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車載用28nmフラッシュメモリ内蔵マイコンの更なる高速読み出し、 高速書換えを実現するフラッシュメモリ技術を開発

~業界最速の200MHzランダムアクセスと書込みスループット2.0MB/sを達成~

2015年2月25日

 ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役会長兼CEO:作田 久男、以下ルネサス)はこのたび、28nm(ナノメートル:10億分の1メートル)フラッシュ混載プロセスに対応したフラッシュメモリ内蔵マイコン(以下 フラッシュマイコン)向けに、更なる高速読み出し、高速書換えを実現する新しいフラッシュメモリ技術を開発いたしました。

 近年の環境問題への対策として、世界各国の法規制(CO排出、燃費、排ガス)は、年々厳しくなっています。そのため、パワートレイン分野では、新たなエンジン制御方式への対応が求められています。

 また、安心・安全・快適なクルマ社会の実現に向け、ADAS(Advanced Driving Assistant System:先進運転支援システム)分野では、3次元レーダへの対応が求められています。これらの市場要求に応えるには、車載マイコンの更なる性能向上 と低消費電力化が必要です。

 当社は昨年2月に広報発表した通り、従来から高信頼性・高速動作・低消費電力に実績があるSG-MONOS構造(注) を採用したマイコン内蔵用フラッシュメモリの開発を進めています。現在の40nmから業界最先端の28nmへ微細化するとともに、このたび卓越した回路技術により、更なるメモリの大容量化と処理性能の向上を可能にしました。

 このたび開発したフラッシュメモリ技術の特長は以下の通りです。

(1) 高速読み出し動作と高信頼性を両立させる技術を開発

セルの微細化により、メモリセルの読み出し電流は減少します。ワード線(メモリセル選択用ゲート)電圧のオーバードライブにより必要な読み出し電流を確保することもできますが、周辺トランジスタの高温下での信頼性悪化が懸念されます。今回、メモリセル電流 と周辺トランジスタの信頼性の温度依存性が逆依存であることを利用し、ワード線電圧に負の温度依存性を付加することにより、周辺トランジスタの信頼性寿命を、単純なワード線オーバードライブに対して10倍以上改善し、これまでの160MHz(メガヘルツ)から200MHzへ高速読み出しと高信頼性を両立させました。

(2) 消去ストレスの緩和技術を開発

消去速度をモニタし、消去が速い時は消去の最高電圧を抑制するよう制御することで、絶縁膜の信頼性が厳しい高温で消去ストレスを緩和する技術を今回、新たに開発しました。

これにより、微細化に伴うメモリセル及び、高電圧メタル配線間の絶縁膜の薄膜化による消去時の高電圧ストレスへの耐性低下に対しても高い信頼性を実現できます。

(3) 書込みの高速化技術を開発

書込み動作時にメモリセルのウエル電位を負電圧とすることによる書込みパルス印加時間短縮と、複数のフラッシュモジュールの並列書込みによる高速書込み技術を新たに開発しました。これにより、混載フラッシュとしては最速の書込みスループットとなる2.0MB/sを達成しました。

(4) 書換え時の電源/EMIノイズ低減技術を開発

今後、OTA(over-the-air)によるプログラム更新など、市場におけるフラッシュ書換え機会がますます増えると予想されますが、それに伴う電源 /EMIノイズによるシステム全体動作への影響は最小限に抑える必要があります。今回、フラッシュ書換えのための高電圧を発生する昇圧回路の駆動クロック をSSCG(spread-spectrum clock generation)化し、フラッシュ書換え時の電源/EMIノイズを大幅に低減する技術を開発しました。

今回当社は、これらの技術を適用した、28nmフラッシュによる4Mバイトプログラム格納用フラッシュメモリと64Kバイトデータ格納用フラッシュメモリを試作し、大容量プログラム格納用フラッシュメモリで業界最速となる200MHz以上、6.4Gバイト/秒の高速読み出し動作を実現しました。これまで当社40nm世代プロセス品では160MHzまでの読み出し動作を確認しておりましたが、この技術により25%もの特性改善が確認できました。

また、大容量化されてくるプログラム格納用フラッシュメモリにおいて要求される書込み時間の高速化では業界最速となる2.0MB(メガバイト)/sの書込みスループットを達成しました。これは当社40nm世代プロセス品の約2倍の特性改善であることを示しています。

 ルネサスは、本フラッシュメモリ回路技術を用いることで、より高性能・高信頼性を備えた車載用大容量混載フラッシュメモリの実現に大きく貢献できると期待しています。

 なお、当社は今回の成果を、2015年2月22日から米国サンフランシスコで開催された「国際固体素子回路会議:ISSCC 2015(International Solid-State Circuits Conference 2015)」にて、現地時間の2月24日に発表しました。

以 上

(注)MONOSは、Metal Oxide Nitride Oxide Siliconの略。ルネサスでは、EEPROM製品・セキュアマイコン等に20年以上適用し、量産実績を有するMONOS技術をマイコン内蔵用のフラッシュメモリに適用している。また、その際、独自のトランジスタ構造を開発している。

*本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。


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