ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO: 柴田 英利、以下ルネサス)は、このたび、AMDのVersalアダプティブSoC(System on Chip)「XQRVC1902」向けに宇宙環境対応の電力供給のリファレンスデザインを発表しました。AMDと共同で開発したリファレンスデザイン「ISLVERSALDEMO2Z」は、4つの新製品を含む耐放射線パワーマネジメントIC使用して、省スペース設計を実現しています。ルネサスは宇宙航空分野向けに特別に設計し、幅広いパワーレールをサポートする製品群をインターシルブランドで提供しています。宇宙空間の過酷な環境に対応しながら、厳しい電圧許容範囲、高電流、および効率的な電力変換へのニーズを満たすことができます。
FPGAやASICの駆動電圧が低下し、消費電流が増加していく中で、デバイスが問題なく動作するために厳しい電力要件を満たすことは、ますます難しくなりつつあります。この要件は、供給電力に限りがあり、極めて厳しい温度条件や放射線環境に長時間さらされる宇宙ミッションにおいては特に重要です。
このような課題に対処するため、ルネサスはAMDと協業して、AMDのVersalプラットフォーム向けのパワーマネジメントソリューションを開発しました。VersalアダプティブSoCは、業界をリードする宇宙グレードのコンピューティングプラットフォームで、耐放射線特性と、高速なAI推論、および高帯域幅の信号処理能力を実現します。リファレンスデザインは、最大140A(アンペア)の電流を供給できる0.80Vの低コア電圧電源を含む、Versalプラットフォームで使用される各パワーレールを生成します。
ルネサスのアドバンスドミックスシグナル&ASICソリューション事業部、耐放射線ビジネス担当Vice PresidentのChris Stephensは次のように述べています。「衛星や宇宙船の打ち上げが急速に増え続ける中、VersalアダプティブSoCのような高性能コンピューティングプラットフォームの普及が進んでおり、それに伴って新しい電源ソリューションが必要とされています。ルネサスの新しいリファレンスデザインは、宇宙空間での運用における厳しい要求を満たすよう設計されており、重要なコンポーネントを非常に小さな面積に実装しています。これはVersalアダプティブSoCへの電力供給に理想的なターンキーソリューションです。」
AMDのAerospace & Defense Vertical Market のsenior director であるMinal Sawant 氏は次のように述べています。「当社のAMD XQRVC1902宇宙用VersalアダプティブSoCのような高性能なデジタルプラットフォームの電源管理は、特に宇宙という過酷な環境で使用される場合、当たり前に出来ると考えることはできません。耐放射線性に優れた宇宙用Versal SoCとルネサスのパワーソリューションISLVERSALDEMO2Zの組み合わせは、宇宙ミッションの成功に不可欠な精度、効率、信頼性をお客様に提供します。」
本リファレンスデザインには、ルネサスの各種パワーマネジメントICが搭載されており、耐放射線製品としての試験済みです。これらのICには、パルス幅変調(PWM)コントローラ、GaN FETハーフブリッジドライバ、ポイント・オブ・ロード(POL)レギュレータ、パワー/イネーブルスイッチ、パワーシーケンサなどが含まれます。これらのデバイスは小型パッケージで提供されるため、コアとなるパワーレールコンポーネントの基板面積はわずか名刺2枚分の大きさに相当する104cm2です。
さらに、本リファレンスデザインには、回路図、部品表、PCBガーバーファイルなど、ユーザがシステムへの迅速な統合を行うために必要な設計情報がすべて付属しています。
リファレンスデザインに使用している新製品の主な特長は以下の通りです。
耐放射線デュアル出力PWMコントローラ:ISL73847SEHの主な特長
- 同期整流降圧PWMコントローラ
- 単相または二相
- 4.5V~19Vの入力電圧範囲
- VREF並みの低出力電圧:0.6V+/-0.67%(温度、放射線、寿命)
- 出力電圧の差動リモートセンシング
- 高い耐放射線性、低線量率 (LDR 0.01 rad(Si)/s): 75krad(Si)
- 動作温度範囲:-55 °C~+125 °C
宇宙用GaN FETのハーフブリッジドライバ:ISL73041SEHとISL71441Mの主な特長
- ISL73847SEH同期整流降圧PWMコントローラとインタフェース可能
- プログラマブルゲートドライブ、4.5V~5.5V
- ISL73847SEHとの双方向通信による起動同期と故障検出
- ハイサイド・ドライバとローサイド・ドライバの間の整合性が良く、伝播遅延が小さい
- 最大13.2Vの広いVDD入力電圧範囲
- クラス最高のシングルイベント効果(SEE)性能
- セラミックパッケージ(ISL73041SEH)またはプラスチックパッケージ(ISL71441M)で入手可能
- 動作温度範囲:-55 °C~+125 °C
耐放射線POLレギュレータ:ISL73007SEHの主な特長
- 3V~18Vの入力電圧範囲
- 内部または外部位相補償
- 温度および放射線に対して1%の基準電圧
- 1A~3Aで90%以上の効率
- 業界最小フットプリントの14リードのセラミックデュアルフラットパックパッケージ
- 高い耐放射線性、低線量率 (LDR 0.01rad(Si)/s): 75krad(Si)
- 動作温度範囲:-55 °C~+125 °C
これらの製品とリファレンスデザインは、7月24~28日に米国ミズーリ州カンザスシティで開催されるIEEE Nuclear & Space Radiation Effects Conference(NSREC)のルネサスのブース(#112/113)で紹介する予定です。
ルネサスのインターシルブランドは、1950年にRadiation Inc.が設立されて以来、60年以上に渡る宇宙産業での長い歴史を持っています。事実上、ほぼすべての衛星、シャトル打ち上げ、深宇宙探査ミッションにインターシルブランドの製品が使用されてきました。ルネサスは、この経験を活かして、高効率で熱的に最適化された信頼性の高いSMD、MIL-STD-883、MIL-PRF 38535 Class-V/Qのインターシルブランドの製品を、防衛や高信頼性(Hi-Rel)、および耐放射線の宇宙市場向けに提供しています。これらの耐放射線ICは、データ通信、電源供給、電源管理、一般的保護回路、地球からの追跡・監視・制御(TT&C)といったミッションクリティカルな用途でサブシステムをサポートしています。
すべての製品は販売中で、リファレンスデザインは数量限定で提供します。詳細については、営業担当まで問い合わせいただくか、ルネサスのウェブサイトをご覧ください。
耐放射線デュアル出力PWMコントローラ:ISL73847SEH
宇宙用GaN FETのハーフブリッジドライバ:ISL73041SEHとISL71441M
耐放射線POLレギュレータ:ISL73007SEH
以 上
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