~Altium社の設計ソフトウェアとクラウドプラットフォーム技術の獲得により、システムレベルで統合されたオープンな電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォームの構築へ。ルネサスのデジタライゼーション戦略を強化~

2024年2月15日

2024215
ルネサス エレクトロニクス株式会社
Altium Limited

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(本社:東京都江東区、代表取締役社長兼CEO:柴田 英利、以下ルネサス)と電子機器設計のグローバルリーダーであるAltium Limited(本社:米国カリフォルニア州サンディエゴ、CEOAram Mirkazemi、上場市場:豪州証券取引所、以下Altium社、読み:アルティウム)は、本日、豪州法上の企業買収手法であるスキーム・オブ・アレンジメント(Scheme of Arrangement、以下本スキーム)により、ルネサスがAltium社を買収(以下、本件買収)する旨のスキーム実行契約(Scheme Implementation Agreement)を締結しました。本件買収においては、諸条件が充足されることを前提に、ルネサスがAltium社の発行済普通株式の全てを、1株当たり68.50豪ドルで現金で買収します。これは、株式価値としては約91億豪ドル(1豪ドル=97円換算で約8,879億円)、企業価値としては約88億豪ドル(同換算で約8,593億円)に相当します。本件買収により、業界をリードする二社が一体となり、コンポーネント、サブシステム、システムレベル設計間のコラボレーションを可能にする、統合されたオープンな「電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォーム(Electronics system and lifecycle management platform)」を構築します。本件買収は、電子機器設計者にシステムレベルでのユーザエクスペリエンス(使いやすさ)の向上とイノベーションをもたらすことができ、ルネサスのデジタライゼーション戦略を推進する上で、最初の重要な施策となります。

 技術の進歩に伴い、電子機器やシステムの設計と統合はますます複雑化しています。現在の電子機器やシステムの設計フローは、部品の選択と評価、シミュレーションからプリント基板(PCB)の物理設計まで、複数の設計ステップに多くの関係者が携わる複雑で反復的なプロセスとなっています。設計者は、機能的であるだけでなく、効率的で費用対効果に優れたシステムを、短い開発サイクルで設計することが求められています。

 ルネサスとAltium社は、共通のビジョンのもと、統合されたオープンな電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォームを共に構築し、上記の複雑な設計ステップの全てを、システムレベルで一元化させることを目指します。本件買収により、高性能プロセッサ、アナログ、パワー、コネクティビティから成る、ルネサスの強力な組込みソリューションのポートフォリオとAltium社の洗練されたクラウドプラットフォームが統合されます。また、両社が一体となることで、エコシステム全体でサードパーティ・ベンダーなどとの設計の共有とコラボレーションも含めた電子設計プロセスをクラウド上でシームレスに実行できるようになります。ルネサスとAltium社が目指す電子機器設計・ライフサイクルマネジメントプラットフォームは、さまざまな電子設計データと機能の統合・標準化を実現するとともに、電子機器設計に関する一連のライフサイクルマネジメントの強化を単一のプラットフォームで行うことが可能となります。同時に、プラットフォーム上でデジタルを活用した設計プロセスのイテレーション(設計サイクルの反復)を行うことができるため、全体的に生産性を向上できます。これにより、大幅に開発リソースを削減して効率化を進められることとなり、イノベーションが加速され、設計者の参入障壁が低下します。

 ルネサスの代表取締役社長兼CEOの柴田 英利は、次のように述べています。

 「システム開発プロセスは急速に複雑化しています。ルネサスは、パーパス“To Make Our Lives Easier”のもと、クラウドベースのプラットフォームを通じて、電子機器設計への参画を容易にし、さらなるイノベーションを生み出すことを目指しています。Altium社の買収により、ルネサスは今後、統合されたオープンな開発プラットフォームを提供することが可能となります。私たちの狙いは、あらゆる規模や業種のユーザーが容易に電子システムを構築・拡張できるようにすることです。Altium社のチームと共に、今後この新たなプラットフォーム実現に向けた投資および開発を続け、顧客に進化した価値をもたらすことを楽しみにしています。

 Altium社のCEOAram Mirkazemiは、次のように述べています。

 「エレクトロニクスは、スマートで持続可能な世界を築くうえで最も重要な産業であると強く信じています。Altium社として、ルネサスの先見的なリーダーシップと、電子機器設計を幅広い市場に利用可能にするという狙いに強く共感します。ルネサスのこの構想は、Altium社の業界を変革するというビジョンと合致し、私たちはあらゆる側面で大きく貢献できると考えています。ルネサスとは2年近くパートナーとして密接に連携しており、今後ルネサスのチームの一員となり、成長を続けていくことを楽しみにしています。」

 Altium社は、世界初のPCB設計ツールプロバイダーとして1985年に豪州で創業し、現在世界で最も使用されているPCBソフトウェアツールを擁するグローバルリーダーとしての地位を確立しています。Altium社のソフトウェアツールを使用することで、PCB設計者、部品サプライヤー、メーカーは開発や連携が容易となり、エレクトロニクス製品をより迅速かつ効率的に開発・製造できます。Altium社の業界をリードするPCB設計ソフトウェアは、電子機器の設計と実現のための世界初のデジタル・プラットフォームであるAltium 365を組み合わせることで、PCB設計プロセス全体を通じて、シームレスなコラボレーションを実現します。20236月、ルネサスは社内の全てのPCB設計ツールをAltium社のクラウドベースのプラットフォーム「Altium 365」に統一したことを発表しました。ルネサスはAltium社と協力して、全ての製品のECADライブラリをAltium Public Vaultに公開することを予定しています。Altium 365のメーカー部品検索などの機能を使用して、顧客はAltium libraryから直接ルネサスのデバイスを選択し、市場投入までの時間を短縮することができます。

 本件買収は、両社の取締役会において全会一致で承認されており、2024年下半期中に完了する予定です。本件買収の完了には、Altium社株主、豪州裁判所および必要な規制当局の承認に加え、その他一般的な取引条件の充足が必要となります。Altium社の取締役会は、本件買収を上回る提案がなく、本スキームがAltium社株主にとって最善の利益をもたらすと独立専門家が結論付ける(引き続き結論付け続ける)ことを条件として、Altium社株主が本スキームに賛成票を投じることを全会一致で推奨しています。同じ条件下で、Altium社の各取締役は、保有または管理する全てのAltium社株式につき、本スキームに賛成する旨の議決権を行使する、または行使させる意向です。買収完了後は、Altium社 はルネサスの完全子会社として、引き続き Aram Mirkazemi CEO が率いていく予定です。

財務インパクトについて

 本件買収により、ルネサスの財務基盤は強化され、また、ルネサスが推進するデジタライゼーション戦略が加速することで、大きな株主価値が創出されます。主な財務インパクトは以下の通りです。

  • ルネサスは、Altium社の発行済普通株式の全てを1株当たり現金68.50豪ドルで取得します。これは、本件買収発表前の最終取引日である2024214日のAltium社株式の終値に対して約34%のプレミアム、2024115日から214日までの1ヶ月間のAltium社の出来高加重平均価格に対して約39%のプレミアムに相当します。また、20231115日から2024214日までの3ヶ月間のAltium社の出来高加重平均価格に対して約46%のプレミアム、Altium社株式の過去最高値(終値ベース)に対して約31%のプレミアムに相当します。
  • 本件買収は、現金で取引されますが、株式価値で約91億豪ドル(1豪ドル=97円換算で約8,879億円)、企業価値で約88億豪ドル(同換算で約8,593億円)に相当します。
  • 本件買収は、シナジー効果の発現を待たずに直ちに収益に貢献します。さらに、本件買収の完了後に、売上増およびコスト削減のシナジー効果の発現を見込んでいます。
  • Altium社は、26,329万米ドル(1米ドル151円換算で約396億円)の収益、36.5%のEBITDAマージンをもたらし、収益の内77%は継続的な収益発生が見込める経常収益に相当します。本記載のAltium社の数値は、20236月期の業績値です。
  • ルネサスは、本件買収資金を銀行融資および手許現金で調達する予定であり、本件買収の契約上は、資金調達面での条件は付されていません。
  • ルネサスは、買収完了後3年以内にNon-GAAP EBITDA純有利子負債倍率を 1.0倍以下に低下させることを見込んでいます。

(注)本発表資料での円換算値は、2024214日時点の為替レート(1米ドル151円、1豪ドル97円)を使用して計算しています。

本件のアドバイザー

 本件買収では、Deutsche Bankがルネサスのフィナンシャルアドバイザーを務めています。また、ルネサスのリーガルカウンセルはDLA Piper LLPCovington & Burling LLPおよび長島・大野・常松法律事務所が務めています。Altium社に対しては、J.P. Morgan Securities LLCがフィナンシャルアドバイザーを、King & Wood MallesonsおよびReed Smith LLPがリーガルカウンセルを担当しています。

ルネサス エレクトロニクスについて

 ルネサスは、世界トップシェアのマイコンサプライヤとして、組み込みプロセッサを中心に、アナログ&パワー、コネクティビティなどの各種半導体を、自動車、産業、インフラ、IoT分野に提供しています。また、私たちの製品を最適に組み合わせたウィニング・コンビネーション・ソリューションを提案することにより、早期開発にも貢献しています。あらゆるモノとモノをつなぎ、エンドポイントのインテリジェント化を推進するなど、ルネサスは人々の暮らしを楽(ラク)にする技術で、持続可能な未来をつくることを目指してまいります。詳細は、www.renesas.comをご覧ください。SNSのフォローはこちらからLinkedInFacebookXYouTube

Altium社について

 米カリフォルニア州サンディエゴを拠点とする世界的なソフトウェア企業であるAltium Limited (ASX:ALU、以下、アルティウムは、電子機器の革新を加速しています。アルティウムは 30年以上にわたりPCB設計者と電気設計技術者の生産性を最大化するソフトウェアを提供してきました。個人の発明家から多国籍企業に至るまで、アルティウムのソフトウェアを選択して、電子工学をベースとする製品を設計して実現しているPCB設計者、および技術者は増加しています。アルティウムについて詳しくは、www.altium.com/jpをご覧ください。

###

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。
*将来予測に関する注意事項に関しては、英語版ニュースリリースをお読みください。

この記事をシェアする