ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)はこのたび、PCやサーバ、ストレージなどのCPU用電源(Voltage Regulator、以下VR)として、業界で初めて、マイコンベースのデジタル・インタフェース搭載VRコントローラ「R2A30521NP」と電流検出回路を内蔵したインテリジェントDriver-MOSFET集積パワーデバイス(注)「R2J20759NP」のチップセットを製品化し、2012年10月よりサンプル出荷を開始します。
そして、インテル コーポレーションの最新のVR規格であるVR12、VR12.5、およびVR12.6に準拠した電源システムの小型化と低消費電力化、高精度化を実現するためのスケーラブル電源システムソリューションとして積極的に拡販を進めてまいります。
新製品は、高度なパワーマネージメントが要求されるVRで重要となる電流検出とVR制御に対応すると共に、(1)新電流検出方式採用により、当社比で約40%実装面積を削減できる。(2)VRコントローラに当社の超低消費電力マイコン「RL78 」と同じアーキテクチャを採用したことにより、「R2J20759NP」との連携により、VR電源全体の消費電力は、スタンバイモード時に約50mW、超スタンバイモード時に約0.8mWと大幅に低減できる。(3)同じコンセプトでサーバやデスクトップPCなどの高性能向けからノートブックPCなどのバッテリ動作アプリケーションまで、幅広い用途に対応できるという特長を有しております。
本システムは、マイコンが得意とするデジタル・インタフェース 機能やソフトウェアによるパラメータ設定などの柔軟性と、高精度&高速制御や低消費電流化に適したアナログ回路の安定性を兼ね備えた、ハイブリッドシステ ムであり、当社がかねてより注力するマイコンとアナログとの融合によるシナジー効果を発揮したシステムソリューションとなっております。
新製品の量産は、2013年1月から開始し、同年12月以降は月産50万セットを生産予定です。
最新のサーバやPCでは、稼働時の最高のパフォーマンスと、休止時の徹底した省エネ動作が要求され ます。そのため、従来システムよりもさらに高度なパワーマネージメントを実現するために、VRではCPUや上位システムとの綿密な情報交換が必要になりま す。そして、そのために必要な電流検出回路における小型化や低消費電力化が、特にウルトラブックなどのノートPCをはじめ要求されています。
ルネサスは、かねてよりDriver-MOSFET集積パワーデバイスなどでVRの低消費 電力化や小型化に貢献してきましたが、上記ニーズに対応するため、今回、マイコン技術とアナログ技術を駆使し、従来PWMコントローラと外付け回路で行っ ていた電流検出をDriver-MOSFET集積パワーデバイス側に電流検出回路を内蔵し、VRコントローラがその情報を読み取り制御する方式を開発しま した。
そして、マイコンベースのデジタル・インタフェースVRコントローラ「R2A30521NP」を業界で初めて製品化しました。
「R2A30521NP」は、CPUや上位システムとはシリアルインタフェースによりパワー情報やシステムの状態を相互交換し合い、この情報を元に動作モードを切り替える専用クロックによって、パワーデバイスを逐一最適な動作モードに制御します。また、マイコンベースのVRコントローラの特長を活かし、動作周波数や保護機能の設定値などの各種パラメータをソフトウェアにより変更可能です。 パッケージは汎用性の高い小型面実装のQFN64ピン(8mm x 8mm x 0.95mm, 0.5mmピッチ)を用意しました。
そしてパワー部では、従来のDriver-MOSFET集積パワーデバイスに電流検出回路やPWM制御回路などの各種機能を搭載したインテリジェントDriver-MOSFET集積パワーデバイス「R2J20759NP」を製品化しました。 本製品は、パッケージは従来のDriver-MOSFET集積パワーデバイスで量産実績を積んだQFN40ピン(6mm x 6mm x 0.95mm, 0.5mmピッチ)を採用しました。 パワーデバイスに電流検出回路とPWM制御回路を搭載することでセットの基板上には外来ノイズに敏感な電流検出用配線とPWM制御信号配線が一切不要となり、VR電源の回路設計、および基板レイアウト設計が容易になります。
本システムソリューションの主な特長は以下の通りです。
(1)当社比約40%の実装面積削減により、システムの小型化に貢献
従来技術ではインダクタンスの直列抵抗を使って出力電流を検出しているため、基板上には1相当たり2本ずつの電流検出用配線が必要でした。これに比べて、本システムでは「R2J20759NP」自体が独自の電流検出回路を内蔵しており、基板上の電流検出用配線やノイズ除去用フィルタなどが不要です。また、「R2J20759NP」はQFN40の小型パッケージで1相当たり最大40Aまで供給できます。本システムは、PWM制御信号配線や電流検出用配線が必要な従来システムに比べ、当社比で約40%実装面積を削減できます。
(2)低スタンバイ電流により、バッテリの長寿命化やスタンバイ時の情報更新取得機能に対応可能
次世代ノートブックPCでは、タブレットPCや携帯電話と同様にスタンバイ時の情報更新取得機能が要求され、これを実現するためには、スタンバイ時の消費電力を極限まで低減する必要があります。ルネサスが提案するVRコントローラ「R2A30521NP」は、超低消費電流モードを搭載した当社マイコン「RL78」と同じアーキテクチャを採用しており、「R2J20759NP」との連携により、VR電源全体の消費電力は、スタンバイモード時に約50mW、超スタンバイモード時には約0.8mWまで低減可能です。
(3)様々な電源構成に対応可能なスケーラブル電源により、ユーザ機種のラインアップ容易化に貢献
電源ループ(パワーレール)は最大2ループ、相数は最大8相まで変更可能です。これによりノートブックPCなどの10Wクラスからサーバやハイエンド・デスクトップPCなどの100Wクラスの電源まで幅広い用途に展開可能です。今後は更に使い勝手、性能を向上するためにパッケージや機能・特性など、市場ニーズに対応した品揃えを図ります。
これらの特長に加え、一般的に、基板上の電流検出用配線はパワーMOSFETのスイッチング時に発生するスイッチングノイズなどの外来ノイズの影響を受け易いので、基板レイアウト設計時には注意が必要ですが、電流検出用配線不要の本システムではノイズ耐量も大幅に向上します。 また、インダクタンスの直列抵抗により電流検出する方式では、外付けの電流検出回路の設定値によってはモード切替え時の誤動作や検出電流のアンバランスなどが懸念されますが、本システムでは内蔵パワーMOSFETのドレイン電流を直接検出可能なため、このような問題を回避できます。
また、電源システムに欠かせない過電流などの各種保護機能をハードウェアとソフトウェアで独立に2段階設定することができます。 例えば、定常状態のリミット値と突発的かつ壊滅的な異常モードを想定したリミット値を独立に設定することにより、安全かつ実用的で使い勝手の良い電源設計が可能です。 ソフトウェアで設定する保護機能は、保護機能作動後の挙動をラッチ停止型、自己復帰型から選択可能です。 また、VRコントローラ「R2A30521NP」はFlashメモリを内蔵しており、保護機能の作動を検出して自動的にイベント情報をFlashメモリに格納するイベント・ログ機能に対応しています。 このログデータは、I2Cなどのシリアルインタフェースを使って読み込むことが可能ですので、セットのメンテナンスや保護回路の履歴チェックなどに幅広く活用できます。
新製品のサンプル価格は、「R2A30521NP」が1個あたり290円、「R2J20759NP」が1個あたり210円となっております。
新製品の主な仕様は、別紙をご参照下さい。
以 上
(注)Driver-MOSFET集積パワーデバイス:「integrated Driver-MOSFET (DrMOS)」は、インテル コーポレーションが提唱するパッケージ製品規格であり、CPU等の電源に必要な2種類のパワーMOSFETとこれらを駆動するドライバIC(1個)を1パッケージに集積したものです。 今回の当社新製品では、このDrMOSに電流検出回路とPWMコントローラを内蔵した製品をインテリジェントDriver-MOSFET集積パワーデバイスと記載しています。MOSFETはMetal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor (金属酸化膜半導体 電界効果トランジスタ)の略。
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