ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下ルネサス)は、このたび、32ビットマイコンRAファミリを拡充し、高性能なArm® Cortex®-M85プロセッサを搭載した「RA8E1」および「RA8E2」を発売、量産を開始しました。2023年に発表された「RA8」シリーズのマイコンとしては、メインストリームの「RA8M1」、グラフィックス機能搭載の「RA8D1」、モータ制御用の「RA8T1」に続く新製品です。業界最高クラスとなる6.39 CoreMark/MHz(注1)の性能を継承しながら、周辺機能を厳選したことにより、コストを重視した産業オートメーションやホームオートメーション、オフィス機器、ヘルスケア、コンシューマ機器などに最適です。
RA8E1およびRA8E2は、従来のRA8シリーズの高い処理性能はそのままに、セキュリティ機能やメモリ容量をそこまで要求されないアプリケーション向けに開発しました。セキュリティIPコア:RSIP-E51Aを非搭載とし、搭載するフラッシュメモリやSRAMの容量を削減、さらに周辺機能も厳選(USB High-SpeedやI3Cは非搭載)することにより低コスト化を実現しました。ディスプレイを搭載した機器向けのRA8E2においては、対応するディスプレイを最大WVGA(800×480)までと絞ることにより、関連機能を最適化しました。このラインアップ拡充により、ユーザは高性能なCortex-M85コア搭載したRA8シリーズから、用途とコストに合ったマイコンを選択可能になります。
ルネサスのエンベデッドプロセッシング第一事業部、事業部長のDaryl Khooは次のように述べています。「ユーザはRA8マイコンの優れた性能を高く評価しており、今回はコスト重視の産業用、ビジョンAI、およびミッドエンドのグラフィックスアプリケーション向けに、さらなる機能の最適化と高性能化を目指しました。RA8E1とRA8E2は、これらの市場に適した性能と機能のバランスを実現します。またフレキシブルソフトウェアパッケージにより、RA8シリーズ内での移行やRA6マイコンからの移行が容易です。」
RA8シリーズの特長を継承
RA8シリーズは、ArmのMプロファイルベクトル演算拡張機能、Arm Helium™テクノロジを採用しており、従来のCortex-M7プロセッサをベースとするマイコンと比べて、DSPやMLの処理性能を最大4倍向上させます。これにより、AIモデルを実行する際に高い性能が求められる、急成長中のAIoT分野でのアプリケーションに対応できます。
RA8シリーズは、低電圧動作可能であることに加えて複数の低電力モードを備えており、業界をリードする性能を発揮しながらも、電力効率を高めることができます。低電力モード、独立した電力ドメイン、より低い電圧範囲、高速ウェイクアップ時間、標準アクティブ・スタンバイ時の低電流の組み合わせによって、システム全体の電力要件を低減することから、ユーザはシステム全体の消費電力を削減すると同時に、環境規制要件を満たすことができます。新しいCortex-M85コアは、さまざまなDSP/ML(機械学習)タスクをより少ない電力で実行できます。
RA8シリーズは、ルネサスのFlexible Software Package(FSP)を利用できます。FSPは、さまざまなRTOSやBSP(Board Support Package)、周辺ドライバ、ミドルウェア、コネクティビティ、ネットワーク、TrustZoneサポートなどの基本ソフトウェアに加え、複雑なAI、モータ制御、クラウドソリューションを構築するためのリファレンスソフトウェアなどを提供することで、迅速なアプリケーション開発を可能にします。ユーザは独自のソフトウェアコードや所望のRTOSをFSPに統合することができるため、アプリケーション開発に柔軟性を持たせることができます。FSPを使用することで、既存のソフトウェア資産を新しいRA8シリーズのデバイスに容易に移行することができます。
RA8E1マイコンの主な特長
(太字表記はRA8E1とRA8E2の差異)
- CPUコア:最大動作周波数360MHzのCortex-M85搭載(HeliumおよびTrustZone対応)
- メモリ:1MBフラッシュ、544KB SRAM(ECC対応32KB TCM + パリティ保護機能付き512KB SRAM)、1KBスタンバイSRAM、32KB I/Dキャッシュ
- 周辺機能:イーサネット、XSPI(Octal SPI)、SPI、I2C、USB FS、CAN-FD、SSI、12ビットA/Dコンバータ、12ビットD/Aコンバータ、高速コンパレータ、温度センサ、カメラ入力インタフェース8ビットCEU(Capture Engine Unit)、GPT(General Purpose Timer)、Low Power-GPT、WDT(Watch Dog Timer)、RTC(Real Time Clock)
- パッケージ:100ピン、144ピンのLQFP
RA8E2マイコンの主な特長
- CPUコア:最大動作周波数480MHzのCortex-M85搭載(HeliumおよびTrustZone対応)
- メモリ:1MBフラッシュ、672KB SRAM(ECC対応32KB TCM + パリティ保護機能付き512KB SRAM + 128KB SRAM)、1KBスタンバイSRAM、32KB I/Dキャッシュ
- 周辺機能:16ビット外部メモリインタフェース、XSPI(Octal SPI)、SPI、I2C、USB FS、CAN-FD、SSI、12ビットA/Dコンバータ、12ビットD/Aコンバータ、高速コンパレータ、温度センサ、GPT、LP-GPT、WDT、RTC
- グラフィック機能:WVGA対応グラフィックLCDコントローラ、2D描画エンジン
- パッケージ:224ピンのBGA
ウィニング・コンビネーション
ルネサスは、新しいRA8E1およびRA8E2グループのマイコンと、ルネサスの豊富な製品ポートフォリオからのデバイスを組み合わせ、エントリーレベルの音声&ビジョンAIシステムや家電製品用ヒューマンマシンインタフェース(HMI)など、多彩なウィニング・コンビネーションソリューションを提案しています。ルネサスのウィニング・コンビネーションは、ルネサス製品を最適に組み合わせてエンジニアによる設計検証を行っているため、ユーザの設計のリスクを低減し、市場投入までの時間を短縮します。ルネサスは、様々なアプリケーションに向けた400種類以上のウィニング・コンビネーションを提供しています。詳しくは、こちらをご覧ください。renesas.com/win
RA8E1とRA8E2グループの詳細については、http://www.renesas.com/RA8E1およびhttp://www.renesas.com/RA8E2をご覧ください。RA8E1用にはFast Prototyping Board も用意しており、TFTディスプレイを含むRA8E2評価キットは2025年1Q(1月~3月)に提供を開始する予定です。
ルネサスのマイコンについて
ルネサスは、年間35億個以上を出荷するマイコンの世界トップクラスのメーカです。高い性能と品質、電力効率を誇り、8ビット、16ビット、32ビットの幅広い製品ラインアップを展開しています。約50%が自動車向けであり、他に産業用やIoT機器、データセンタ、通信インフラ向けに提供しています。ルネサスは信頼に足るサプライヤとして、スマートで安全なマイコンを設計してきた数十年の経験を持ち、デュアルファブ生産モデルや、業界最先端のプロセス技術、200社以上のエコシステムパートナを有しています。ルネサスのマイコンの詳細は、こちらをご覧ください。www.renesas.com/MCUs
以 上
(注1)EEMBCのCoreMark®ベンチマークで、組み込みシステムのCPUの性能を測定するスコア
*Arm、Arm Cortex、Arm Helium、Arm TrustZoneは、Arm LimitedのEUおよびその他の国における商標または登録商標です。本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。
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