ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)は、このたび、ボディ制御分野向けに、システムの低消費電力化と高機能化に貢献する32ビットマイコン「V850E2/Fx4-L」19品種を製品化し、本日より順次サンプル出荷を開始します。
新製品は、車載用V850ファミリのボディ制御向け「Fシリーズ」での4世代目として、内蔵フラッシュメモリ容量256KB~1.5MB、端子数64~176ピンのパッケージを有し、BCM(Body Control Module)、オートエアコン、ライトモジュール等、広範囲な車載ボディ制御用途に最適な製品を提供いたします。
新製品は、当社従来製品である「V850ES/Fx3」に対し(1)動作電流を約1/3に低減しながらもCPUの最大動作周波数を64MHzに高速化(約1.3倍)。かつ、CPUが動作していない状態ではCPU用の電流をストップする省電力モードを搭載し、システム全体での低消費電力化が図れます。また、(2)内蔵フラッシュメモリ容量の最大サイズを1.5MBに拡張(約1.5倍)、(3)「機能安全」をサポートする豊富な診断機能を搭載。(4)DMA(Direct memory access)(注1)の搭載チャネル数を8チャネル(2倍)とし、ボディ制御電子ユニットの高機能化に貢献します。
量産は2013年初旬から順次開始し、2013年12月には合計で月産150万個を計画しております。
背景
ルネサスは、スマート社会の実現に向け、半導体技術を用いて自動車の省エネルギー、高効率化に貢献するソリューションの提供を進めております。そのなか、さらなる低消費電力化や部品点数の削減、スマート社会における自動車へ求められる高機能化(AUTOSAR(注2)規格の採用や車内LAN増加など)、近年、自動車に搭載される電気・電子機器の増加に伴い重要になっている機能安全を実現できるマイコンが求められております。こうしたニーズに対応するため、当社ではボディ制御で実績ある「V850ファミリ」の「V850E2 CPU コア」と、内蔵メモリとして車載市場で実績のある90nm(ナノメートル:10億分の1メートル)プロセスMONOS(注3)構造フラッシュメモリを融合継承し、さらなる低消費電力化を図るとともに、システムの高機能化とトータルコストの低減の要求に応えるべく「V850ファミリ」の車載向け「Fシリーズ」の上位機種における低消費電力版として「V850E2/Fx4-L」を製品化したものです。
製品について
新製品「V850E2/Fx4-L」は、CPUには車載市場で好評の32ビット「V850E2 CPUコア」、内蔵するフラッシュメモリのプロセスには、会社統合効果により低消費電力化に最適なプロセスを選択・発展させたMONOS構造フラッシュメモリの90nmプロセスを採用しました。主な特長は以下の通りです。
(1)処理性能を高めつつ、低消費電力化を実現、システム全体の低消費電力化、ユニットの部品点数削減に貢献
例えば 100ピンパッケージ製品の通常動作時において、動作電流は0.35mA/MHz (CPU周波数 64MHz、当社従来製品「V850ES/Fx3」比約1/3)へ低減する一方、CPU性能は115 DMIPS(注4)(CPU 周波数 64MHz、当社従来製品「V850ES/Fx3」比約1.3倍)を実現します。
また システムの低消費電力化に貢献するために、CPUスタンバイ状態(Deep STOPモード)で、CPUやメモリ(RAM)を動作させずに複数のディジタル入力ポートの入力レベルの変化を検出して、変化検出時にすばやくウェイクアップ(RUNモードへ移行)する機能を内蔵しました。また、データ・フラッシュ(32Kバイト)内蔵により外付け不揮発性メモリ(EEPROM等)を削減できますので、ボディ制御電子ユニットの部品点数削減に貢献します。
(2)内蔵フラッシュメモリ容量の最大サイズを1.5Mバイトへ増加し、システムの高機能化AUTOSAR規格の採用等への対応を強化
AUTOSAR規格の採用等、システムの高機能化に対応するため、内蔵フラッシュメモリ容量の最大サイズを当社従来製品「V850ES/Fx3」の1M バイトから1.5M バイトへ増加し、システムの高機能化に必要なフラッシュメモリ容量の増加へ対応。
ユーザにおけるAUTOSAR規格の採用を容易にするため、最新の「AUTOSAR」規格に対応したMCAL(注5)の準備も行う予定です。
(3)「機能安全」をサポートする診断機能
「V850E2/Fx4-L」では、ユーザの「機能安全」の実現を支援するために、信頼済みでないプログラムによるシステム・レジスタの破壊を防ぐシステム・レジスタ保護機能、ユーザ・プログラムに許可されていない命令の実行または、データ操作を検出し、不正な操作を防ぐメモリ保護機能、A/Dコンバータ自己診断機能等を搭載しています。CPUコアの故障検出のためのセルフテスト・プログラムも提供する予定です。製品の異常動作を検知し、更に回避することで、システムの安全性に貢献します。
(4)DMAの搭載チャネル数を8チャネルに倍増し、ボディ制御電子ユニットの高機能化に対応
新製品は、当社従来製品「V850ES/Fx3」に比べ車内LAN対応機能を強化(LINマスタコントローラの追加)したことに伴い、製品内で取り扱うデータ量が増加することに対応するため、DMAの搭載チャネル数を8チャネルに倍増致しました。
サンプル価格は製品により異なりますが、例えば100ピンパッケージで、内蔵フラッシュメモリが1Mバイトの製品は1500円/個となっております。
ルネサスは「V850E2/Fx4-L」の開発環境として、統合開発環境「CubeSuite+」とオンチップデバッギングエミュレータ「E1」、フラッシュメモリプログラマを提供いたします。
新製品の仕様は、別紙をご参照下さい。
なお、当社は本年2月28日から3月1日まで、独ニュルンベルクで開催される「Embedded World 2012」にて新製品を出展いたします。
以 上
(注1)DMA(Direct memory access):CPUを経由せずにマイコン内蔵の周辺機能とメモリ間でデータをやり取りするデータ転送方式の1つ。
(注2)AUTOSAR はAutomotive Open System Architectureの略。
(注3)MONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon):ルネサスでは、EEPROM製品に20年以上適用しているMONOS技術をマイコン内蔵用のフラッシュメモリに適用しています。 90nm(ナノメートル:10億分の1メートル)プロセスMONOS構造フラッシュメモリは、「RXファミリ」や「SuperHファミリ」に採用して高い市場実績があります。
(注4)DMIPS: Dhrystone MIPS(Million Instructions Per Second)とは、コンピュータの演算性能を評価するプログラムDhrystoneによる性能測定値のこと。
(注5)MCAL(Microcontroller Abstraction Layer):マイコン内蔵の周辺機能や、メモリにマッピングされた 外部デバイスへ直接アクセスするソフトウェアモジュール。
*CAN(Controller Area Network)は、独Robert Bosch GmbHが提唱している車載用のネットワーク仕様です。LIN(Local Interconnect Network)は、シングルマスタの車載用ネットワーク仕様です。 その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。
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