~スマートフォンや、ヘルスケアなど民生機器向けに、新「NFC方式」による給電範囲拡大と小型化、および主要製品のキット提供によるシステム開発期間短縮に貢献~
2012年9月12日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)は、このたび、電源ケーブルを使わずに無線で送受電するワイヤレス給電向けに、使い勝手を向上すべく、近距離無線通信のNFC (注1)を用いたNFC方式ワイヤレス給電システム (注2)を開発しました。そして、システム品を構築する上で不可欠なNFCマイコン「RF20」、送電IC「R2A45801」および受電IC「R2A45701」を製品化し、2012年11月よりサンプル出荷すると共に、周辺の汎用品(パワー半導体等)まで含めたトータルキットをシステムソリューションとして提供いたします。

 ワイヤレス給電は、スマートフォンをはじめ今後ヘルスケアなどの民生機器や産業用途での普及が期待されており、今回開発したNFC方式では(1)国内ほとんどのスマートフォンに内蔵されているNFCのアンテナを流用するため、1つのアンテナで送受電が可能となり、端末側の受電システムの小型化/薄型化が図れる。(2)給電範囲を10cm程度広くとることが可能なため位置ずれに強く、使い勝手を向上できる。(3)相互通信が可能なため、より安全に充電できる、等の特長があります。加えて、(4)新製品のNFCマイコン「RF20」は給電用途に加え、携帯端末で使用される非接触ICカード用途にも1製品で対応可能というメリットがあります。そして、本ワイヤレス給電システムを構成する主要部品をトータルキットとして提供することで、携帯機器市場に対しタイムリーで斬新なシステム開発に貢献できるソリューションを提供致します。

背景

 ワイヤレス給電は、携帯機器の充電時にわざわざ電源ケーブルをつなげるといった煩わしさを無くし、また機器本体側に充電用コネクタを設置する必要性が無いため接触不良等の不具合を減らすことが可能なことから、スマートフォン等での採用が始まっています。しかし、既存のシステムでは、受電側アンテナと送電側アンテナを組み合わせたシステムが一般的ですが、受電側の携帯機器にはアンテナ追加によりスペースが増加するうえ、両アンテナの位置ずれによって電力伝送効率が落ちるため、システム設計上で制約を受けてしまいます。また、給電範囲が狭くアンテナ位置が合わないと充電ができない事もあるため、位置合わせをする必要があり、デザイン設計の自由度が失われる課題がありました。

 このためルネサスでは、既存のNFCマイコンの技術を活用し、ワイヤレス給電にもNFCによる通信を活用することによりアンテナ1つで送受電が行え、信頼性も向上可能なNFC方式ワイヤレス給電システムを開発しました。そして本システムを容易に携帯機器等に組み込むことができるよう、NFCマイコンと当社の実績ある電源技術をベースとした受電ICおよび送電ICを製品化し、システムの主要部品をトータルキットとして提供するものです。

製品について

 NFC方式ワイヤレス給電システムソリューションでは、単に、通信をワイヤレス、電力をワイヤレスにするのではなく、NFCとワイヤレス給電の融合により、新しく、使い勝手の良いワイヤレスコネクティビティを創出できます。主な特長は以下の通りです。

(1)NFC方式によりアンテナ1つで送受電を実現

スマートフォンに内蔵されているNFCのアンテナを流用するため、NFC方式ではアンテナ1つで送受電可能です。携帯端末には受電用のアンテナを新規追加する必要がないため、機器の小型化や薄型化に貢献します。

(2)NFC方式により給電範囲の拡大を実現

NFCを使った独自技術の採用により、給電範囲を10cm程度広くとることが可能となり、位置ずれに強いワイヤレス給電システムを提供できます。このため、従来事実上限定されていた携帯端末の受電位置を自由にできることから、端末のデザイン性向上にも貢献できます。

(3)安全性の高いワイヤレス給電システム構築に貢献

NFCにより相互通信が可能なため、給電開始前に給電可能機器かの認証(判断)が可能となり、安全にワイヤレス給電を行えます。

(4)NFCマイコン「RF20」1つでワイヤレス給電と従来の非接触ICカード等の2つの用途に対応

新製品の「RF20」はNFC標準規格に準拠しており、ワイヤレス給電のみでなく、 従来の非接触ICカード用途等にも使用が可能です。このため、携帯端末のさらなる小型化に貢献できます。

 なお当社では、本ソリューションをNFCフォーラム(注2)のWireless Charging Task Forceにて提案するなど、NFCによるワイヤレス給電システム普及活動に取り組んでいきます。

 また、新製品のNFCマイコン「RF20」の量産は2013年1月より開始し、2013年6月には月産100万個を生産予定です。そして、送電IC「R2A45801」および受電IC「R2A45701」の量産は、共に2013年3月から行い、2013年12月にはそれぞれ月産100万個を生産予定です。サンプル価格は、「RF20」が500円/個、「R2A45801」が500円/個、「R2A45701」が500円/個、となっております。

 3製品の概要と主な特長は下記の通りです。

NFCコントローラ「RF20」

 ワイヤレス給電の用途とは別に、NFCは、従来の金融決済、交通システム、チケッティングに加え、アミューズメント、ヘルスケア等の様々なアプリケーションに展開され始めており、特にNFC機能を備えたAndroidTM OS搭載スマートフォンの普及が急拡大しています。そして、NFC機能を容易に実装可能なソリューション提供が求められています。このため、ルネサスでは今回、AndroidTMOS搭載スマートフォンに対応し、NFC国際標準規格対応NFCマイコン「RF20」を製品化しました。

(1)ターンキーソリューション提供

 チップにはスマートフォンなどに必要な機能をすべて盛り込んだファームウエアを各種NFC規格互換性検証も実施の上、ホスト側ミドルウェアと共に提供します。これにより、AndroidTMデバイスへ速やかにかつ容易にNFC機能を実装できます。

(2)各種標準インタフェースサポート

金融決済等に必要な外付けセキュアエレメントとの通信インタフェースとしてSWP(注3)を搭載(ETSI TS 102 613準拠)、SIMカード(注4)との接続が可能です。また、ホストコントローラとのインタフェースとして、I2C(注5)、UART(注6)をサポートしております。これにより異なるホストインタフェース構成に柔軟に対応が可能です。

ワイヤレス給電用送電IC「R2A45801」と受電IC「R2A45701」

 ワイヤレス給電システムを構築する上に必要な主要アナログ部をそれぞれ1チップに集積しています。

(1)送電IC「R2A45801」の特長

 「R2A45801」は、ワイヤレス送電のドライバ回路に必要な3本(チャネル)の電源出力を有し、更に安全制御の充実のため、サーマルシャットダウンやFET温度検出・システム温度検出機能を内蔵しております。また、外付けにMOSFET「RJK1028」を組み合わせることで高効率な送電システムを構築できます。

(2)受電IC[「R2A45701」の特長

 「R2A45701」は受電側コイルで受電したワイヤレス給電電力の整流後の電圧を、充電制御に必要な所定の電圧に降圧します。そして、電圧や電流のモニタ機能を有すると共にACアダプタ入力、USB電源入力と、ワイヤレス給電以外の外部電源入力も有しております。これら複数の電源入力に対応し、さらに1セルリチウムイオン電池に対しダイレクトに充電を行う充電制御機能を内蔵することで、スタンドアローンでのバッテリ組込み製品へ適用が可能です。

以 上

(注1)NFC:Near Field Communicationの略。NXPセミコンダクターズ社とソニー株式会社が開発した13.56MHz帯を利用する近距離無線通信の国際標準規格。NFCの通信方式は非接触ICカードでも用いられています。

(注2)NFCフォーラム:NFC標準仕様の開発やNFC製品普及活動を行っている業界団体。当社はNFCフォーラムのスポンサーメンバーとしてNFC技術普及活動に貢献しています。

(注3)SWP: Single wire protocolの略です。

(注4)SIMカード:Subscriber Identity Moduleの略称。携帯電話会社が発行する電話番号などの契約者情報を記録したICカード。

(注5)I2C:Inter-Integrated Circuitの略です。

(注6)UART:Universal asynchronous receiver/transmitterの略です。

*AndroidはGoogle Inc.の商標または登録商標です。その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。

 

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