ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長:赤尾 泰、以下ルネサス)は、このたび、エコ社会での電力などエネルギーの見える化、定量評価に欠かせないスマートメータや照明・家電機器の通信用途向けに、低周波数帯(10~450KHz帯)で、業界最高速レベルのデータ通信を実現した電力線通信(PLC: Power Line Communication) モデム内蔵16ビットマイコン「M16C/6S1グループ」を製品化し、2011年3月よりサンプル出荷を開始します。
新製品は、ネットワークを介したガス、水道、電気情報や照明などの通信に対応するため(1)従来の「M16C/6S」と比べ約60倍に高速化し、業界最高速レベルとなる最大500Kビット/秒のデータ通信を実現し、(2)256Kバイトのフラッシュメモリをはじめとする大容量メモリを内蔵して機器のプログラム容量増加に対応いたします。また、(3)従来の「M16C/6S」では外付けしていたアナログ周辺回路を取り込んで1チップ化することにより、システムの省スペース化を実現します。
新製品のサンプル価格は、1個あたり1,500円となっており、量産は2011年10月から開始し、2012年10月には月産20万個を計画しております。
最近、スマートグリッド実現の核となるスマートメータには、従来の自動検針機能(AMR: Automated Meter Reading)に加え、照明・家電機器等のピーク電力を抑制する電力制御(AMI: Advanced Metering Infrastructure)の実現が求められており、内蔵する通信制御機能の高性能化要求が高まってきています。スマートメータの通信機能のひとつとして、新たに配線を敷設することなく、従来の電気配線をそのまま使用できる電力線通信が注目されております。そして、高速データ通信の要求および機器の小型化やシステムコスト低減が強く求められています。
当社では既に電力線通信モデムとマイコンを1チップ化して小型化した「M16C/6Sグループ」を量産中ですが、今回、大幅な高速化を実現すると共に外付け部品の内蔵によりシステムの更なる省スペース化に貢献する「M16C/6S1グループ」を製品化したものです。
新製品の主な特長は以下のとおりです。
(1)低周波数帯(10~450KHz帯)で業界最高速レベルのデータ転送を実現
本製品は、電力線通信で実績あるYitran Communications社が新規開発したモデムコア「IT900 (DCSK-Turboスペクトラム拡散変調方式)」を内蔵することにより、低周波数帯(10~450KHz帯)でのデータ通信を当社従来の「M16C/6S」から約60倍に高速化し、次の通り業界最高速レベルを実現しました。
- 米国連邦通信委員会[FCC(注1)]およびARIB(注2)が定めた周波数帯域におけるデータ通信速度の場合、最大500Kビット/秒
- CENELEC-A(注3)の場合、最大150Kビット/秒
- FCCおよびARIBの場合の最大MACペイロード速度 (通信パケット長:データ1760バイト)、300Kビット/秒
このため、スマートメータによる照明・家電機器等のピーク電力を抑制する電力制御機能搭載のスマートメータ(AMI)などに適用可能です。
また本製品は電力線通信モデムコアとして、従来方式のDCSK(Differential Code Shift Keying)コア「IT700」と新方式「IT900」の両方を搭載しており、従来の「M16C/6S」との通信の互換性を備えております。
(2)最大256Kバイトのフラッシュメモリなど、大容量メモリを内蔵
新製品は、従来の「M16C/6S」と比べ約3倍となる256Kバイトまでのフラッシュメモリを搭載しており、ネットワークの拡大化(AMI対応等)に伴うアプリケーションプログラム増加へ対応可能です。また、データ格納用のメモリであるデータフラッシュ(注4)を8Kバイト内蔵しており、外付けのEEPROMを削減可能です。加えて、RAMも当社従来製品よりも約1.3倍に大容量化しています。
(3)アナログ周辺回路を内蔵
従来の「M16C/6S」では外付けしていたドライバーアンプ回路、およびバンドパスフィルタなどのアナログ周辺回路を1チップに内蔵しました。これにより、当社比で約20%基板の実装面積を削減可能となり、システムの省スペース化、システムコストの低減に貢献します。
「M16C/6S1グループ」は、フラッシュメモリ/RAMサイズ、温度仕様の組み合わせとして4品種を揃えております。このほかに、評価環境として、DLL(Data Link Layer)ソフトウエア、評価ボードなどを準備しております。
新製品の仕様は別紙をご参照下さい。
以 上
(注1)FCC(Federal Communications Commission)は米国連邦通信委員会の略称で、アメリカ合衆国内の各州の通信規制や各国との国際的な通信を規制する役割を担っており、アメリカ合衆国の通信や放送の規定や認可を行う政府組織。
(注2)ARIB(Association of Radio Industries and Business)は、総務大臣指定の「電波有効利用促進センター」及び「指定周波数変更対策機関」として、通信・放送分野における電波の利用に関する調査、研究及び開発や電波利用システムに関する標準規格の策定などの事業を行っている。
(注3)CENELEC(Comite Europeen de Normalisation Electrotechnique)は、ヨーロッパ圏の電機分野の標準化を行っている組織の名称。ヨーロッパにおける電気・電子技術分野の統一規格であるEN(European Norm)の制定を担当している。
(注4)データフラッシュは、通常外付けのEEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)などに格納しているデータを格納するための当社独自の内蔵フラッシュメモリ。
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