ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:柴田 英利、以下ルネサス)は、このたび、車載AIソフトウェアをクラウドで迅速に開発、評価できる開発環境「AI Workbench」をリリースすることを発表しました。ユーザは、パソコンに開発ツールをインストールしたり、評価ボードを入手することなく、クラウドプラットフォームであるMicrosoft Azureの高性能なコンピューティングリソース等の技術(Azure Compute, IaaS services, Microsoft Entra ID and Azure Security)を活用して、車載AIソフトウェアの開発をすぐに開始することができます。さらに、クラウド上のシミュレーションツールにより、性能評価(デバッグ)や動作検証(テスト)も可能です。
これは、単に開発環境がクラウド上にあるというだけでなく、チップやECUなどハードウェアの無い初期段階からソフトウェアの開発、評価ができる「シフトレフト」を実現するものです。例えば、開発中の第5世代R-Car SoC(System on Chip)向けの、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転をサポートするAIアプリケーション用ソフトウェアの開発も開始することができます。本環境は、ルネサスのスケーラブルなSoCやマイコンを対象に、品種やアプリケーションの種別によらない、単一の環境として提供します。
ルネサスのHPCソフトウェアAI統括部、統括部長のマンダリ カレシーは次のように述べています。「クラウド技術のリーディングプロバイダであるマイクロソフトとの協業により、車載AIエンジニア向けにクラウドベースの仮想開発環境とAIモデルの性能テスト環境を構築できたことを嬉しく思います。今後も、ソフトウェアの継続的なモニタリングや使用状況の分析などの新機能開発も含めて、AI開発環境の改善に取り組んでまいります。」
マイクロソフトのCorporate Vice President & Distinguished Architect, Cloud + AIであるUlrich Homann氏は次のように述べています。「クラウドベースの開発は、複雑化する今日の組込みプロジェクトに対応するための安全でコスト効率の良い手法です。ルネサスとマイクロソフトは連携してこの課題に取り組み、自動車業界のデジタルトランスフォーメーションを加速することを目指しています。ルネサスのAI Workbenchにより、開発者はAzureを利用したクラウドベースの環境で、ルネサスのMCUやSoCを使用した様々なアプリケーションソフトウェアを効率的に開発し、テストすることができます。」
AI Workbenchとして今回リリースするのは、次の4つの機能ブロックです。ルネサスは今後、ユーザのさまざまな開発プロセスをサポートするために、一部機能のみの提供やカスタマイズも計画していきます。
- AIコンパイラツールチェーンのアップグレード
ルネサスは、従来のSoCのAIコンパイラツールチェーンを新しい「ハイブリッドコンパイラ(HyCo)」アーキテクチャにアップグレードし、AI Workbenchを通じて提供します。独自開発した新たなHyCoアーキテクチャとカーネルライブラリにより、DSP(Digital Signal Processor)やNPU(Neural network Processing Unit)などルネサスのSoCで利用可能な既存のサードパーティ製のハードウェアアクセラレータ用コンパイラだけでなく、より広範なAIモデルやONNXツールに対応します。
- AIモデルの性能検証環境
最新のハイブリッドAIコンパイラを使ったAIモデルがルネサスのSoC上でどのように動作するのか、性能を評価するためのオンラインテスト環境「NNPerf」を提供します。テストは、ルネサスのグローバルデバイスファームにある実際のハードウェア上で実行されるため、評価ボードは不要です。プログラムのバッチコーディング、リアルタイムの推論テスト、さまざまなAIモデル間の性能比較が可能なため、ユーザはAIモデル間のトレードオフ、メモリ使用量、レイテンシなどを確認しながら開発を進めることができます。
- ソフトウェアの開発環境
マイクロソフトのコードエディタVisual Studio Code(VSCode)と、ルネサスの車載ソフトウェア開発キット(SDK)がクラウド上で利用できます。アプリケーション開発者は、このツール群を使用することにより、クラウド上で開発環境を数分で立ち上げることができます。ユーザはパソコン上のWebブラウザだけで、独自に開発環境をカスタマイズし、開発を行うことができます。
- ソフトウェアの評価/検証環境
ルネサスは、「NNPerf」で性能の検証を行ったAIモデルを用いて、アプリケーションソフトウェアをテスト、検証できる環境も提供します。シミュレータとしてSILS(Software In the Loop Simulator)、HILS(Hardware In the Loop Simulator)などを用意しており、AIアプリケーションの動作検証を行うことができます。
AI Workbenchは、2024年1月より限定プレビュー版として提供開始します。2024年第2四半期以降、さらにAI Workbenchを拡大し、将来的にはマイクロソフトAzureだけでなく、他の大手クラウド環境においても同様の環境を構築する予定です。また、R-Carコンソーシアムのエコシステムパートナが提供するツール類もクラウドに統合できるよう検討していきます。
AI Workbenchの詳細はこちらをご覧ください。renesas.com/ai-workbench
以 上
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