦略が加速することで、大きな株主価値が創出されます。
本件買収は、シナジー効果の発現を待たずに直ちに収益に貢献します。さらに、本件買収の完了後に、売上増およびコスト削減のシナジー効果の発現を見込んでいます。
Altium社は、2億6,329万米ドル(1米ドル151円換算で約396億円)の収益、36.5%のEBITDAマージンを当社にもたらし、収益の内77%は継続的な収益発生が見込める経常収益に相当します。本記載のAltium社の数値は、2023年6月期の業績値です。
2.本件買収のスキーム及びスケジュール
本件買収は、豪州会社法に基づくSOAにより実施されます。本件買収に係る提案に対するAltium社の株主総会における承認(投票議決権ベースで75%以上かつ出席投票株主の頭数の過半数による承認)、豪州裁判所における承認および関連する各国において必要となる当局の承認取得ならびにその他一般的な取引条件を満たすことにより、当社(または、当社完全子会社)は、同社の全株式を取得することができます。
本件買収においては、Altium社株式を1株あたり68.50豪ドル(総額約91億豪ドル、1豪ドル97円換算で約8,879億円)で取得する予定です。買収資金については主要取引銀行から新たに調達する予定の借入金および手許現金で充当することを想定しています。
手続き | 予定時期 |
豪州裁判所における第一回審問 (The First Court Hearing) | 2024年上半期(予定) |
Altium社株主総会 | 2024年下半期(予定) |
豪州裁判所における第二回審問(The Second Court Hearing) | 2024年下半期(予定) |
SOAの効力発生日(Effective Date) | 2024年下半期(予定) |
SOAの実行日(Implementation Date) (Altium社株式の取得日) | 2024年下半期(予定) |
(注)上記日程は必要となる当局からの承認取得の状況等により関係当事者間で協議の上、変更されることがあります。
3.異動する子会社の概要
Altium社の概要
(1) | 名称 | Altium Limited (ASX: ALU) | |||||
(2) | 所在地 | 4225 Executive Square, Level 7, La Jolla, CA 92037, USA | |||||
(3) | 代表者の役職・氏名 | CEO: Aram Mirkazemi | |||||
(4) | 事業内容 | PCB設計などのソフトウェアツールの開発および販売 | |||||
(5) | 資本金 | 127,699千米ドル(19,242百万円、1米ドル151円換算) | |||||
(6) | 設立年月 | 1987年10月 | |||||
(7) | 大株主および持株比率 (2023年8月31日) | HSBC Custody Nominees (Australia) Limited JP Morgan Nominees Australia Pty Limited Citicorp Nominees Pty Limited Mr Aram Mirkazemi + Mrs Lailani Mirkazemi <Family A/C> National Nominees Limited | 35.15% 15.33% 10.67% 5.10% 3.70% | ||||
(8) | 上場会社と当該会社 との間の関係 | 資本関係 | 該当事項はありません。 | ||||
人的関係 | 該当事項はありません | ||||||
取引関係 | 当社と当該会社との間には、当該会社のソフトウェアツールに関する利用取引があります。 | ||||||
(9) | 当該会社の最近3年間の連結経営成績および連結財政状態 ( )内は1米ドル151円・1豪ドル97円換算 | ||||||
決算期 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | ||||
連結純資産 | 255.9百万米ドル (38,559百万円) | 274.9百万米ドル (41,415百万円) | 304.2百万米ドル (45,841百万円) | ||||
連結総資産 | 383.2百万米ドル (57,733百万円) | 381.5百万米ドル (57,477百万円) | 427.2百万米ドル (64,378百万円) | ||||
1株当たり連結純資産 | 1.95米ドル (293.9円) | 2.09米ドル (315.2円) | 2.31米ドル (348.3円) | ||||
連結売上高 | 180.2百万米ドル (27,156百万円) | 220.8百万米ドル (33,272百万円) | 263.3百万米ドル (39,672百万円) | ||||
連結営業利益 | 48.1百万米ドル (7,243百万円) | 67.9百万米ドル (10,227百万円) | 86.4百万米ドル (13,020百万円) | ||||
連結当期純利益 | 107.0百万米ドル (16,120百万円) | 55.3百万米ドル (8,339百万円) | 66.3百万米ドル (9,997百万円) | ||||
1株当たり連結当期純利益 | 0.82米ドル (122.9円) | 0.42米ドル (63.5円) | 0.50米ドル (76.0円) | ||||
1株当たり配当金 | 0.40豪ドル (38.9円) | 0.47豪ドル (45.7円) | 0.54豪ドル (52.5円) | ||||
(注)本件買収に伴い、Altium社(Altium Limited)の連結子会社(特定子会社)として、Altium LLC、Altium IP Co. Pty Ltd.、Altium IP Hold Co. Pty.の3社も当社の子会社となります。各社の情報については、分かり次第お知らせします。
4.取得株式数,取得価額および取得前後の所有株式の状況
(1) | 異動前の所有株式数 | 0株 (議決権の数:0個) (所有割合 :0.0%) |
(2) | 取得株式数 | 133,279,432株 (注) (議決権の数:133,279,432個) (発行済株式数に対する割合:100.0%) |
(3) | 取得対価 | Altium社の株式取得費用 :約91億豪ドル (1豪ドル97円換算で約8,879億円) アドバイザリー費用等(概算額):19百万豪ドル(同換算で約18億円) |
(4) | 異動後の所有株式数 | 133,279,432株 (注) (議決権の数:133,279,432個) (発行済株式数に対する割合:100.0%) |
(注) 本日現在の完全希薄化ベースの株式数を基準としております(本件買収に伴う株式関連報酬の精算による希薄化等を反映)。小数点以下については四捨五入。
5. 日程
当社取締役会決議日 | 2024年2月15日 |
Altium社取締役会決議日 | 2024年2月15日 (オーストラリア東部時間) |
SIA締結日 | 2024年2月15日 |
SOAの実行日(Implementation Date) (Altium社株式の取得日) | 2024年下半期(予定) |
6. 今後の見通し
本件買収が成立した場合、Altium社は当社の連結子会社となります。これに伴う当社の連結業績に与える影響については本件買収の進捗状況に応じ、速やかに開示します。
(注)本発表資料での円換算値は、2024年2月14日時点の為替レート(1米ドル151円、1豪ドル97円)を使用して計算しています。
以上
<留意事項>
この文書は、「Altium社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ」について一般に公表するための記者発表文であり、日本国内外を問わず、投資勧誘又はそれに類する行為を目的として作成されたものではありません。また、この文書は、米国における証券の募集又は販売を構成するものではありません。米国内においては、1933年米国証券法に基づいて証券の登録を行うか又は登録義務からの適用除外を受ける場合を除き、証券の募集又は販売を行うことはできません。
<将来予測に関する注意事項>
本資料に記載されているルネサス エレクトロニクスグループの計画、戦略および業績見通しは、現時点で入手可能な情報に基づきルネサス エレクトロニクスグループが判断しており、潜在的なリスクや不確実性が含まれております。そのため、実際の業績等は、様々な要因により、これら見通し等とは大きく異なる結果となりうることをあらかじめご承知願います。実際の業績等に影響を与えうる重要な要因としては、(1)ルネサス エレクトロニクスグループの事業領域を取り巻く日本、北米、アジア、欧州等の経済情勢、(2)市場におけるルネサス エレクトロニクスのグループ製品、サービスに対する需要動向や競争激化による価格下落圧力、(3)激しい競争にさらされた市場においてルネサス エレクトロニクスグループが引き続き顧客に受け入れられる製品、サービスを供給し続けていくことができる能力、(4)為替レート(特に米ドルと円との為替レート)の変動等がありますが、これら以外にも様々な要因がありえます。また、世界経済の悪化、世界の金融情勢の悪化、国内外の株式市場の低迷等により、実際の業績等が当初の見通しと異なる結果となる可能性もあります。