ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:柴田 英利、以下、当社)は、英国の半導体会社であるDialog Semiconductor Plc (CEO : Jalal Bagherli、以下、Dialog社)の発行済普通株式および発行予定普通株式のすべてを取得し、完全子会社化する手続き(以下、本件買収)を開始することについて、本日、Dialog社と合意しましたので、下記のとおりお知らせいたします。
本件買収は、友好的なものであり、Dialog社の取締役会は本件買収につき、全会一致で賛同しております。
なお、当社は本件買収に関する英国の公開買付規則に基づく公表を、2021年2月8日(現地時間)に英国において行っております。
記
1. 本件買収の目的
Dialog社は、高集積かつ低電力のミックスドシグナル製品を中心としたアナログ半導体企業として、IoTや家電分野、また高成長市場である自動車や産業分野の幅広いお客様向けに製品を提供しています。特に、低電力のミックスドシグナル技術を強みとして、Dialog社はバッテリー&パワーマネジメント、パワーコンバージョン、コンフィギュラブル・ミックスドシグナル(CMIC)、LEDドライバ、カスタム・ミックスドシグナル(ASIC)および自動車向けパワーマネジメントIC(PMIC)、ワイヤレス充電技術など多岐にわたる製品群を有しています。また、Bluetooth® Low Energy(BLE)、WiFi、オーディオ向けSoCといった幅広く特色ある先進コネクティビティ技術も持ち、スマートホーム、ビルディングオートメーション、ウェアラブルデバイス、コネクテッド医療機器などの広範なアプリケーションに通信機能を提供しています。こうした製品・技術は、当社の製品ポートフォリオを補完して拡充し、高性能電子機器のパフォーマンスや電源効率のさらなる向上に貢献します。
本件買収は、ソリューション提供力を進化させるという当社の継続的で揺るぎないコミットメントを示すものです。本件買収により、当社は、マイコンやSoCを中心とした自社製品と補完関係のある低電力やコネクティビティ技術を強みとするDialog社のアナログ半導体の技術資産を獲得して製品ポートフォリオを拡充し、IoT、産業、自動車分野の高成長市場向けに、さらに強力で網羅的なソリューションが提供できるようになります。具体的には、今回の戦略面および財務面での買収の狙いは、以下のとおりです。
(1)Dialog社の低電力技術によりIoT分野での提供範囲・能力を拡大
Dialog社は、低電力ミックスドシグナル製品の特色あるポートフォリオを持ち、世界最大級の半導体ユーザー顧客向けにカスタム品やお客様側での回路変更が可能となるコンフィギュラブルなソリューションを長年供給してきました。また、当社製品と補完性の高い低電力のコネクティビティ製品についても、優れた技術を有しています。こうした低電力技術は、当社の製品ポートフォリオを強化して提供範囲と能力を大きく広げ、IoT分野での高成長市場への対応を可能とします。
(2)コネクティビティ技術で当社のシステムソリューションを差異化
当社は、本件買収により、Dialog社のお客様にアクセス可能となり、当社の顧客基盤を広げるとともに、産業インフラ、IoT、自動車分野という高成長市場での事業成長機会を獲得します。Dialog社のBLE、低電力Wi-Fi、オーディオSoCは、マイコンやSoCを中心とした当社のソリューションを補完するものです。こうしたWi-FiやBluetooth®無線技術・製品と当社既存製品を組み合わせることで、当社が提供するシステムソリューションは差異化され、スマートホーム、ビルディングオートメーション、医療機器などの非接触IoT分野の高成長市場に対応可能となります。また、コネクティビティ技術によって当社の自動車分野向けのソリューションも充実化し、安心・安全に関する幅広いアプリケーションに貢献します。
(3)エンジニア陣および設計開発技術を拡充し、新製品の市場投入を効率化
過去の買収により、当社は多様な人材を獲得してマネージメント力を強化し、グローバルオペレーションを加速させました。本件買収は当社のこの取り組みの延長線上にあるもので、Dialog社のR&D部隊が加わることで低電力アナログ・ミックスドシグナルでのエンジニア陣および設計開発技術を拡充します。こうした技術の拡充や当社とは異なるDialog社の拠点配備により、当社は、「ウィニング・コンビネーション」のラインアップを増やすとともに、世界中のお客様に対し、シームレスかつボーダーレスな対応が可能となり、新製品の市場投入を効率化させます。
具体的には、当社は、2017年に米国のアナログ半導体企業Intersil Corporation(インターシル)を買収し、2019年には同じく米国のアナログ半導体企業Integrated Device Technology, Inc.(以下、 IDT)の買収を完了しており、当社既存のマイコン/SoCとアナログ半導体製品を組み合わせたキットソリューションの拡充を進めています。IDT買収直後からは、アナログ+パワー+組み込みプロセッサ(マイコン/SoC)から成る「ウィニング・コンビネーション」を統合成果としてお客様に提供し始め、お客様の製品開発の容易化と市場投入の迅速化を促進してまいりました。ウィニング・コンビネーションは現在210品目以上に及び、産業、インフラ、自動車、民生分野などに幅広く提供しています。
(4)売上・利益の拡大とコスト節減
当社は、ソリューション提供力を継続的に強化し、クロスセルや高成長市場にアクセスすることにより、約200百万米ドル(Non-GAAPベースの営業利益、約210億円)の売上増による統合効果を見込み、さらには業務効率化により、約125百万米ドル(Non-GAAPベースの営業利益の年間ランレート、約131億円)のコスト節減による統合効果を獲得する見込みです。コスト節減による統合効果は、買収完了から概ね3年以内に実現し、売上増による統合効果は買収完了から概ね4~5年以内に実現すると見込んでいます。2020年9月25日までの12か月間におけるDialog社のNon-IFRSベースのEBITDA は約355億円であり、本件買収が同期間を通じて有効であった場合には、当社のNon-GAAPベースの売上高総利益率は0.6%ポイント改善することとなります。
2.本件買収の概要
(1)買収対象
Dialog社
(2)買収方法
当社がDialog社の発行済普通株式および発行予定普通株式の100%をスキーム・オブ・アレンジメントの手法に基づき取得予定。(詳細につきましては、下記「3.本件買収の方法および手続き」をご参照ください。)
(3)取得株式数、取得価額および取得前後の状況
(1)異動前の所有株式数 | 0株 (議決権の数:0個) (所有割合 :0.0%) |
(2)取得株式数 | 72,387,613株 (※1) (議決権の数:72,387,613個) (発行済株式数に対する割合:100.0%) |
(3)取得対価 | Dialog社の株式取得費用 :約4,886百万ユーロ(約6,157億円) アドバイザリー費用等(概算額):約21百万米ドル |
(4)異動後の所有株式数 | 72,387,613株 (※1) (議決権の数:72,387,613個) (発行済株式数に対する割合:100.0%) |
(※1) 2020年12月31日現在の完全希薄化ベースの株式数を基準としております。
(4)買収条件
Dialog社の発行済普通株式および発行予定普通株式1株につき67.50ユーロ。 買収プレミアムは、Dialog社株式の2021年2月5日終値56.12ユーロに対し、約20.3%に相当。
(5)買収資金
本件買収において支払われる対価は、当社と株式会社三菱UFJ銀行および株式会社みずほ銀行との間のローン契約(Facilities Agreement)(総借入限度額7,354億円)に基づく借入により調達する予定です。
当社は、本件買収後、ネット有利子負債/EBITDA倍率1倍未満への早期の改善と投資適格の格付維持を目指すため、キャッシュフローの創出を図るとともに、上記借入金については、新株発行を伴う資金調達(エクイティファイナンス)を含めて様々な長期資金への切り替えを進めていく予定です。これにより、将来の成長戦略の遂行を可能とする強固な財務基盤の維持に努めてまいります。なお、上記ローン契約の詳細については、本日付「Dialog社買収に係るFacilities Agreement締結に関するお知らせ」をご参照下さい。
なお、本日付「新株式発行に係る発行登録に関するお知らせ」にてお知らせしたとおり、当社は、本件買収に係る買収資金の一部を調達するための新株式の発行を機動的に行うための体制を整えることを目的として、新株式発行に係る発行登録(上限2,700億円)を行っております。新株発行を伴う資金調達の実施時期等によっては、上記の借入の一部を実行せず、当該新株発行を伴う資金調達による手取金を本件買収の対価の支払いに充当する可能性があります。
(6)完了時期
2021年末までの本件買収の完了を予定しています。
3.本件買収の方法および手続き
本件買収は、英国法に基づくスキーム・オブ・アレンジメント(Scheme of Arrangement)により実施する予定です。スキーム・オブ・アレンジメントとは、Dialog社の賛同の下、同社の株主および裁判所の承認を取得することで買収が成立する手法です。Dialog社が本発表から28日以内に同社の株主に本件買収の承認を取得する目的で必要書類を送付することが必要となり、この手続きを通じて、当社はDialog社の株式を100%取得します。
Dialog社株主の承認決議については、裁判所が招集する株主集会において出席株主の過半数が承認し、かつ、かかる承認株主の所有に係る議決権数が、議決権行使総数の75%以上であることが決議要件となります。さらに、米国、中国、ドイツ、その他必要な各国の関連する規制当局による承認等を経た上で、裁判所の承認を得る必要があります。
本件買収は、上記の各承認を条件に、2021年末までに効力が発生することを見込んでいます。
4. Dialog社の概要
(1) |
名称 |
Dialog Semiconductor Plc (XETRA:DLG) |
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(2) |
所在地 |
1100 Longwater Avenue, Reading, RG2 6GP, United Kingdom |
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(3) |
代表者の役職・氏名 |
CEO: Dr. Jalal Bagherli |
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(4) |
事業内容 |
ミックスドシグナルなどのアナログICの開発、製造および販売 |
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(5) |
資本金 |
14,253千米ドル(1,497百万円) |
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(6) |
設立年月日 |
1998年2月 |
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(7) |
大株主および持株比率 |
Schroder Investment Management limited |
5.55% |
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(8) |
上場会社と当該会社との間の関係 |
資本関係 |
当社と当該会社との間には、記載すべき資本関係はありません。また、当社の関係者および関係会社と当該会社の関係者および関係会社の間には、特筆すべき資本関係はありません。 |
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人的関係 |
当社と当該会社との間には、記載すべき人的関係はありません。また、当社の関係者および関係会社と当該会社の関係者および関係会社の間には、特筆すべき人的関係はありません。 |
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取引関係 |
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(9) |
当該会社の最近3年間の連結経営成績および連結財政状態 |
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2017年12月期 |
2018年12月期 |
2019年12月期 |
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連結純資産 |
1,342.4百万米ドル |
1,302.5百万米ドル |
1,572.6百万米ドル |
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連結総資産 |
1,576.8百万米ドル |
1,717.1百万米ドル |
2,177.0 million USD |
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1株当たり連結純資産 |
17.08米ドル |
16.77米ドル |
20.64米ドル |
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連結売上高 |
1,352.8百万米ドル |
1,442.1百万米ドル |
1,566.2百万米ドル |
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連結営業利益 |
187.0百万米ドル |
199.7百万米ドル |
379.9百万米ドル |
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連結税引前利益 |
194.8百万米ドル |
196.2百万米ドル |
385.0百万米ドル |
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連結当期純利益 |
169.4百万米ドル |
139.8百万米ドル |
301.5百万米ドル |
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希薄化後1株当たり連結当期純利益 |
2.21米ドル |
1.80米ドル |
3.96米ドル |
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1株当たり配当金 |
- |
- |
- |
5.今後の見通し
本件買収が成立した場合、Dialog社は当社の連結子会社となります。これに伴う当社の連結業績に与える影響については本件買収の進捗状況に応じ、速やかに開示します。
(注)本発表資料での円換算値は、2021年2月3日時点の為替レート(1ドル105円、1ユーロ126円)を使用して計算しています。
以 上
<留意事項>
この文書は、英国Dialog社の買収手続き開始の合意について一般に公表するための記者発表文であり、日本国内外を問わず、投資勧誘又はそれに類する行為を目的として作成されたものではありません。また、この文書は、米国における証券の募集又は販売を構成するものではありません。米国内においては、1933年米国証券法に基づいて証券の登録を行うか又は登録義務からの適用除外を受ける場合を除き、証券の募集又は販売を行うことはできません。
<将来予測に関する注意事項>
本資料に記載されているルネサス エレクトロニクスグループの計画、戦略および業績見通しは、現時点で入手可能な情報に基づきルネサス エレクトロニクスグループが判断しており、潜在的なリスクや不確実性が含まれております。そのため、実際の業績等は、様々な要因により、これら見通し等とは大きく異なる結果となりうることをあらかじめご承知願います。実際の業績等に影響を与えうる重要な要因としては、(1)ルネサス エレクトロニクスグループの事業領域を取り巻く日本、北米、アジア、欧州等の経済情勢、(2)市場におけるルネサス エレクトロニクスのグループ製品、サービスに対する需要動向や競争激化による価格下落圧力、(3)激しい競争にさらされた市場においてルネサス エレクトロニクスグループが引き続き顧客に受け入れられる製品、サービスを供給し続けていくことができる能力、(4)為替レート(特に米ドルと円との為替レート)の変動等がありますが、これら以外にも様々な要因がありえます。また、世界経済の悪化、世界の金融情勢の悪化、国内外の株式市場の低迷等により、実際の業績等が当初の見通しと異なる結果となる可能性もあります。
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