ルネサス エレクトロニクス株式会社(代表取締役社長兼CEO:呉 文精、以下ルネサス)は、本日、Renesas Synergy™プラットフォームの最新アップデートを発表しました。(1)Renesas Synergy™ソフトウェアパッケージ(SSP)バージョン1.2.0は、ソフトウェア品質保証(SQA)に関するドキュメントを提供することにより、開発ライフサイクルを網羅するISO/IEC/IEEE12207業界標準やプロセスに準拠する新たなレベルに到達しました。また、(2)組み込みIoTデバイス間の通信を標準化、単純化できる新たなWi-Fiフレームワークを提供開始するとともに、(3)堅牢なセキュリティも統合した新しいRenesas Synergy™マイクロコントローラ「S5D9グループ」を発売開始します。
ルネサスは、3月14日から16日にドイツのニュルンベルクで開催されるembedded world 2017(展示ブース:ホール4・スタンド104)にて、このRenesas Synergy™プラットフォームの新しいアップデートについてのデモ展示をおこないます。
Renesas Synergy™プラットフォームは、Express Logic社の業界最高レベルのThreadX® RTOSとX-Ware™を中心に構築されたSSPを核とする完全な組み込み開発向けプラットフォームです。SSPは、動作保証、メンテナンス、サポートをルネサスが行う品質認定済のソフトウェアパッケージであり、組み込みシステム開発者はこのパッケージを採用することにより、低レイヤのソフトウェアの開発やメンテナンスから解放されます。またRenesas Synergy™プラットフォームは、ソフトウェアAPIや、業界をリードする開発ツールチェーンであるIAR Embedded Workbench®(Renesas Synergy™向けにアドオン機能を実装)、直感的なコンフィギュレーションサポート、そして開発やソリューション構築用の評価および製品キットなどを通して、幅広く拡張性の高いARM®Cortex®-MベースのMCUを完全に統合しています。
ルネサスエレクトロニクスのSynergy IoTプラットフォーム事業部の事業部長であるピーター・カルボーンは次のように述べています。「2015年にRenesas Synergy™プラットフォームを市場に投入して以来、我々は低レイヤの開発にかかる時間やリソースの削減という価値をユーザに提供してきました。ユーザはその代わりにエンドアプリケーションにおける革新的な開発や差異化に注力することができました。そして今、我々は、SSPの完全なるソフトウェア品質保証(SQA)のドキュメントを提供することで、目標を次の段階へ進めます。ユーザは、今回のドキュメント提供により、SSPが製品として、類まれなるソフトウェア品質レベルであることを詳細に理解できるようになるだけでなく、膨大なリソースを節約しつつ、ユーザ自身の製品の品質を証明するドキュメントとしても、このSSPのドキュメントを活用することができます。」
また、今回ルネサスは、Wi-Fiを製品に導入する際に、ユーザがどのようなチップセットやモジュールを使用していても、組み込みを容易にする方法を提供することにより、ユーザの開発時の重荷を軽減します。加えて、Renesas Synergy™ マイクロコントローラの新しいグループS5D9を追加することにより、ユーザがさらに多くの組み込みおよびIoTアプリケーションを開発できる可能性を広げます。ルネサスは今後も、Renesas Synergy™ プラットフォームの開発に注力し、開発者にとって価値あるものとして進化させていきます。
(1)SSPのV1.2.0から、ソフトウェア品質保証のドキュメントパッケージを提供開始
組み込み向けMCUを使った製品のライフサイクルにおいて、ソフトウェアの品質は非常に重要です。製品としてリリースするに値する品質であることを保証するため、SSPは、ソフトウェアディベロップメントライフサイクル(SDLC)を網羅する国際規格ISO/IEC/IEEE 12207に準拠し、ドキュメント化および監査されたソフトウェア品質保証(SQA)プロセスに従って、開発されています。SQAプロセスは、SSPを使った8000以上の毎日実施される静的・動的テストを含んでおり、下記の項目を完全に確認します。
- すべてのコードステートメント、ブランチ、そしてジャンプの100%テストカバレッジ
- ルネサスおよびMISRA C:2012の必須コーディングガイドラインへの準拠
- コードの理解しやすさ、テストしやすさ、メンテナンスのしやすさなど、コード複雑性が低いこと
- コード動作が要求と合っているかどうか
- ワーニングやエラーなしでビルドされているかどうか
SSPは、上記の5つの基準を満たさない限りリリースされません。今回、汎用MCU業界ではルネサスが初めて、組み込みプラットフォームレベルでのテスト実施など、データシートに定義された動作を保証してドキュメント化しました(注1)。
SSPバージョン1.2.0より、ルネサスはマイナーアップデートを含むすべてのSSPのリリースごとに、SQAプロセス、テスト、およびテスト結果を提供します。今回発行するドキュメントは、すべてのSDLCプロセスの概要を説明したRenesas Synergy™ソフトウェアクオリティハンドブックと、品質テスト結果を報告するRenesas Synergy™ソフトウェアクオリティサマリーです。各SSPリリースのさらに詳細なSQAのドキュメントおよびテスト結果は、Non-Disclosure Agreement (NDA) 締結の下、ユーザへ提供されます。これらのドキュメントを利用することでルネサスのユーザは、品質保証の観点からユーザ自身の開発プロセスの認証を取得したり、それをドキュメント化するための必要な膨大な時間と手間を省くことができます。
(2)Renesas Synergy™ Wi-Fi フレームワークを用意
組み込みシステムにワイヤレス通信機能を搭載するのは、一般的に容易ではなく、成功させるためにはWi-Fiチップセットやモジュールベンダ、さらには開発ツールベンダなど、複数のベンダからのサポートやドキュメントが必要となります。Renesas Synergy™ Wi-Fiフレームワークでは、使用するWi-Fiハードウェアにかかわらず、一般的なWi-Fiの機能に対する一連の統合されたAPIを通じて、ハードウェアが抽象化されます。これによりユーザは、異なるAPIをその都度学習し、アプリケーションへ適用するという手間なく、様々なベンダのWi-Fiテクノロジを素早く評価し、適用することが可能となり、ユーザ製品の差異化に時間を費やすことができます。
Renesas Synergy™ Wi-Fiフレームワークと、そのサポートデバイスドライバはRenesas Synergy™ギャラリーから入手できます。現在、QCA4002チップセットを搭載したLongsys社製GT202 Wi-Fiモジュールがサポートされています。今後その他のWi-Fiチップセットおよびモジュールのサポートが追加されていきます。
(3)Renesas Synergy™ マイクロコンロトローラ「S5D9グループ」を新発売
Renesas Synergy™マイクロコントローラのS5シリーズの最初の製品となるS5D9グループは、パフォーマンス、機能、そしてセキュリティといった、様々な機器とつながるIoTアプリケーションに必須の特長を備えています。SSPとルネサスのパートナーのシステムによって、開発者はユニークな「信頼の起点(ルートオブトラスト)を各マイクロコントローラごとに設定することができ、製造段階から最終製品に及ぶ範囲に広がる「信頼の連鎖(チェーンオブトラスト)」を実現することができます。S5D9グループは120MHzのARM® Cortex®-M4 コア、2MBのオンチップフラッシュメモリや640KBのSRAM、TFT-LCDコントローラ、高精度アナログ、EthernetやハイスピードUSBを含む様々なハイスピード通信インタフェースを搭載しています。さらに、暗号化ハッシュの拡張されたハードウェアアクセラレーションと対称・非対称暗号キー、ランダムナンバージェネレータ(TRNG)、そして特別なメモリ保護機能によって、堅牢なセキュリティを実現。オンチップキーを生成し、安全に保管する機能を備えているため組み込みおよびIoTデバイスに最適です。Renesas Synergy™ マイクロコントローラS5D9グループは、SSPバージョン1.2.0で完全にサポートされます。また、S5D9グループ評価用キット「PK-S5D9」も、順次提供してまいります。
Renesas Synergy™プラットフォームについての詳細は、ウェブサイトをご覧ください。
(注1)2017年3月13日時点。当社調べ
以 上
*Renesas Synergyは、ルネサス エレクトロニクス株式会社の商標です。
*ARM、Cortexは、ARM Limited(またはその子会社)のEUまたはその他の国における登録商標です。
*その他、本リリース中の製品名やサービス名は全てそれぞれの所有者に属する商標または登録商標です。
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