~3Dグラフィックス処理機能内蔵アプリケーションプロセッサ「SH-Mobile APE5R」を搭載したアプリケーションプラットフォームと、LTE対応モデムプラットフォームを統合して提供~
2011年2月15日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス エレクトロニクス)とその子会社、ルネサス モバイル株式会社(代表取締役社長:川崎 郁也、以下ルネサス モバイル)は、このたび、スマートフォンやタブレットPCなどの各種携帯機器向けに、3Dグラフィックス処理機能を内蔵し、動画・カメラといったマルチメディア機能を司るアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile APE5R」を搭載したアプリケーションプラットフォームと、LTE(注1)などに対応したモデムプラットフォームを統合したモバイルプラットフォーム「MP5225」を製品化いたしました。ルネサス モバイルは、2011年6月より本モバイルプラットフォームのサンプル出荷を開始し、2011年末の量産を予定しています。

 本モバイルプラットフォームを構成するアプリケーションプラットフォームは、業界最高クラスの動画・3Dグラフィックス処理性能を有するアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile APE5R」とHDMIやUSBインタフェースなどの各種周辺回路から成ります。今回、このアプリケーションプラットフォームと、LTE/HSPA+(注2)/GSM 対応のトリプルモードモデムチップ(ベースバンドプロセッサ)や、RFトランシーバ IC、パワーアンプ、電源ICなどから成る、ルネサス モバイルのモデムプラットフォーム「SP2531」を統合させました。モデム部分については、HSPA+/GSM対応のデュアルモードモデムを提供するこ とも可能です。

 業界最高クラスの高度なアプリケーション処理機能とモデム機能を兼ね備えた本モバイルプラットフォームを採用することで、機器メーカーや通信事業者は、スマートフォンやタブレットPCなど様々な携帯機器で、LTEネットワークやHSPA+/DC-HSPA(注3)ネットワークを利用した最先端の各種サービスやアプリケーションを実現できます。また、本モバイルプラットフォームは、こうした多様な携帯機器から成るコンバージェンス市場をターゲットにしているため、各種携帯機器で使用される主要なモバイルOSのAndroid™、Windows™、MeeGo™、Symbian™などに対応いたします。

 「SH-Mobile APE5R」で確立されたハードウェア、ソフトウェア技術は、モバイルプラットフォーム「MP5225」に活かされるだけでなく、ルネサスグループより今後提供していく「R-Mobile シリーズ」に継承されていくことで、一貫したプラットフォーム環境を提供してまいります。

 モバイルプラットフォーム「MP5225」の特長は、次のとおりです。

(1)業界最高クラスの動画処理性能を実現するアプリケーションプロセッサ「SH-Mobile APE5R」

 「SH-Mobile APE5R」は、豊富な市場実績を持つ低消費電力かつ高性能な独自の動画処理アーキテクチャにより、H.264(注4)方式のフルHD(1920×1080画素)動画のコーデック(動画の符号化・復号化)機能を持ち、また、3D映像の録画・再生も1秒間に30枚(30fps)の高速処理を行います。さらに、今後新たに市場に投入されていくコーデックの新方式についても随時対応していく方針です。

 また、英イマジネーションテクノロジーズ社製IP(Intellectual Property)である「POWERVRTM SGX543 MPTM (マルチプロセッサ)」を業界で初めて搭載することで、さらに先進の2D/3Dグラフィックス処理性能を提供します。同社IP導入により、OpenGL ES, Open VG(注5)に対応し、今後はOpen CLにも対応していきます。

(2)「SH-Mobile APE5R」にCortexTM-A9のデュアルコアを内蔵

 「SH-Mobile APE5R」は英ARM社製CPU「Cortex-A9」を2個搭載しており、合計6,000DMIPS(注6)の高い処理性能を実現します。

(3)幅広い通信規格サポートと高速データ転送性能を実現するLTEモデムプラットフォーム「SP2531」

 LTE対応トリプルモードモデムプラットフォーム「SP2531」はルネサスグループ既存の技術と、2010年11月末に買収したノキアのワイヤレスモデム部門で開発した最新のモデム技術を融合した初めての製品です。最新の通信規格LTE(TD-LTE(注7)およびFDD-LTE Cat 3(注8)) に対応し、下り100Mbps、上り50Mbpsの業界最高クラスの高速データ転送を実現します。さらに、本モデムプラットフォームは、LTEだけでな く、既存のGSM、W-CDMA、HSPAなど、幅広い通信規格に対応しています。HSPA+については、3GPP規格Release8(注9)に基づき、下りは42Mbps(DC-HSDPA Cat 24(注10))、上りは11.5Mbps(DC-HSUPA Cat 7(注11))と、 従来よりもデータ転送性能が大幅に向上しています。また、65nm(ナノメートル)のマルチモードLTEトランシーバICやマルチモード、マルチバンドのパワーアンプモジュールと組み合わせることにより世界各国で異なる周波数帯に対応する世界最小のRFサブシステムの設計が可能です。

(4)音楽再生を低消費電力で実現

 24ビットのオーディオ専用DSPエンジン内蔵により、低消費電力で音楽再生を実現します。

(5)豊富なインタフェースサポート

 HDMIやカメラモジュール、BluetoothやワイヤレスLANモジュールなどの各種インタフェースに柔軟に対応できます。

 ルネサスモバイルは、設計から生産までの一貫したサポートと共に本モバイルプラットフォームをリファレンスデザイン(回路や部品配置の雛形)として提供し、携帯機器メーカーの製品開発期間短縮、早期製品化に貢献します。また、継続性ある製品ロードマップを提示することで、携帯機器メーカーのソフトウェア開発コスト低減に寄与します。

 本発表に際して、ルネサス モバイルの取締役副社長 吉岡 真一は、「モバイルプラットフォーム“MP5225”は、ルネサス モバイルにとって、LTEネットワーク下の先端アプリケーションを実現する上での旗艦製品です。MP5225を構成するSH-Mobile APE5Rの動画処理技術、2D/3Dグラフィックス処理技術やSMP(Symmetrical Multi-Processing)アーキテクチャを、最先端のLTE対応モデムプラットフォームと組み合わせて顧客に提供することで、高速無線通信を介した様々なサービスやアプリケーションを可能とする多様な携帯機器の開発を促すことができます。」と述べています。

本モバイルプラットフォームの仕様概要は、別紙をご参照下さい。

以 上

(注1)LTE:Long Term Evolution. 携帯電話高速データ通信規格の一つであり、3.9Gと呼ばれている。

(注2)HSPA +:High Speed Packet Access Plus. 第3世代(3G)携帯電話の内、「W-CDMA」のデータ転送を高速化した規格。

(注3)DC-HSPA:Dual Cell High Speed Packet Access. 複数の基地局や周波数帯の帯域幅を広く利用することで、HSPAを高速化する規格。

(注4)H.264:動画圧縮方式の一つで、MPEG4 AV-Cとも呼ばれる。

(注5)OpenGL ES、Open VG、Open CL:いずれも標準化団体クロノス・グループ(The Khronos Group)が管理するグラフィックライブラリの一つ。OpenGL ESは、OpenGLのサブセット版であり、携帯電話、PDA(携帯情報端末)、家電など組み込み用途向けに開発された、3Dグラフィックスのためのプログラムインタフェース。2Dグラフィックスも可能である。Open VGは、2Dベクターグラフィックスのためのプログラムインタフェース。Open CLは、Open Computing Languageの略称であり、CPU、GPUなど異なる種類のプロセッサを搭載した環境下で、並列処理を実施するためのフレームワーク。

(注6)DMIPS:Dhrystone MIPSとも呼ばれるコンピュータの演算性能を評価する指標。

(注7)TD-LTE:上りと下りに同じ周波数帯を使用し、時分割で切り替える方式。

(注8)FDD-LTE Cat 3:上りと下りで使用する周波数帯が異なる方式。

(注9)3GPP規格 Release 8:3GPP (Third Generation Partnership Project) は、第3世代(3G)携帯電話システム仕様の検討・作成を行うプロジェクトであり、3GPP規格はそこで策定された規格のこと。

(注10)DC-HSDPA Cat 24:Dual Cell High Speed Downlink Packet Access. 効率良くデータ転送ができる64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)技術と複数の周波数帯を利用してデータ転送を高速化するDC-HSPA機能により実現。

(注11)DC-HSUPA Cat7:Dual Cell High Speed Uplink Packet Access. 上り11.5Mbpsの転送性能。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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