ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰)はこのたび、フラッシュメモリおよび2個の32ビットCPUを内蔵する32ビット・デュアルコア・マイコンでは、世界最高クラスの性能となる1024DMIPS(Dhrystone (注1) MIPS [Million Instructions Per Second]:ドライストーンミップス、200メガヘルツ(MHz)動作時)を実現する2品種を製品化し、「V850E2/MN4」の名称で、本日よりサンプル出荷を開始いたします。
新製品は、2つのCPUと両方のCPUに対応する64キロバイト(KB)のRAM、2メガバイト(MB)のフラッシュメモリを外部接続端子数304ピンのFBGA(Fine pitch Ball grid array)パッケージに封入したマイコンで、(1)32ビットCPU「V850E2M」2個を内蔵、(2)2MBの大容量・高速フラッシュメモリを内蔵、(3)従来品に対し、CAN、USB、イーサネットといった通信機能を追加およびタイマとシリアル・インタフェースのチャネル数を強化、などの特長を有しております。
このほか、1MBのフラッシュメモリおよびV850E2Mを1個内蔵したマイコン2品種も製品化しているため、ニーズに応じて選択することができます。
新製品のサンプル価格は、最上位品種が3,500円/個となっております。また量産開始時期は2011年秋を予定しており、量産規模は2012年度に4品種合計で年間100万個を計画しております。
昨今、サーボドライバやインバータなどのFA機器においては、工場の生産性を高めるために生産システム全体の高精度化、高速化、複雑化が進展していることから、マイコンにはよりいっそうの高性能化が求められています。一方、省エネに対する意識の高まりから小型化、省電力化も重視されています。
また、FA機器をはじめネットワークに接続可能なテレビや冷蔵庫などの家電製品、デジタルインターホンや火災受信機などの住宅設備機器においては、機器間の高速通信が求められており、その通信方法も、従来のシリアル・インタフェースに加え、最近ではCANやUSB、イーサネットなど多岐にわたってきています。新製品はこのような市場ニーズに応えるために製品化されたものです。
新製品の主な特長は以下の通りです。
1. フラッシュメモリ内蔵マイコンとして世界最高クラスの性能となるデュアルコア・32ビットCPUを内蔵
従来のCPU「V850E2」の命令処理方式であるパイプライン構成を改良することで命令の並列実行能力を強化し、同一動作周波数時に従来比1.4倍となる2.56DMIPS/MHzを実現したCPUコア、V850E2Mを開発。このCPUコアを2つ内蔵することにより、200MHz動作時1024DMIPSの世界最高クラスの性能かつ、シングルコア構成時比60%となる0.88ミリワット(mW)/DMIPSの低消費電力を実現している。
また、V850E2M CPUコアは単精度/倍精度の浮動小数点演算に対応したFPU(Floating point number Processing Unit:浮動小数点演算装置)を搭載することで、高速データ処理等が必要とされる情報家電などにも最適となっている。
2. 大容量・高速フラッシュメモリを内蔵
2MBの大容量で、90ナノメートル(nm、ナノは10億分の1)の微細かつ高速なプロセスを採用したフラッシュメモリを内蔵。また、200MHz動作時に1サイクルアクセス可能なフラッシュメモリ専用キャッシュをそれぞれのCPUに搭載することでシステムの高速化に貢献している。
3. 豊富な周辺機能を内蔵
従来品に対し、CAN、USB、イーサネットといった通信機能を追加するとともに、タイマとシリアル・インタフェースのチャネル数も大幅に強化。豊富な周辺機能を内蔵することで、部品点数や実装面積の削減によるシステムの小型化、低コスト化に貢献している。さらに、ASICや外部メモリに対する処理効率の向上のために独立した外部バスを2系統搭載することで、デュアルコアによるバスアクセスの遅延を解消し、高性能化を実現できる。
4. 充実したマルチコア向けソフトウエア開発環境の提供
当社は、各CPUで実行する処理があらかじめ決まっているフラッシュメモリ内蔵マイコンに適したAMP(Asymmetric Multiprocessing:非対称型マルチプロセシング)に対応するマルチコアの開発環境の提供を開始する。また当社は、OS、統合開発環境「CubeSuite」エミュレータ等、既存の当社製ツールを順次マルチコアに対応させるほか、今後は、USBやイーサネット等各種通信インタフェースのドライバのサンプルコードも当社から無償提供する予定となっている。
さらに、組み込みシステム用の設計自動化ソリューション提供企業であるCriticalBlue(本社:英国エディンバラ市、CEO:デイヴィッド・スチュアート氏)より、マルチコアの効果をソース・コードの変更や再シミュレーションなしで解析できる、新製品に対応したマルチコア向け動的解析ツール「Prism(プリズム、注2)」も本日より提供される。
これらの各種開発環境により、短期間で容易にソフトウエアの開発が可能になる。
新製品は、処理性能を向上させた新しいCPUコアを1個または2個内蔵した品種展開を行うことで、ニーズに応じた選択を可能にしています。
ルネサスは、新製品を、FA機器や各種プリンタ、情報家電、住宅設備等の競争力向上に貢献するものと位置づけ、今後もマルチコア製品の拡充を推進するとともに、積極的な拡販活動を展開してまいります。
新製品の主な仕様は別紙をご参照下さい。
以 上
(注1)Dhrystoneとは、コンピュータの演算性能を評価するプログラムのこと。本製品の1024DMIPSという性能値は、測定基準Dhrystone2.1で測定したもので、ひとつのCPUコア性能を2倍した値です。
(注2)Prismは、ソフトウエアをマルチコア・アーキテクチャに最適化して実装するための解析・検証環境です。Prismは、ソフトウエア開発者が行うアプリケーションの並列化を、コード変更無しに仮想的なタスク分割、各コアへのアサイン、データ依存提示機能で支援し、高性能・高品質なマルチコア・ソフトウエアの開発効率を向上させます。詳しい情報は以下のWEBサイトをご参照ください。
http://www.criticalblue.com/criticalblue_products/prism.html
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