車両トラッキングサービスは、車両の情報を収集し、車両管理、サービスの提供などを行うビジネスです。最近では、交通事故の増加を受けて、車両管理会社や政府当局が、位置と速度を追跡するための追跡装置をすべての車両に設置することを義務付ける動きも出てきました。また、配送サービスやシェアリングエコノミーの多様化も、車両の位置情報サービス拡大の要因となっています。
図1:アメリカ自動車トラッキングシステムの市場
(提供元: Vehicle Tracking System Market Size & Share Report, 2030 - grandviewresearch.com)
このようなサービスは、自動車メーカーだけでなく、幅広い企業が参入し独自の情報収集、ネットワークシステムを構築します。この際に、情報収集のために車両に取り付ける端末が必要になってきます。本稿では、この端末をトラッキング端末と呼ぶことにします。
トラッキング端末は、車両に取り付けられ、車載バッテリーを電源として動作します。車両情報を収集し、収集した情報をクラウド システムに転送します。
これらの処理は、車両の稼働状況に応じて実行されます。例えば、シェアリングレンタカーを考える場合、待機時間が数週間になるケースもあるでしょう。車両待機時も、トラッキング端末は定期的な車両の監視を継続します。車載バッテリーの場合、車両待機時は充電されないため、電力の放出のみです。電力放出の時間が長いとバッテリー上がりや、蓄電能力の劣化につながるリスクがあります。頻繁にバッテリーの状態を確認する必要が出てくることは、サービス提供者にとってはコストアップになってしまいます。
RZ/G3Sがスタンバイ時の電力を大幅に削減
RZ/G3Sは複数の独立した電源ドメインから構成されており、一部の電源ドメインをオフすることでRZ/G3Sの電力を大幅に削減するパワーモード機能を搭載しています。さらに、DDRメモリの機能であるセルフリフレッシュ機能をサポートしているため、パワーモードとDDRセルフリフレッシュを組み合わせることで、最小10µWクラスの電力でRZ/G3S自体をスタンバイ状態で維持し、Linuxアプリケーションへの復帰を短時間で実現することが可能です。
冒頭で紹介したトラッキング端末は、まさにデータの収集とクラウドシステムへのデータ転送を長い時間のインターバルで断続的に行う典型的な例であり、RZ/G3Sが実現する低消費電力スタンバイが効果的なアプリケーションと言えます。
図2:RZ/G3S MPU のパワーモード概要
データ収集、クラウドへのデータ転送に最適な通信インターフェースをサポート
RZ/G3SはCANインターフェースや12ビットADコンバータなどのデータ収集に適した周辺機能を搭載しており、 また、PCI Express Gen2やUSBなどのデータ転送システムで有用な通信インターフェースもサポートしています。
PCI Express Gen2は5G世代の通信インフラへの対応を可能にします。CANインターフェースやAD コンバータといった周辺機能が、トラッキング端末の回路構成をシンプルにし、BOMコスト低減に貢献できると考えています。
図3:MPU RZ/G3Sの概要
詳しい情報は、RZ/G3Sマイクロプロセッサーのページをご覧ください。
ソリューションに使用する例として、シングルボードコンピュータゲートウェイのウイニング・コンビネーションをご参照ください。