2012年12月10日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長 赤尾 泰、以下当社)は、本年7月3日及び9月28日付で公表いたしました「強靭な収益構造の構築に向けた諸施策の方向性について」、「強靭な収益構造の構築に向けた諸施策の進捗について」に記載のとおり、収益基盤及び財務基盤強化のための諸施策を推進しています。

 当社は収益基盤の強化を目指し、2010年4月1日付の事業統合以降、統合効果としてワールドワイドで圧倒的なトップシェアを確立したマイコンを柱に事業ポートフォリオの最適化や生産構造対策を推進し、2年間で約20%の固定費削減を実現する等、各種施策を着実に実行してまいりました。しかし、昨年の東日本大震災や世界的な経済不安の影響を踏まえ、世界経済や日本市場の急激な環境変化に対応するためには更なる施策が必要であると考え、本年7月3日に公表いたしました早期退職優遇制度の実施と国内生産拠点の大幅な再編を柱とする事業・生産構造対策を進めています。早期退職優遇制度の実施につきましては、本年10月16日に公表いたしましたとおり、7,446名の応募者があり、同年10月31日をもって全員退職いたしました。また、国内生産拠点の再編につきましては、本年10月12日に公表いたしましたとおり、ルネサスハイコンポーネンツ(青森工場)等をアオイ電子株式会社へ譲渡することについて合意する等、計画どおりに進捗しています。当社は、今後も不断の努力を続け、筋肉質な組織・運営体制の構築に努めるとともに、現経営体制の責任の下で、より一層の競争力強化に向け、人員構成の最適化等の更なる合理化を推進していく予定です。

 また、財務基盤の強化につきましては、本年9月28日に公表いたしましたとおり、当社の大株主及び主要取引銀行から計970億円の新規資金調達を行った他、主要取引銀行をアレンジャーとして、長期安定資金確保のため、短期借入金を長期化する総額1,611億円のシンジケートローン契約を締結する等、足元の構造対策を確実に実行するために必要となる当面の資金を確保いたしました。

 更に、本日付で公表いたしました「第三者割当により発行される株式の募集並びに主要株主、主要株主である筆頭株主、親会社及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」に記載のとおり、世界経済や日本市場の急激な環境変化に耐えられる財務基盤を確立し、業績の回復に向けた重点分野への成長投資を行うために、株式会社産業革新機構、トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、株式会社ケーヒン、株式会社デンソー、キヤノン株式会社、株式会社ニコン、パナソニック株式会社及び株式会社安川電機を割当先とする第三者割当の方法により、総額1,500億円の株式の募集(以下、「本第三者割当増資」)を行うことといたしました。募集の詳細につきましては、本日付「第三者割当により発行される株式の募集並びに主要株主、主要株主である筆頭株主、親会社及びその他の関係会社の異動に関するお知らせ」をご参照下さい。

 電子機器や社会インフラの急速なネットワーク化により訪れるスマート社会では、これまでマイコンが主に使われてきた制御機器と、SoCが主に使われてきたIT機器が急速に融合しており、マイコンを軸にした新たな制御機器市場の拡大が期待されます。先進国と新興国で同時に進むこうした変化は、半導体産業にとって非常に大きな新市場を拓くものとなります。当社は、収益基盤及び財務基盤の強化策により、こうした市場変化に対応し、顧客にとって付加価値の高いキットソリューションを構築するために、当社の強みであるマイコンとのキットソリューションに必要不可欠なアナログ&パワー半導体を更に強化するとともに、SoCの競争力の向上に努めてまいります。また、このキットソリューションに加え、アプリケーションごとに共通して使用できるIPやOS等のソフトウェアをプラットフォームとして提供し、顧客における開発期間の短縮やコスト競争力、生産性の向上に貢献し、新市場での成長を実現してまいります。

 今回、本第三者割当増資により調達する資金につきましては、当社の目指すスマート社会での成長を実現するため、下表に示す5つの具体的な成長投資に充当します。これにより、強化分野における売上成長を確実にすると共に安定的に収益を確保し、企業価値及び株主価値の向上に向けて活用してまいります。

<本第三者割当増資により調達した資金の使途>

  具体的な使途 金額(百万円) 支出予定時期
マイコンの先端プロセス開発及び開発基盤の標準化に係る投資 40,000 平成25年6月~平成29年3月
生産(試作・量産)に係る設備投資 20,000 平成25年6月~平成29年3月
自動車向け半導体におけるソリューション投資 40,000 平成25年6月~平成30年3月
産業向け半導体におけるソリューション投資 40,000 平成25年6月~平成29年3月
経営基盤再構築のための開発投資 10,000 平成25年6月~平成28年3月

(1)コアコンピタンスの強化

コアコンピタンスの強化として、まず上記表中①にあるマイコンの28nm先端プロセス開発及び開発基盤の標準化に係る投資を行い、マイコン市場の世界No.1プレーヤーとして、他社の追随を許さない圧倒的なポジションの確保を図ります。また、上記表中②の生産(試作・量産)に係る設備投資として、既存の量産中プロセスの収益性向上や開発済み先端プロセスの競争力強化のための設備投資に加え、アナログ製品の微細化や大口径化のための設備投資を行い、製品競争力を強化してまいります。

(2)ソリューション提案力の強化

上記表中の③及び④の自動車向け、産業向け半導体におけるソリューション投資につきましては、既に世界で圧倒的なNo.1シェアを有する当社のマイコンを軸に、両市場の顧客へキットソリューションとして提案する上で不可欠なアナログ&パワー半導体の技術力強化や、ラインアップ拡充のためのM&A又は協業を推進します。加えてソリューション提案力の更なる強化として、組み込みOSメーカーやIPベンダのM&A又は協業、新興国における独立系デザインハウスとの協業又はM&Aも推進します。そして、自動車分野におけるHEV/EVや自動車情報端末、産業分野におけるスマートグリッド、また、先述した電子機器や社会インフラのネットワーク化の進展に伴う新たな制御機器の急伸といったスマート社会の到来により、成長が見込まれる半導体市場において、当社の事業を拡大させてまいります。

(3)急激な市場変化に対する耐性強化

上記表中の⑤の経営基盤再構築のための開発投資につきましては、市場の急激な変化に即応できる意思決定のスピードアップを目的とした事業評価システムの改善や、生産設備の耐震強化、マルチファブ化等、顧客に当社製品を安心してご使用いただくためのBCP(事業継続計画)の強化、拡充を図ってまいります。

当社は、世界の厳しい競争で勝ち抜くためのこれらの成長投資により、早急な収益改善や他社の追随を許さないコアコンピタンスの強化を図ってまいります。また、中長期的にはプラットフォーム・ビジネスを志向し、顧客へのソリューション提案力の強化、顧客システムの最適化を実現することで、強化分野における売上成長、将来にわたる収益性の向上、ひいては当社の企業価値及び株主価値の向上を図ってまいります。

企業価値向上に向けた成長戦略について(2.53MB)

以 上


ニュースリリースに掲載されている情報(製品価格、仕様等を含む)は、発表日現在の情報です。 その後予告なしに変更されることがございますので、あらかじめご承知ください。

この記事をシェアする