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小型、低消費電力化を実現し、基板設計を容易にするBluetooth Low Energy用RFトランシーバ技術を開発

~インピーダンス調整技術と基準信号自己補正技術を開発。ISSCC 2022にて発表~

2022年2月24日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:柴田 英利、以下ルネサス)は、このたび、低電力・近距離無線通信Bluetooth® Low Energy(LE)に対応した2.4GHzの小面積、低消費電力RFトランシーバ技術を開発しました。IoT機器では、小型、低コスト、低消費電力はもちろんのこと、どのような実装形態であっても柔軟にBluetooth LEを搭載できることが求められます。そこでルネサスは、(1)外付けのインピーダンス整合回路無しでも、様々なアンテナや基板のインピーダンスにIC側が合わせられるよう、広範囲にインピーダンスを可変できる整合回路技術と、(2)キャリブレーションを行うことなく、小規模な回路で素子のばらつきや周囲環境の変化を自己補正する基準信号(局部発振信号)補正回路技術を新たに開発しました。

 今回、22nm CMOSプロセスによるBluetooth LE用RFトランシーバ回路を試作し、上記技術の有効性を実証しました。受信部アーキテクチャ変更によるインダクタ数の削減や、小面積、低電流ベースバンドアンプ、高効率D級アンプなどの技術も加え、電源系を含む回路面積は世界最小の0.84mm2を実現しました。消費電力も、受信/送信時で3.6mW/4.1mWと世界トップレベルの低消費電力を確認しました。これらにより、小型化、基板コストの低減、低消費電力化に貢献し、さらに基板設計を容易にすることが可能です。

 ルネサスは今回の成果を、2022年2月20日から24日まで米国サンフランシスコで開催中の「国際固体素子回路会議 ISSCC 2022(International Solid-State Circuits Conference 2022)」にて発表しました。

 ルネサスが新たに開発したRFトランシーバの新技術は以下の通りです。

(1)広範囲にインピーダンスを可変できる整合回路技術(On-chip Antenna Impedance Tuner, AIT)

 ルネサスは、ISSCC 2015で発表したインピーダンス整合回路内蔵技術により、送受切り替えスイッチやインピーダンス整合のためのインダクタやキャパシタを外付けすることなく、小型、低コストを実現するBluetooth LE製品を提供してきました。しかしながら、使用するアンテナや基板の設計によっては必ずしもインピーダンスが50Ωとはならず、外付けの整合回路が必要になるという課題がありました。また、従来技術のまま、インピーダンス可変機能を持つ整合回路を搭載すると、信号ロスの増加や、充分な可変範囲が得られないという問題が生じます。

 そこでルネサスは、2個のインダクタと4個の可変キャパシタで構成される新しい可変インピーダンス整合回路技術を開発しました。整合回路に使われる送信側のインダクタと受信側インダクタを同心円状に形成し、その相互誘導を活用することにより、信号ロスの低減と、実効的な寄生容量の削減によるインピーダンス可変範囲の拡大を両立させるとともに、面積も大幅に削減することに成功しました。インピーダンスの不整合を表す電圧定在波比(voltage standing wave ratio; VSWR)は最大で6.8まで対応し、約25~300Ωまでインピーダンスが可変であることを確認しました。

(2)キャリブレーション回路不要の基準信号自己補正回路技術(Self IQ-phase Correction, SIQC)

 RFトランシーバの内部では、アンテナから入ってきた無線電波信号とほぼ同一周波数の基準信号(局部発振信号)を生成し、これを用いてGHz帯の無線信号を低周波ベースバンド信号に変換しています。この基準信号は、素子のばらつきや温度、電圧の変動により精度が劣化し、受信特性の劣化をもたらします。従来この基準信号を正確に生成する技術として、キャリブレーション回路を用いて、位相のずれや振幅のずれを補正する方法が用いられてきました。しかしながら、このキャリブレーション回路を内蔵するためにチップ面積や消費電力が大きくなる、テストコストが増加する、という問題がありました。

 そこでルネサスは、4つの異なる位相を持った基準信号を互いに補正し合うことで位相誤差をキャンセルする新しい自己位相補正回路技術を開発しました。この自己補正回路は小規模な回路で実現できるため、従来のキャリブレーション回路に比べ約12分の1のサイズで実現することができます。受信特性で重要なイメージ信号除去比は平均で39dBが得られ、Bluetooth規格に対して十分なマージンを取れることを確認しました。

 本技術はBluetooth LEのみならずRFトランシーバ全般に適用可能な技術であり、ルネサスは実用化に向けて開発を進めていきます。

*BluetoothはBluetooth SIG, Inc.の登録商標です。Arm、CortexはArm Limitedの登録商標または商標です。本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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