ルネサス エレクトロニクス株式会社（代表取締役会長兼CEO：作田 久男、以下ルネサス）は、このたび、電子レンジ、炊飯器などの白物家電および血圧計や血糖値計などのヘルスケア機器のタッチキー入力を実現する新IP(Intellectual Property)を開発しました。
新IPは、 (1) 当社製マイコン「R8C/3xT」に搭載したタッチIPの5倍以上となる高感度および厳しいノイズ試験をクリアした高ノイズ耐性の両立を実現、(2) 水滴が付いた状態や手袋をした状態でもキー操作が可能、(3) アプリ開発の負荷を軽減する専用の開発環境も用意、等の特長を有しています。
ルネサスは、新IPを搭載したマイコンのサンプルを本年度から順次出荷する計画です。
近年、白物家電、ヘルスケア機器といった電気・電子機器のヒューマン・マシン・インタフェース(Human Machine Interface : HMI)分野において、タッチ入力の技術は機器の信頼性およびデザイン性の向上を容易に実現できることから注目を浴びており、急速に普及しています。タッチ入力のアプリケーションは、スマートフォン等のパネルを直接触って操作するタッチパネルと電子レンジや血圧計のキー部分を触って操作するタッチキーに大別され、今回のIPは後者を対象としています。
家電のうち、特にキッチン周りで使用される家電は、水滴が付いた状態や手袋をした状態でキー操作する場合があります。また、IHクッキングヒータ等強い電磁界を発するものもあります。そのため、人の手で操作する際の静電容量を必要に応じてきちんと感知させるためには、高感度と高ノイズ耐性を両立させる技術が必要とされております。
ルネサスはこれまで、グローバルなマイコンリーダーとしての経験を活かし、静電容量タッチキー操作向けマイコン「R8C/3xT」を2009年10月より市場投入し、タッチキー操作システムの普及に貢献してきました。
このような状況のもと、このたび新たにタッチキー入力を実現するIPの開発を完了いたしました。今後は同IPを搭載したマイコンの開発を加速させ、引き続き市場の成長が期待されている、タッチキー操作システムの更なる普及への貢献を目指します。
新IPの特長の詳細は以下のとおりです。
(1) 曲面や厚いパネルも使えデザインの可能性を拡大、さらに業界最高クラス（注1）となる高感度および高ノイズ耐性の両立を実現
厚さ10mmを超えるアクリルパネルでも操作が可能で曲面パネルを使用するなどフレキシブルなデザインを実現できる。また、手袋装着での操作や若干指を浮かした状態での操作もできるため、使用できるシーンを拡げることが可能。
さらに、上述の厚さ10mmを超えるパネルにおいてもIEC
61000-4-3、IEC61000-4-6（注2）といった、厳しいノイズ試験をクリアしているため、ノイズに影響されずにタッチキー操作が可能な高品質製品の開発期間短縮に貢献する。
(2) 相互容量方式に対応
当社の旧タッチ技術ではサポートしていなかった相互容量方式（注3）に対応することから、タッチキー操作部が水で濡れている場合でも誤検知を起こさないため、機器の防水対策を容易に実現できる。
また、タッチキーをマトリクス状で組んだ際にマイコンから操作部までの配線が長くなっても自己容量方式（注4）と比較して高感度を実現できる上、自己容量方式で発生するゴーストの誤検知（注5）の問題が起こらない。そのため、ピン数が少ないパッケージタイプのマイコンを採用した場合でもマトリクス状で組むことでタッチキー操作のチャネル数を増やすことが可能。
(3) 開発負担を大幅に削減する開発環境
今後、ルネサスの既存の開発ツールチェーンとの親和性を保ち、更に視認性、使いやすさを向上させた新開発環境を準備する。これにより新タッチ技術を用いたユーザーの開発工数、開発日程の削減に貢献する。
当社はこのたび開発した新IPが、白物家電およびヘルスケア機器だけでなく、工場のFA(Factory Automation)やホームセキュリティ等、耐久性・信頼性を要する分野の機器にも応用できる技術と位置づけ、新IPを搭載したマイコンの開発を進めてまいります。
ルネサスでは今後も、市場ニーズに応える新技術を開発するとともに、最適なソリューションをタイムリーに提供してまいります。
なおルネサスは、本年9月2日にザ・プリンス パークタワー東京（東京都港区）で開催するプライベート展「Renesas DevCon Japan 2014」で、新IPを活用したデモンストレーションをご紹介する予定です。
同プライベート展は、当社が国内では初めて開催するもので、ルネサス幹部による基調講演およびルネサスの最新技術をご紹介するソリューションセミナー／ソリューション展示／ワークショップで構成されています。以下のWebページで事前登録の上、ご来場いただけます。
http://www.renesas.com/ja/about/events/2014/devcon-jpn/report.html
以 上
（注1）2014年7月15日現在。
（注2）IEC（International Electrotechnical Commission：国際電気標準会議）のEMSに対する規格。
4-3：放射無線周波電磁界イミュニティ試験
4-6：無線周波電界によって誘導する伝導妨害に対するイミュニティ試験
（注3）相互容量方式：センサ（あるいはタッチ要素）を受信電極、送信電極およびパルス発生器で構成し、送信電極にACパルスを入力すると受信電極との間に電界(Field Coupling)が発生する。この状態で人体が接近すると電界の一部が人体側に移動し電極間の電界が減少する。この電界の減少を受信電極で計測することにより人体の接近を感知する。
（注4）自己容量方式：浮遊容量を持つ電極1つで構成する。浮遊容量は電極と周りの導電体の間にある寄生容量の影響を受ける。人体も導電体のため、電極に指（人体）が近づくと浮遊容量の値が増加し、計測端子によって検出される。
（注5）複数のキーを同時に押した際に、キーをひとつ押した場合と同じ結果になる現象。
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