ルネサス エレクトロニクス株式会社(以下ルネサス)は、このたび、ルネサス独自のAIアクセラレータ「DRP(動的再構成プロセッサ)-AI」を内蔵したマイクロプロセッサ(MPU)「RZ/Vシリーズ」を拡充し、メインストリーム製品となるミッドレンジの「RZ/V2N」を発表しました。新製品は、ハイエンドのRZ/V2Hと同様、単位電力当たりのAI性能が10 TOPS/Wを誇る最新のAIアクセラレータ「DRP-AI3」を搭載し、ルネサス独自の枝刈り(注1)技術により最大15 TOPSのAI性能を実現しました。RZ/V2Nの追加により、ハイエンドのRZ/V2H(最大80 TOPS)からローエンドのRZ/V2L(0.5 TOPS)までRZ/Vシリーズのラインアップが出揃いました。RZ/V2N の量産と発売は、2025年3月19日から開始します。
新製品は、LSIのパッケージ面積を15mm角とRZ/V2Hより38%小型化しており、実装に必要な面積を縮小させました。また、RZ/Vシリーズの特長を継承し、高いAI性能と低消費電力を両立したことにより、発熱を抑制できることから冷却ファンを省略できるため、組み込み機器の小型化とシステムコストの削減を実現します。これらにより、新製品は商業施設における混雑・滞留解析を行うAIカメラ、生産ラインでの外観検査を行う産業用カメラ、運転者の状態を監視するドライバ・モニタリングシステムなど、幅広いアプリケーションでビジョンAIの導入を容易にします。
2カメラによるダブルアングルの画像処理が可能
RZ/V2NのCPUにはRZ/V2H と同様、Arm® Cortex®-A55を4コアとCortex-M33を1コア搭載し、さらにArm Mali-C55のISP(イメージシグナルプロセッサ)も搭載しました。さらにMIPIカメラインタフェースを2チャンネル搭載したことにより、RZ/V2N は2つのカメラを接続することができ、ダブルアングルの画像を捉えることができます。1つのカメラと比較して、空間認識性能が向上し、人の動線解析や転倒検知などを高精度に実現できます。さらに2つのカメラがそれぞれ異なる場所を撮影することで、例えば駐車場の台数監視とナンバープレート認識などを、1チップで実現できます。
ルネサスのエンベデッドプロセッシング事業部、事業部長のDaryl Khooは次のように述べています。「ルネサスは昨年、次世代ロボティクスをターゲットに、ビジョンAIとリアルタイム制御を実現するハイエンドのRZ/V2Hを発売して以来、DRP-AIアクセラレータが非常に注目されています。同系列でミッドレンジのRZ/V2Nが加わることで、消費電力を抑えたいエンドポイントのビジョンAIなど、幅広いAIアプリケーションに対応できるようになります。お客様が、システム要件やコストに合わせて最適なAI MPUを選択できるようになると期待しています。」
ArmのIoT Line of Business、Senior Vice President兼General ManagerであるPaul Williamson氏は次のように述べています。「スマートシティ、企業、産業など、さまざまな市場におけるビジョンAIアプリケーションは多岐に渡りますが、どの分野でも持続的なパフォーマンスと効率的な処理が求められます。ルネサスが新たに開発したRZ/V2N MPUは、Armコンピューティングプラットフォームの最先端の機能を活用して、次世代のビジョンAIのユースケースに必要なパフォーマンスと効率性を実現します。」
充実した開発環境
ルネサス製評価ボードキットやソフトウェア開発環境に加え、50種類以上のユースケースに対応する各種AIアプリケーションを「AI Applications and AI SDK(GitHub)」にて提供します。これにより、AIに関する深い知見が無いユーザでも、AIアプリケーションを早期に評価・開発できるため、市場投入までの時間を短縮することが可能です。さらに、パートナ企業からRZ/V2Nを搭載したSOM(システムオンモジュール)ボード、SBC(シングルボードコンピュータ)、カメラモジュールなどが順次提供されます。これにより、ユーザはハードウェア設計の開発負荷が軽減され、AIアプリケーション開発に集中できるようになるため、迅速に目的のシステムや製品を開発できます。
AIダッシュボードカメラソリューション
ルネサスは、ウィニング・コンビネーションの一環として、工場、公共施設、商業施設など様々な用途に対応できる「AIダッシュボードカメラ」ソリューションを開発しました。本ソリューションは、RZ/V2NとパワーマネジメントIC、リアルタイムクロックICなどで構成されており、AIカメラシステムのリファレンスとして活用できます。ルネサスのウィニング・コンビネーションは、ルネサス製品を最適に組み合わせてエンジニアによる設計検証を行っているため、ユーザの設計のリスクを低減し、市場投入までの時間を短縮します。詳しくはこちらをご覧ください。https://www.renesas.com/win
なお、ルネサスは、RZ/V2Nのデモを2025年3月11日~13日にドイツのニュルンベルクで開催されるembedded world 2025において、ホール1のルネサスブース(スタンド234)に出展します。
RZ/V2Nの詳細は、こちらをご覧ください。
https://www.renesas.com/rzv2n
以 上
(注1)枝刈り:AIの推論処理の中で計算の一部を省略し、メモリ使用量の削減や実質的な演算性能を向上させる技術
*なお、本製品は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務の成果を一部活用しています。
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