ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下ルネサス)は、このたび、高精度かつ堅牢でコスト効率が極めて高いモータの角度センサである誘導型位置センサ (インダクティブポジションセンサ:IPS)ICとして、3つの新製品を発売、量産を開始しました。新製品は、ロボットやファクトリオートメーションで使われる高価な磁気/光学式エンコーダの置き換えに最適な高精度用途の「RAA2P3226」、産業モータやアクチュエータなど高速モータ制御用の「RAA2P3200」、電動工具や医療機器など低速モータ位置検出用の「RAA2P4200」です。新製品により、産業、ロボット、医療システムなどの幅広いアプリケーションに誘導型位置センサを活用できるようになります。
Webベースの「誘導型位置センサ コイル最適化ツール」を提供
誘導型位置センサは、高精度な位置検出ができる上、磁石を使わないため周辺磁場に対する高い耐性を持っています。センシング素子として、可動部に金属ターゲットを組み込み、プリント配線版にコイルパターンをレイアウトしたものを使用するため、設計の柔軟性が高く、小型、軽量な設計が可能で、コストパフォーマンスにも優れています。一方、設計者にとっては、アプリケーションごとに最適なセンシング素子をカスタム設計しなければならない点が、導入に際しての最大の課題の1つでした。
今回、このセンシング素子の設計を容易化するWebベースの「誘導型位置センサ コイル最適化ツール」を提供開始しました。このツールは、コイルレイアウトやシミュレーション、チューニングを自動化することで、オンライン上で試作を繰り返すことができます。このツールを活用すれば、性能を正確に予測できるだけでなく、実際に製造する際の制約も踏まえてコイルレイアウトを最適化できます。これにより、誘導型位置センサの利点を享受しながら、従来比で極めて容易にフルカスタムのセンシング素子を開発できるようになるため、早期に高性能なセンサ開発が可能になります。
新製品について
今回の3製品はいずれも、誤差がフルスケールの0.1%未満という高精度でターゲット位置を検出します。RAA2P3226とRAA2P3200の2製品は、最大回転数600k rpm(電気角)まで対応し、伝搬遅延は100ns未満に抑えているため、高速モータアプリケーションに適しています。上位製品のRAA2P3226は、最大19ビットの解像度と0.01°の精度を備えた絶対角度検知が可能なデュアルコイルセンシングをサポートし、ロボティクスアプリケーションに求められる高精度のパフォーマンスを実現します。RAA2P3200は高速モータの制御用に最適化されています。RAA2P4200は医療機器や電動工具などの低速アプリケーションを対象としています。3製品全てに自動キャリブレーション機能とリニアライズ機能を搭載しており、スムーズにシステムレベルの性能向上が可能です。
車載用新製品の発売予定について
この3製品に加え、2025年第4半期中には車載用IPSのRAA2P452xとRAA2P4500も発売する予定です。デュアルチャネルのRAA2P452xをルネサスのマイコンと組み合わせればASIL Dに準拠した機能安全設計をサポート可能です。この車載用製品により、モータ制御の精度を損なうことなく、低速のボディ制御、シャシー制御をコスト効率よく実現できるようになります。
ルネサスのセンサ事業部のVice PresidentであるLeopold Beerは次のように述べています。「当社の新しいWebベースのコイル設計ツールは誘導型位置センシングの常識を塗り替えます。これまで、誘導型位置センサの開発では、技術的専門知識をチップのサプライヤに頼るしかありませんでした。しかし、この直感的なツールを活用すれば、開発者自身がセンシング素子をフルカスタマイズし、自動的に微調整してシステムレベルで最高精度と堅牢性を実現できます。これによってハードルが大幅に下がるため、専門知識の有無にかかわらず、より多くのお客様が自信を持って誘導型位置センシングを活用できるようになります。」
新製品の主な特長
RAA2P3226
- 多関節ロボット、物流/産業用ロボット、協働ロボット向けデュアルコイルIPS
- 出力インタフェース:UART、ABI、Step-Dir、I²C
- 最大19ビットの解像度、0.01°の絶対精度(バーニア内蔵)
- エアギャップ変動を補正する自動ゲインコントロール(AGC)
- 16ポイントリニアライズ機能で精度を向上
- 起動時のTrue Power-On(TPO)位置情報
- 回転軸上・軸外、円弧、リニアセンサへの実装が可能
- 動作温度範囲:-40°C~125°C
- 動作電圧:3.0V~5.5V
RAA2P3200
- モータ整流、電動自転車、産業用ロボット、協働ロボット向けの高速・低レイテンシIPS
- 出力インタフェース:SPI、UART、ABI、UVWまたはStep-Dir
- エアギャップ変動を補正する自動ゲインコントロール(AGC)
- 16ポイントリニアライズ機能で精度を向上
- 回転軸上・軸外、円弧、リニアセンサへの実装が可能
- 動作温度範囲:-40°C~125°C
- 動作電圧:3.0V~5.5V
- 過電圧、逆極性、短絡に対する保護機能
RAA2P4200
- 低速のサービスロボット、電動工具、医療用途向けのシングルコイル設計IPS
- 出力インタフェース:アナログ、PWM、I²C
- エアギャップ変動を補正する自動ゲインコントロール(AGC)
- 16ポイントリニアライズ機能で精度を向上
- 回転軸上・軸外、円弧、リニアセンサへの実装が可能
- 動作温度範囲:-40°C~125°C
- 動作電圧:3.0V~5.5V
- 過電圧、逆極性、短絡に対する保護機能
- ZMID4200デバイスの後継品
ウィニング・コンビネーション
ルネサスは、RAA2P3226と他のデバイスを組み合わせた2つのウィニング・コンビネーション「小型BLDCモータサーボ」と「ターンテーブルシステム」を開発しました。ルネサスのウィニング・コンビネーションは、ルネサス製品を最適に組み合わせてエンジニアによる設計検証を行っているため、ユーザの設計のリスクを低減し、市場投入までの時間を短縮します。他にも、さまざまなアプリケーション向けに400種類以上のウィニング・コンビネーションを提供しています。詳しくは、こちらをご覧ください。renesas.com/win
ルネサスの誘導型位置センサ(IPS)製品について
電磁誘導に基づく非接触位置センシング技術を採用したルネサスのIPS製品は、シンプルな金属ターゲットとデュアル/シングルコイルを用いて、絶対的な回転位置、リニア位置、円弧位置を検出します。このセンサICは、高温(-40~125℃)、ほこり、湿気、機械的振動、電磁干渉にさらされる環境でも、安定した動作を維持できます。さらに、磁気エンコーダや光学式エンコーダとは異なり、浮遊磁場の影響を受けにくく、メンテナンスも不要です。耐久性に優れているため、信頼性と長期的な性能が重要となるモータ駆動装置、アクチュエータ、バルブ、サービスロボットなどに対して、コスト効率の良いセンシングソリューションです。ルネサスの誘導型位置センサ全般については、https://www.renesas.com/IPSをご覧ください。
新製品の詳細は、各製品のwebサイトRAA2P3226、RAA2P3200、RAA2P4200をご覧ください。
新ツールについては、誘導型位置センサ コイル最適化ツールをご覧ください。
以 上
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